限定公開だった短話集
ボクのセンパイ
古の限定公開の短話です。完結記念というのもありまして公開できる範囲は公開していきます。
―――――――
6月17日月曜日の夜。ボクは悩んでいた。
「どうしよう……お兄さんにビンタしちゃった……絶対怒ってるよね……」
ボクの事を心配して、あんなに必死になって探してくれたお兄さんの事をボクはおもいっきりビンタしてしまった。
あの時のお兄さんの顔は忘れられない。すごくビックリしてて、なんだか怒られる気がして、すぐにその場から逃げてしまった。
「でもでもでも!お兄さんも悪いよね!あの先輩の事を悪く言うし!それになんだよ桜が悲しむって!お兄さんは悲しんでくれないの!」
分かってた。お兄さんは妹であり、ボクの友人の桜の事が大事だって。そりゃ家族だもん。
でもさ。もうちょっとボクのことも見てくれても良いと思うんだ。
あの怖い先輩が助けてくれなかったらボクは今頃…………
『二度とすんじゃねぇぞ。そんな変なことしなくてもお前は充分女の子っぽいし、ちゃんとかわいいからよ』
「…………ッ~~!!」
あの先輩もなんなのさ!急に変なこと言ってきて!どうせ誰にでも言ってるもん!見た目チャラチャラしてるし!ボクよりも女の子っぽい人と遊んできたくせに!ボクなんかがかわいいわけないもん!
『だからその『ボクなんか』ってのやめろ。自信持て。充分かわいい。真っ正面からいけば宮野だってイチコロだ』
「あーーーもう!先回りしてこないでよ!!」
「こら燈!さっきからうるさいよ!早く寝なさい!」
自室でバタバタと悶えていると、お母さんから注意されてしまった。思春期なんだからこれくらい許してほしい。
『お前みたいな女子にアタックされて気にならない男子なんていねぇよ』
「……どうせお世辞じゃん」
褒められ、浮かれていたがあんなのウソに決まってる。その証拠にあの先輩もボクの事なんて眼中になかったし。
それなのに…………
「…………あんな真剣な顔で……かわいいとか……言わないでよ…」
お兄さんは言ってくれなかった言葉。お兄さんはボクの事を頼りになるとか、カッコいいとか、そんな言葉ばっかり。
もちろんそれも嬉しかったけど、ボクだってちゃんと女の子なんだよ。好きな人にかわいいって褒められたいんだよ。
「ぁ…………んぅ……」
良くないことだってのは分かってる。ボクはお兄さんが好きなはずなのに。好きだったはずなのに。
指が………止まらない……あの人の声が……ずっと欲しかった言葉が…耳に残って離れてくれない……
「せん……ぱい…ッ…………」
変な気持ち……こんなの…………絶対にダメ…止めなきゃ……いけないのに…………
そう考えると……余計に…………ッ
「フーーーーッ……!んぅ…………!!」
いつもよりも深く長く快楽は続いた。一度終わった後でも弄るのを止められず、しばらくはお兄さんとのトーク履歴を眺めながら余韻を味わっていた。
「んはぁ…………はぁ…………お兄さんが悪いんですよ…………ボクの事……見てくれないから……」
そんな中、ボクは唐突にとても悪いことを思い付いてしまった。
「あの先輩に自撮り送ったらどんな反応するんだろ…………」
多分怒ってくれるだろう。それで痛い目を見たのに何をしてるんだって。でも、興奮してくれるかな。ボクの写真を見てシてくれるのかな。
またかわいいって言ってくれるのかな。
「ぁ…………これヤバいかも……」
なんて事を想像していると、いつの間にかボクの手は激しさを増していき、まだ空っぽのあの人とのトーク履歴を見ながら1人で慰めるのだった。
「センパイ!今日の下着!自信あったんですけど!」
「はいはいかわいかったよ」
今日も今日とて昼休みの屋上でセンパイとふたりっきりで過ごす。最近は少し暑くなってきたから他に良い場所がないかと検討中だ。
「えっちでしたか!?」
「……女子が何聞いてんだよ」
「いいから!それが大事なんですよ!」
「…………そりゃもう凄かったよ」
「ありがとうございます!」
センパイは恥ずかしがりながらもボクに感想を正直に言ってくれる。それがボクにはとても嬉しかった。
だからボクもちょっと調子にのりたかった。
「それ、使っていいですよ?あ、もしかしてもう使ってまッ……イタタタ!!!」
センパイの背中に体を押し付け、耳元で囁いただけなのに、センパイから頭を鷲掴みにされてギュッと力を込められた。
「お前なぁ………本当に痛い目見ないと分かんないのか?俺の噂は知ってんだろ?」
もちろん知ってる。女癖が悪くて喧嘩っぱやい。ボクら1年生の間でも最近話題になっている。
でもボクは…………
「…………センパイなら、良いですよ?」
「……上等だ。泣いても許さねぇからな」
「ぇ?ほんとに……ッて!!イッタァ!!!!!むりむりむり!!割れる!!!ホントに割れます!!」
「反省しろバカ」
とか言いながら少しずつ力を弱めてくれている。悪人ぶろうとしてるけど成りきれてない。そもそも悪い人なら最初からボクの事を脅しているよ。不器用だけど、本当に優しい人だ。
そんなセンパイを独占したい。ずっとボクだけのセンパイでいて欲しい。そんなズルい想いを密かに抱え、今日も夢のようなこの時間を過ごすのだった。
「あっ…これちょっと気持ちいいかも……少し強くしてもらってもいいですか?」
「………………はぁ」
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