新しい日常

 月曜日。新しい一週間が始まる。

 日曜日を週の始まりとするカレンダーが多いことは知っていたが、この器、入間礼雄は月曜日を週はじめとする感覚の持ち主だった。

 私は金曜日に退院すると、土日を目一杯使ってこの世界の情報を蓄えた。いつの世もいつの時も、知っている、ということはアドバンテージになるからだ。

 とはいえ、たった二日では情報収集にも限界がある。だから私は、入間礼雄の器に刻まれた知識を優先的に調べていった。つまり、器と魂の結合である。器を知ることで入間礼雄という人間を知り、この世界を知るのだ。

 概ねうまくいき、私は入間礼雄の器と同化することができた。

 例えば、入間礼雄には母親しかいなく、彼女は入間礼雄になんの関心もない。このせいで、退院手続きがひどく面倒だった。

 さらに、入間礼雄の肉体にあった傷の多くは、母親の恋人である男から受けたものであることも"思い出し"た。前述の通り、母親は無関心であるから、入間礼雄への虐待はエスカレートして行った。彼が入院していた要因の一つだ。私は自分がされたわけではないのに、自分のことのように悲しみを感じた。きっと、これは入間礼雄の肉体の悲しみだろう。

 知識と平行して行っていたのは、肉体の鍛錬だ。入間礼雄の貧相な肉体は、どうも私向きではない。

 最初は思うように身体が言うことを聞いてくれなかった。が、器と魂の繋がりが強くなるにつれ、肉体は力をつけていった。たった二日で、入間礼雄の肉体は、レオ・アルマスの肉体へと大きく近づいた。

 肉体と魂は引かれ合う。肉体が魂を呼び、魂が肉体を呼ぶ。この変貌は当然の結果だ。顔や肌の色など、表面的な部分は変わることはなかったが。

 こうして、私は入間礼雄に近づき(否、入間礼雄がレオ・アルマスに近づいたとも言える)この世界を知っていった。

 相変わらず、私のいた王国のことは思い出せないが、この世界を知るで私の魂が呼び寄せられた理由がわかる。ついては、私の世界を知ることに繋がる。

 私はそういう予感があった。

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