第4話 アイドルの輝き


服を買い、また夏芽と色々話しながら私は帰ってきた。あと、今日の昼は何にするのかも教えてくれた。今日の昼はおむ……らいす?というものらしい。そういえば、今更なのだが夏芽はどうやって十六という歳で一人で生きて行けてるのだろうか?


「よーし、たっだいま~!」

「ただいま?」

「うん、そう!帰ってきたらただいま、行く時に行ってきますは基本だよ!」

「そう、なんだ!」


本で読んだことがある。日本は、かなり礼儀を大事にしている、と。「いただきます」「ごちそうさま」「行ってきます」「ただいま」……これらは文化の一種と考えてもいいだろう。この世界で生きていくためにも、挨拶は徹底していかないとな。


「よーし、ちょうどいい時間だし……お昼作るね!秋菜、テレビかなんか見る?」

「てれび……?」

「あーそっか、テレビもわからないのか。えっとね、テレビはこの黒い四角いやつで、んー……説明するより見てもらった方が早いね、えい!」


夏芽が何かを触った。すると、次の瞬間四角いもの……恐らく、これがテレビというものなのだろう。に、人の姿が映った。


……な、なんだこれ!?何がどうなっている!?な、何故この物体の中に人間が閉じ込められているのだ!?あ、ま、待て!私に水をかけるな!


「っ……て、あれ?」

「……ぷっ。あっはは!秋菜ったら、お水が自分にかかると思ったんだね?だいじょーぶだよ、かかったりしないから。テレビはね?……」


少し、夏芽からテレビについての説明を受けた。テレビに映し出しているのは"映像"というもので、私達が触ることも、逆にテレビの中の人物が私達に触ることも出来ないらしい。……凄いな、日本は。こんな文化があったのか。


「んー、そうだなぁ……じゃあ、怖くなくて、気持ちがわーってなるやつ見せてあげるよ!」

「……わー?」

「うん、そう!すっごいドキドキして、キラキラするようなやつ!えっと、確かこのファイルに……あ、あった!」


気持ちがわーってなるやつ?何を言ってるのだ?夏芽は。……なんて思いながらも、テレビに映し出される映像を見る。そこに映し出されたのは……


『東京のみんなー!!おっはよー!!!……うんうん、みんな朝からいい声出すね!今日は、私の為に集まってくれてありがとー!!さぁ、それじゃ……トウカのライブ、始めちゃうよ!』


何かの舞台?のようなものに立っている、一人の女の姿だった。その女……トウカは、とっても楽しそうに笑っていた。……何でだろう。この女が、トウカが……少し、輝いて見える。


『まずは一曲目、「twilight stage」!』

「……!?」


トウカが言葉を言い終えた瞬間、その舞台が薄紫に光り、少し優しく、どこか寂しいような音が響き始めた。……なんだこれは。一瞬でワイワイとしていた雰囲気が変わり、少ししんみりとした雰囲気になったぞ


『それは、小さな灯火。あなたの中にある、薄くて小さな、あなただけの光。それが集まるステージに、私は立っている。淡い輝きの集まりが、私を立たせてくれる』


トウカが語り始める。それは、皆を盛り上げた時のような明るい声ではなく、どこか憂いを秘めた、寂しい声だった。私も自然と、涙が出てしまいそうになっている。


……気づけばあっという間に一曲目?が終わっていた。


『よし、そうだな……それじゃあ次は明るいやつ行こっか!みんなで盛り上がれるの!みんなで楽しもうね!二曲目、「twinkle star」!』


『君の元へ流れ星、ハイっ!』


な、なんだ!?なんだ、この体が激しく揺さぶられる感じは!?


「す、凄い!すごいすごい!」

「……ふふっ、秋菜もそうなるよね」


……なんて綺麗なんだろう。この綺麗な光が全部、この歓声が全部、この笑顔が全部……トウカに向けられている。そして、トウカも……言葉では表せれないくらいに、輝いている。歌って、踊って、それで様々な方向に笑顔を振りまいている。……凄い。すごいすごいすごい!!私も……私も、これになりたい!この光を、浴びてみたい。沢山、輝きたい。色んな人を、笑顔にしたい!


「あのね、お姉ちゃん」

「ん?どうしたの?秋菜」

「私も、私もこれになりたい!この人みたいに、キラキラしたい!」

「……この人はね、『アイドル』っていうんだよ。沢山の人に幸せにしてもらって、沢山の人を幸せにするお仕事なの。そして……私も、アイドルになることが夢なの」

「……もっと、まずはもっとこの人の映像みたい!」

「そっか!沢山見ていいよ!」


「……きっと、冬華姉も喜んでると思うよ」


……ん?

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