02『魔術のカースト至上主義』

キシル・コナとして見知らぬ世界の学園へと、転移し…状況を把握出来ないでいる少女きりしまの耳にチャイムが響く…

周囲の生徒が昼食の話題をし始めた事から昼休みの時間になった事を察し、一先ずある施設を目指したいのが…その場所も分からない。


「えっと、変なこと聞くけど…図書室への行き方を教えて貰ってもいいかな?」

キシルは、隣の席の女子生徒へと尋ねるのだが…その生徒から直ぐに返答は得られない。


「…三階…D級の貴方が、バールさんの名前を気安く呼ばない方が良いって分からない?」

女子生徒は怪訝な表情を浮かべつつ、キシルにだけ聞こえる位の小さな声で冷たく言い放つ。


「その…ありがとう…(どういう意味?)」

女子生徒数人の話題の中心に立つバールに再び見たキシルが気付く…目の前にいる女子生徒の胸元のリボンが赤色系統のカーマインであるのに対して、バールは明るい灰色系のアッシュグレイのリボンを付けている事に…


そして、キシル自身は黒色のリボン…つまり、DARKであると…


「(そういうこと…実力か成績によるカーストがある訳か…)」

何かを察したキシルは、三階の図書室に向かう為に、教室を後にする。


ーーー


図書室に着いた霧島キシルは、核心する…初めて見る筈の文字の意味を難なく理解出来ていることに…


「(この世界の歴史に纏わる本は、どこ?)」

立ち並ぶ本棚に書かれたジャンル分けの標識を順々に見ていると…


「何かお探しでしょうか?」

落ち着いた茶色で長く、毛先にかけてフワッとウェーブしている髪型の女子生徒が丁寧な口調で話し掛けてくる。


「あぁ、その歴史書が読みたいなって…」

先程の同じ教室の女子生徒とは異なり、優しく接してくれる目の前の女子生徒に対してキシルは、思わず微笑む。


「歴史書ですか…えっと…どこだったかな…案内します。」

キシルは、考える素振りを見せた女子生徒の後ろに付いていく…


「私は霧…じゃなくて、キシル・コナ…その、貴方の名前を教えてくれるかな?」

キシルは、先を歩く女子生徒に対して名乗る。


「はい、私は【シナモン・サイフォン】と申します。宜しくお願いしますね、キシルさん。」

シナモンと名乗った少女が振り向いたことで、微かに揺れたリボンは…銀色である。


「こちらです。」

「シナモンさん、ありがとう…助かったよ…」

キシルが会話を交わしていると…男子生徒がシナモンのことを呼ぶ。


「サイフォン様、先日の実験結果を見て頂きたいのですが…」

キシルのことを一瞥しだけで、男子生徒はシナモンと会話をしつつ去ろうとする…

学ランに似た制服を着る、その男子生徒の帽子には青色のラインが一本入ってある。


「それでは、キシルさん…またどこかで…」

そう別れの挨拶を述べたシナモンは、軽く会釈をする。

「うん、またね…シナモンさん。」

キシルが短く返事をすると、隣に立つ男子生徒がわざとらしく咳払いをする。


「どうかされましたか?」

「いいえ、行きましょうか…サイフォン様。」

男子生徒から渡された資料に目を通しながら去るシナモン。


「よし…私も用事を済まさないと…」

そう意気込んだキシルは、案内された本棚に並ぶ書物の中で、気になるタイトルの本を数冊手に取る。

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