第10話 真奈穂の推薦


夏芽に一通り要件を伝え終え、私は真菜穂について歩いてる。にしてもいきなり監督とご対面とはな。


「夏芽先輩えぐかったわー。なにあれ、めっちゃキラキラしとるやん。しかもあれは多分裏表ないで。素やで」

「ほんとに夏芽は眩しすぎる。まさにアイドルとは夏芽みたいな人が向いてると言えるのだろうな」

「せやな、夏芽先輩は絶対人気アイドルなると思うで。ま、どうなるかは知らへんけどな」

「そういえばだが、そのスタジオ?はあとどれくらいで着くんだ」

「もうすぐここに迎えが来るから、少し喋って待ってよか」

「あいあい」


真奈穂と話しながら歩いて、スタジオという場所で基本撮ったりするのを教えて貰った。あとどれくらいでそのスタジオに着くかを聞いたところ、どうやら迎えが来るらしいので近くにあったベンチに腰をかけて待つ。


「あ、せや。そいやぁあんたって夏芽先輩の事お姉ちゃんって呼んどるけど、実際は違うんやろ?」

「ん?あぁ。私は夏芽に拾ってもらったな。が、この春陽という苗字も秋菜という名前もくれたからな。そんな抵抗なく過ごしてるし、内心本当の姉のように思ってるよ」

「ほーん、なるほどな。……いやぁ、にしても楽しみやわ。秋菜がどんな演技を見せてくれるのか」

「演技は得意だからな、任せておけ。後悔はさせん」

「そう言うんなら尚更楽しみやわ。……あ、来たな」


真奈穂と話していたら、黒い車が私達の前に止まった。中にはスーツ……だっけな、を着た女がいる。


「真奈穂ちゃん、その子は?」

「友達やで。あと……うちが朧役に推薦する子」

「あら!あの真奈穂ちゃんが推薦を!わかったわ!さ、あなたも乗って!」

「は、はい。よろしくお願いします……」


あれ、夏芽には演技をしてたのにこの人に関しては普通なんだな。恐らく、長年の付き合いというやつだろう。


……真奈穂に続いて、私も車に乗る。そういえば、この名前も知らない女は驚いていたな。なんだ?真奈穂が推薦するのってそんな珍しいのか?いや、それくらい真奈穂から期待されてるとも受け取れるか。期待とかあまりされた事ないからどうしたらいいかわかんないな……。


「君、名前は?」

「春陽、秋菜……です」

「む……」


……何故だろう、真奈穂がすっごい睨んでくるのだが。素を知ってるから気味悪がってるのか?


「秋菜ちゃんね。よろしく!私はプロデューサーっていうのかな?サポーター的な役割を担当してる三日月葉乃みかづきはのだよ」

「三日月さん、ですね」

「はーは五年前からうちの手伝いをしてくれててな。秋菜も困った事があればはーに相談するとええで。ドラマに関することなら基本なんでもしてくれるからな」

「うん、わかったよ。ありがとう!」

「にしてもまさか真奈穂ちゃんが人を推薦するなんてねー。ずっと『うちは絶対に役に誰かを推薦なんてしない』って言ってたんだよ?」

「え、そうなの?」

「そうやけど……あんたの演技を見て気が変わっただけの事や。あんたと本気でってみたくなった。本当にただそれだけ」

「真奈穂ちゃんがここまで言うんだから、私も期待しちゃってもいいよね?楽しみにしてるね、秋菜ちゃん……あ、着いたよー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る