1話 4月は出会いの季節とかなんとか言うけども

確定申告にひいひい追われた季節が終わって、ようやく4月を迎えた初め、経理部に新しい子が入ってきた。しかも元営業1課の子らしい。


「今日から経理部に配属となりました。馬場ヒナミでぇす。皆さん、よろしくお願いしますね。」


ペコリと挨拶して、私含め、部内のみんなに少しあざとさ感じるように笑って見せた。


うーん、仕事は出来そうだけども、あんまり関わりそうには無いタイプかなぁ。

そんなこと思ってたら、教育係を任された。


「えと、馬場さん、よろしくね。」


「はい♡ご指導ご鞭撻よろしくです、仕事も、それ以外もい・ろ・い・ろ、手取り足取りね。せんぱぁい♡」


数秒経って、やっと耳元で甘ったるく囁かれたこに気付いた。

それに驚いてしまって、私が機械のようにギギギとヒナミさんの方に首を向けると、彼女はくすくす笑ってた。




いやぁ、色んな意味で大物の新人が入って来たな。

帰りながら昼の日を思い出していた。


そんな時


「マイ……!、おい、マイ!」


ガシッと腕を掴まれた。このスカジャン、ショートのプリンになった金髪、左目下に小さく傷の付いた鋭い目付き……まさか


「ラン……なの?」


「そーだよ。3年ぶり。……会いたかったぜ、マイ。」


そこにいたのは元カノのランだった。

彼女は嬉しそうに私の肩に手を回した。

それを私は払う。


「なにそれ。もう別れたじゃん。ランの酒癖治んないから。」


どーしても昔のあの酒癖の酷さが蘇ってきて、特に別れる理由になった、酩酊して、色んな女のキスマークつけて帰ってきた時思い出してイライラする。


「いやいや、絶対もーあんなことねぇって!だからさ、この前もLANEで言ったけど、またウチとやり直してくれよ。」


いつもの


「無理。嫌。そんなんしんじらんない。」


そこから言い合いになって、向こうも限界迎えたのか、ぐって手を掴まれて思い切り引き寄せられてそのままキスされた。結構重ための。


「ウダウダ言うな!あんたは、ウチの女なんだよ!」


ランは元ヤンだ。そのギラギラさが好きだった。それが今は仇になった。強引にされちゃうと強く出れない。


ああ、このままだとまたなし崩し的にランと復縁することになる。


「そこまでだよ。」


そんな時、スマホ内の懐中電灯がランの目に当てられた。眩しさで腕を掴む力が弱くなった所をすかさず離れる。


「な、なんだよお前!復縁話の邪魔すんな!」


「それは出来ないね。」


パンツルックに身を包んだ、背の高い茶髪の長髪の女性はピンヒールをかつかつと鳴らしながら、私の横に立つ。


額にかかるを芝居がかったようにかき上げると、女性らしい柔らかみがありながらも、中性的で端正な、薄い瞳のイケメン顔の彼女はかかんで私の額に軽く口付けた。


「彼女はボクの獲物だ。ボクのものになってもらう。」


はぁぁぁぁっ!?な、何言ってんの、コイツ!


運の悪いことに救援が来たんじゃなくて、バカの追加でした。

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最低最悪★百合ロマンチック 弟夕 写行 @1Duchamp1

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