ーー「シェリルの追憶」




 魔王様はいつの間にか大きくなってしまった。

 少し前まではほんの小さな子供のような見た目だったと思うと、その成長も少し寂しく感じてしまう。


 彼は人の姿の時の私の裸を気にしているのか顔を赤くして「服を着ろ!」とある時言ってきた。

 服といっても人の姿は体が邪魔にならないし便宜上そうしているだけであるのだから気にすることはないだろうと思っていたが魔王様が大変そうな様子を見てめんどくさいが服を羽織ることにした。


 胸を鱗で隠し、その上に布を纏えば問題はあるまい。


 魔王様は次第に体が成長し、本当に大きくなられた。私としては世話を焼かなくてすむならそれに越したことはないのだが、親というものはこういう気持ちなのだろうか、自分の手から彼が離れて行ってしまうようだ。


 魔王ではあるが、同胞に優しいという一面を私は知っている。その魔王様のためなら進んで手足となろう。



 魔王様の寝顔はとても凛々しい。その顔を見ていると胸の高鳴りというものを感じる。

 いかんいかん。ついその顔に手を伸ばし、夜這いしてしまうところだった。


 私の体が目に触るのならこんな見てくれだけの人の体など好きにすればよいのに、そうしないところが彼のいいところだ。

 おかげで私の体は疼いてしまう。


 処理しなければ。

 魔王様を起こさないようにその体を跨いで立った。


 その顔を見下ろしながら自分の体を覆う邪魔な布を首の紐をほどき、脱ぐ。

 私の体を覆うものは胸の鱗だけだ。

 これも外してしまおう。

 そっと音を立てないように右手から離して床に落とす。

 人の体は理解できない。

 これだけのことなのに脳が痺れるような悦びを感じる。


 私が夜な夜なこんなことをしているとは思うまい。

 今夜は既に熱くなってしまっている。

 いかん。唾液を垂らさなくては。

 左手を胸、右手は股間へと伸ばす。

 もう我慢できない。


 あぁいやらしい。

 わたしの指に合わせて音が響く。

 私の足元に魔王様の熱い物が……少しだけ、少し、


 なに、これくらいお許しくださるだろう。

 彼の薄いトランクスの上に腰をおろし動く。


 肌に直接触れる刺激が体を巡り、脳まで届く。

 ダメだ。

 逝ってしまう。

 まるで犯されているみたいだ。私が犯しているのだが。魔王様さえよければいつだってーー。


 

「シェリル?」


「!?」

 まずい


「何をしている……」


「いや、その、これは……」

 言い逃れできん。


「すまない、俺がシェリルを孤独にさせてしまっていたのだな」


 そう言って魔王様は起き上がり私にそっと、彼も緊張しているのか、時間が止まってしまったかのように少しずつ顔を近づけて、その湿った唇で口付けをした。


 やっとその気になってくれましたかーー。


 私も返さなければ。

 口付けをしたまま彼を押し倒し、その胸元に手を起き、舌を入れていく。

 私の舌は長い。

 彼の唇、舌をむさぼり蛇のように絡ませる。

 口付けはあまりしたことがないが、こんなにも気持ちがいいだなんてーー。


 彼の手を私の胸へとそっと誘導する。

 その手の動きによって私の胸が形を歪ませる。

 人の指によるそれは自分の指の何倍も強い刺激をもたらした。

 体が喜んでいることがひしひしとつたわってくる。


 気がつけば、彼の下半身はそそり立っていた。

 私の腰の下で押さえつけられているその熱いものへと右手を伸ばす。

 ドクドクと脈を打ち、固くなっている。先端を馴染ませるようにさする。



 我慢できない。

 魔王様の目がとろんとしている。


 もういい。

 私はずっと我慢してきたし、彼もそうだろう。


 今夜私は魔王様の物になる。

 右手で彼のものを私の入口へと当てがう。


「は……ぁん……ッ……ァ……ンッ……んッ……ァッ……!!……んっ!……ァア!……ンッ!……すき……すきッ……スキ……魔王様!……ん……ァあッ!好きッ!……アぁッ!…… 好きです!……ダ……ダメ……ぁッ……ん!!」


  ◇



 何度私の腰が悦びに溢れ、痙攣したか覚えてはいない。


 朝目覚めると魔王様の腕に抱かれていた。


 これが人の言う幸せなのだろうか。

 しかし、この先も魔王様と共に暮らし、その成長を側で見守ることができるのならそれは幸せと呼ぶにふさわしいーー。

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