第7話 冒険

 次の日、俺はゆったりと目を覚ます。時刻はどうやら昼。

 あの後ずっとくっついてくる三人のせいで……少し眠れなくて……えっと別に何かやましい心があったからとかではなくて。


「お、おはよう……今日は冒険……しなさそうですかね?」


 俺の言葉に目を覚ました三人はこくこく、と頷いた。どうやら本当に昨日の話が効いてしまっているようだ。

 ──まああんな話をされて立ち直れる奴はあんまりいないよなぁ。と言うか実際おかしいだけなのかもしれないけどね。


 俺は三人が元の様子に戻るまでのんびりと待つことにした。

 そういえばなぜ女の子だけなのかと言うと、それは勿論……でかつ、今も尚冒険者を続けているやつが殆ど居ないというのが関係している。

 基本バッファーってだけで未来が無いのだから、自分の将来がわかる10歳の時、バッファーだとわかった時点で人によっては人生を諦めるやつすらいる。

 それでも諦めないで頑張った所で……アタッカーやタンク、サポーターには勝てない。そうして山ほどのバッファーが冒険を諦め、そして引退して行ったのだ。

 ───まあそこから店を開いたヤツや、鍛冶屋を始めたヤツなどはいるけれど……まあ大体のやつが冒険を諦めた。


 じゃあ女性はどうなのか?まあ実はそもそも女性のバッファー自体が少ない。何故なら男性はアタッカーとタンクになりやすく、女性はバッファーとサポーターになりやすいと言うシステム的な要素が含まれているからにほかならない。


 なんかこの世界妙にゲーム〈フォーチュン・ファンタジー〉に準拠しすぎな気がするんだよなぁ……。

 ちなみにバッファーになる率は大体一割。その代わり全員がぶっ壊れキャラなのだ。

 もちろんバッファーはそれだけゲームの中では最強の存在ばかり、だからこそ迷宮攻略の必須パーツと呼ばれるわけだ。

 ───ただし、今の時代はまだ、無用の長物だったと言うだけで。


 ◇


 何やら思い出にふけって居そうなキノシタを三人は心配そうに眺める。


 正直なところ、彼の話は簡単に受け止めれるものでは無かった。自分の知り合いが無惨に遊ばれて殺された。そんな現場を自分だったらどう受け止めるだろうか。

 ……答えが出せずにいた。

 それは答えなんてあるのか?そう聞きたくなるほど。

 だから────、


「(私は、彼を絶対に死なせない。たどり着かせてみせる!)」

 アイナはそう思うことにした。これは余計なことを考えては行けないことだ。そう思ったわけだ。


「(……彼がある日、自分を見失ってしまったらどうしよう。怖い、助けられるのかな。僕は……)」

 ナハトは、一人失う恐怖に恐れた。


「(んだよ……アイツが一番つれぇじゃねえか……ならあたしたちはあいつの重しにならないようにするだけ……だ!……だよな?……)」

 言葉尻強く言おうとして、その自信が本当に正しいことなのか。その言葉を吐いて良いのか?疑念が頭をよぎり、押し黙るグラム。


 四人はしばらくもんもんとしたまま、時間だけが流れて行った。


「───よし!ちょっくら明日の冒険の目的地を決めるためにクエストやらを見に行ってくる!」


 いたたまれなくなったので、キノシタはそう言うとギルドに向かって走っていった。

 慌てて三人はあとを追ってかけ出す。幸いすぐに出れるように支度してあったので問題はなさそうであった。


 ◇◇◇


「───ん?なんだ、騒がしいな?」


 ギルドに着いたキノシタはギルド内部が忙しく、慌ただしくなっていることに気がついた。普段よりも皆さっきだっており、そのことから何か大変なことが起きていたのではないか?そう思う俺は。


「──すみません、何があったのか教えてください!」


 そうギルドのスタッフに尋ねた。するとギルドのスタッフは、今忙しい!という顔をしながらも……教えてくれた。


「……あなた方が攻略した第18階層の次、19階層で……大量虐殺が起きました!!……そして何とか生きて帰ってこれた冒険者が言うには────。」


 なんだろう、胸がざわざわする。これはまずい気がする、俺の長年のかんが必死に訴えて来る。


「────のような魔物が、次々と人を襲ってきたと!」


 ◇◇◇


 その言葉を聞いた俺は駆け出した。後から追いついてきた三人に即座に事情を伝えると俺はすぐにダンジョン内部に向かおうとする。しかし。


「───死ぬつもりなんですか?!キノシタさん!!」


 アイナに止められた。それは間違いなく心配しての言葉だったのだろう。だが俺は既に冷静さを失っていた。

 間違いなくあの魔物だ。そうに違いない。

 俺は止める三人を振り切ってかけ出す。


 ……絶対にやつにこれ以上、人を殺させるようなことはさせない。


 その一身で俺は飛び出して行ったのだった。

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