第12話 君が私に恋をする日


「あ、おかえり秋菜!もう夜ご飯できてるよ~!」

「ただいま!ありがとうお姉ちゃん!」

「そういえば今日監督さんと会ってきたんでしょ?どうだった?」

「えっとね……」


あの後、色々監督と話した。それで、明後日にもう撮影を始めるんだと。夏芽にはその事や、オーディション的なのの事、危ないからと言って葉乃が家まで送ってくれたこと等を話した。


「おぉー!凄いよ秋菜!流石は私の出来た妹!」

「嬉しい……ありがとう、お姉ちゃん」

「……あ、秋菜が初めて照れた表情を見せてくれた!超可愛いんだけど!」


うーん、夏芽に褒めてもらうのは心地良いから好きなのだが……やっぱり褒められまくると照れてしまうな。


「明後日から撮影なんでしょ?頑張ってね!それで、ドラマ一緒に見ようよ!」

「うん!私もお姉ちゃんと一緒にみたい!」

「よし、じゃあ決まりだね!あ……今日はもうこんな時間だし、レッスンしたら遅いだろうし……軽めのストレッチだけにしよっか」


やっぱり夏芽と話していると不思議と胸が暖かくなるな。これが……家族愛というものなのか。


その日は夏芽と軽くストレッチをして、寝た。それからあっという間に一日が終わり、あっという間に撮影の日になった。今私達がいるのは、かつての監督の母校。特別に許可を得たので、この撮影で使ってもいいとの事だ。


「よう、春陽。台本は覚えてきたか?」

「はい、もうバッチリです」

「そいつぁ頼もしいな。そして余計な心配だとは思うが……花飼、お前も大丈夫だろうな?」

「それは本当に余計な心配やな。うちを誰やと思っとんねん」

「よし、そいじゃ早速撮影に取り掛かるぞ。お前ら、準備はいいな?」

「はい!」

「もちろんや!」

「んじゃ……よーい、アクション!」


監督の合図で、カチンコが切られる。あの一話を見て軽く把握したが、各々の実力は真菜穂が中の上、それ以外が中の下といった感じだ。……一部、下の上もいるが。故に本気でやると余裕で私が目立ってしまう。とりあえず真菜穂の出方を伺って……


『あっちゃ~、遅かったか。こんがりバターパン、売り切れちゃったよ。来る途中で見て食べたいと思ったんだけどな~』


……なるほど、結局普通で行くのか。ならまぁ……私も普通に行くとするか。


『あ……あの!私ちょっとバターパン買いすぎちゃったので、もし良かったら貰ってくれませんか?』

『え、いいんですか!?』

『はい!というか……私が沢山買いすぎちゃったせいで、あなたが食べられないのはちょっと申し訳ないので……』

『ありがとうございます!』


ここで一旦カット。確か次は……ベンチに座ってバターパンを食べながら話しているシーンだったな。


『ん~!美味しい~!』

『ふふっ、喜んでもらえてよかったです。えっと貴方は確か……愛枝巴さんでしたよね?転校生の……』

『はい!あ、あと……巴でいいですよ!同い年なんですし』

『ありがとう、巴ちゃん!私は水無月朧だよ。気軽に朧って呼んでね。あと……これからよろしくね』

『うん!よろしくね!朧ちゃん!』


ここでまたカット。……なんだろう、この気持ち良さは。真菜穂と演技をするだけでここまで楽しくなるものなのか。……あとバターパン、かなり美味しいな。……それからも、色々撮ったがかなりスムーズに終わった。監督と葉乃曰く、ここまでスムーズに終われたのはかなり珍しいことなんだとか。

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魔王と勇者の日本アイドル生活~転生したら可愛くなったので、アイドルしてみるか~ 深月 @sin_getu

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