第3話 私って何歳なの?


「秋菜起きて~!もう朝だよ~!」


夏芽に呼ばれて私は目を覚ます。あぁ、そういえばそうだったな。今日は夏芽と一緒に私の色々を買いに行く日だったな。にしても凄いな、日本は……前世のベッドよりも全然寝心地がいいぞ。


「んあぁ……おはよう、お姉ちゃん」

「うん!おはよ、秋菜!朝ごはんもう出来てるよ、一緒に食べよ!」

「朝……ご飯!うん!食べる!」


おぉ、朝食か。病に伏せてからは不味い飯しか食えなかったからな。ちゃんとした飯は久しいな……ってお?おぉ!?な、なんだこの下から漂ってくる香ばしい匂いは!


「これは……一体?」

「あーっと、ほんとに何もわからないんだね。えっとねー、これは目玉焼き。これは、ウインナー。これはお味噌汁。でこれが白ご飯だよ。えっと、馬鹿にするつもりはないんだけど……食べ方は私を見ててね。あ、忘れてた、いっけない。……いただきます」

「いただき、ます……」


これは……確か、箸とかそんな名前だったよな。日本人はこれにスプーン?とフォーク?というものを使って食べているというのを以前本で見た。が、使い方は書かれていなかった。

前世は肉を調理こそすれど素手でそのまま掴んで食べるのが主流だったからな。いまいち何も分かってないから助かる。


「ぷはぁ、美味しい!さ、こんな感じだよ。秋菜、出来る?」

「えっ……と、こう……?」

「惜しい惜しい!えっとねー、手はこうしてー……」


夏芽は私の近くまで来ると、優しく私の手を掴んで箸の持ち方を教えてくれた。なるほど……これで掴んで食べるのか。凄いな、日本は。ただの木の棒二本でこんなにもスムーズに食えるなんて。


「あ、そうそう!上手だよ秋菜!」

「えへへ……ありがと」


他人に褒められるというのも中々に悪くないものだな。まぁ……少し赤子のように思われてるのが気になるがな。


「お味噌汁はね~、えっとこうやって持って、お皿をお口に近づけて飲むんだよ。けど、かなり熱い時もあるから火傷には気をつけてね」

「……あつっ」

「ほら、言わんこっちゃない。……秋菜は猫舌なんだね。じゃあ、次はもうちょっと冷たいのにするね」


なんだろう……この、まるで母親のような温かさは。転生してからまだ一日も経ってないが、もう十分すぎるほどに満足している私がいる。秋菜という名前も貰えて、共に住む人間もいて、家族の愛情というものもある。……なんて幸せなのだろうか。


それから少しして、私は朝食を食べ終えた。はっきり言おう。……絶品だ。超がつくほどの絶品だ。私は今までこんなに美味いものを食べた事は無かった。……これを朝、昼、夜と食べれるなんて、ここは天国か何かか?


「よし、食べ終わったね。それじゃあ……ごちそうさまでした」

「ごちそうさま、でした……?」

「うん!お粗末さまでした!」


にしてもまだ少し分からないことが多いな。流石にこれはこれから夏芽と過ごしてく中で学んでいけばいいか。


「よーし、それじゃあ朝ごはんも食べ終わったことだし、秋菜のものを買いに行こー!」

「……」

「秋菜、今のは『おー!』って言うんだよ」

「おー?」

「うん、そう!」


……本当によく分からないものだな、日本は。


朝食を食べ終えた私と夏芽は、またよく分からない場所を歩いていた。……わからない事ばかりだが、変にソワソワするのは心が幼くなっているからか?……ん?うわっ!?こいつはヘルバタフライ!?ど、どうしてここに!?


「ん?あ、秋菜ってばちょうちょが怖いの?」

「ちょ、ちょうちょ?」

「うん。あれはちょうちょって言ってね。一年中かな?ずっと飛んでるんだ。あ、大丈夫だよ、何もしてこないから」


……ほっ。良かった、違うみたいだな。あれはちょうちょ、と呼ばれているのか。あまりにも魔獣ヘルバタフライと見た目が酷似していたので驚いて、夏芽の後ろに隠れてしまった。


「ちょうちょ、大丈夫?」

「うん、ちょうちょは大丈夫だよ」

「そっか……」


私は夏芽にしがみついていた手を離して、再び歩き始める。歩いていたら、様々な生き物と出会った。そして、その都度夏芽が教えてくれた。バッタに、ハチに、すずめに、カラス。

魔界の荒れ具合を知ってる身としては、こう様々な生き物が平和に過ごしているのを見ると感慨深いものがあるな。


「秋菜、着いたよ!服屋さん!まずはここでお洋服を買おっか!」

「服……うん!」


服……おぉ!見たことも無い綺麗なのがいっぱって何歳なんだろういではないか!……ん?あそこにあるのは鏡か!ちょうどいい、私の姿を確認するとしよう!


「これが……私」


鏡に映ったのは、少し背の低い、肩くらいまである茶髪に少し明るい赤色の瞳をしている……凡そ十三から四歳?くらいの少女だった。今更だけど……私って何歳なんだろう。


それはさておき鏡で自分の姿を知ったおかげで身の丈にあった衣装を選べるな。例えば……これはどうだろう?若干緑っぽい、確かてぃー……しゃつ?と呼ばれてるもの。


「あー、それはちょっと秋菜には大きいかも?」

「……そっか。じゃあまた探す!」

「うん!秋菜は多分服もわからないだろうから、困ったらすぐ私に言ってね」

「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」


本当に頼りになるな、夏芽は。……実際そうだ。前世では私は常に上裸だったからな。服に関しては一切何もわからん。


……ほう?これはかなり可愛いではないか。今の私にかなり似合うと思うのだが、夏芽はどう思うだろうか。


「おぉ!これいいじゃん!子供用のワンピース!確かに秋菜、青色も似合いそうだもんね!」


これはワンピースというのか。私がいいと思ったのは、青い花模様のワンピースだ。この身長でも確かに合いそうだし、何より私が強く惹かれた。


「お姉ちゃん、私これ欲しい!」

「んー……よし!じゃあこれにしよっか!他に欲しいのとかはない?」

「うん、これがいい!」

「そっか!まぁ、別に下着とかに関しては私のを幾つかあげればいいしね。じゃあ、買いに行こっか!」

「おー!」


やはりこの体も意外と悪くないな。……いや、もう最高と言っても過言ではないだろう。まさか、こんなにも素晴らしい世界があったなんて思いもしなかった。


「……あ、そういえば聞こうと思って忘れてたんだ。秋菜って何歳かわかる?」

「えっと……わからない」

「わからないか、そっか。見た目で判断するなら十二から十四歳辺りかな。うーん、とりあえず私はこれから十四歳って体で色々進めてくね。あ、ちなみに。私は十六歳ね!高校一年生!」


高校……これもまた本で見た事がある。確か学舎の事だろう。一般には学校と呼ばれているらしいな。私が知る限り高校の他にも小学校?と中学校?もあったはずだ。あ……私、学校どうするんだろう。ちゃんとした年齢も分からないし、確か入学するには親が必要だった気がするのだが……?

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