【人気投票発表回】二度目の文化祭でも選ばれたい 後編
人気投票の結果発表回です。どうか気を楽にしてご覧ください。メタ的な面でも少しはっちゃけます。お許しください。
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10月26日日曜日。文化祭の2日目であり、ミスコンの結果発表の日でもある。本来なら栞と薫の3人でミスコンを見ておくだけの予定だったのだが、昨日起きた演劇での大事件のせいで栞が急遽参加すると飛び入りで申し込んだ。
投票のシステムは特設のサイトにてオンラインで投票するという力の入りよう。これで集計がしやすくなっており、正確性も出る素晴らしいシステムだ。どれもこれもイベントの成功のためにと哲平が相当頑張ったらしい。
というわけで2人で文化祭デートを楽しんでいると校内放送でテンションが振りきっている女子のアナウンスが流れてきた。
『えー……ただいまよりぃ!ミスコンが始まりまぁす!体育館にお集まりくださぁい!』
完全に勢いに任せた姫崎のアナウンスを聞き、俺達は体育館の方へと向かうのだった。
「さぁさぁさぁ!やって参りましたミスコンのお時間です!司会はもちろんウチ!3年生の姫崎琴音と!」
「どうも!新聞部部長!おなじく3年生!日向春です!どうぞよろしくお願いします!」
体育館につき、椅子に座って待っているとマイクを持った姫崎と共に知らない生徒が現れて司会をし始めた。
日向とかいう生徒は着ている制服や短い髪こそ男子のものだが、見た目と声が明らかに女子だ。というかそもそも誰だ。同学年なはずなのに会ったことないんだけど。
「もう細かい前置きはいらないですよね!ではでは!早速結果発表しましょうか!皆さんステージにどうぞ!」
そんな俺の疑問を置いていくかのように日向はサクサクとミスコンを進め始め、その掛け声と共に上位5名である彼女達がステージ上に現れたのだった。
「……皆すごい人気ね」
「…………そうだな」
ステージに出てきただけだというのに体育館は大盛り上がり。燈と乃愛が多少大袈裟に観客に手を振り、七海と桜が恥ずかしがりながら歩く。飛び入り参加だというのにトップ5に入った栞は1人だけ私服で堂々と歩いていた。
「いいねぇ!盛り上がってるねぇ!それじゃあ5位から発表していこう!」
姫崎の声に合わせて体育館に「ジャカジャカジャカ」とそれっぽい音楽が流れ、音楽が止まったと同時にスポットライトが5人の中の1人に当てられた。
「5位は!水上乃愛ちゃんです!ではマイクをどうぞ!」
スポットライトを当てられ、日向からマイクを手渡される乃愛。光を当てられた瞬間は少し不服そうな顔をしたが今ではいつも通りの笑顔に戻っており一歩前に出て話し始めた。
「ありがとうございます。数ある参加者の中から私に投票してくれた皆さんには感謝しかありません。この度は皆さんの大事な一票をありがとうございました」
なんとも真面目で、テンプレとも取れる台詞を話す乃愛。しかし「大事な一票」と言った時の視線は俺の方を向いており、俺と薫は軽く手を振って返した。
「良い挨拶をありがとうございました!乃愛さんといえば前生徒会長であり、その親しみやすさから皆の幼馴染みのような印象があります!私達にとっては昨日の大事件が記憶に新しいかと思います!いやぁ熱烈なキッスでしたね!おめでとうございます!」
「いやぁ……それほどでも…ありがとうございます」
乃愛の挨拶を終え、日向が一言添える。その間ずっと七海がキョロキョロとしており、自分が5位ではなかったことに驚きを隠せないようだった。そんな七海を司会や他のメンバーすら触れずにミスコンは進んでいった。
「じゃあ次いこう!はい4位!」
次こそはと両手を握って祈り始めた七海。だがそんな祈りは届かず、スポットライトは無慈悲にも七海には当たらなかった。
「安達桜さんです!では挨拶をどうぞ!」
光を当てられ、マイクを手渡された桜は照れながらもシャキッと背を伸ばして話し始めた。
「ありがとうございます。生徒会選挙の時も言いましたが、選んでくれた皆さんの期待に少しでも答えられるようにこれからも努力したいと思います」
2人続けて真面目な挨拶をされ、物足りないという顔をしている日向がイジワルな顔で桜へと語りかけた。
「おめでとうございます!立派な挨拶でしたね!1年前の桜さんはあんなにワガママで可愛げも無かったのに……よっぽど良い出会いがあったんでしょうね!」
「は、はぁっ!?急になんですか!?」
「ワガママで可愛げも無かった」という事実だがあまりにも唐突なディスを言われ、桜は何とか保っていた平静が崩れてしまった。そこに畳み掛けるように日向は続けた。
「やっぱり恋ですか?恋なんですよね?カッコいい彼氏さんですもんね!」
「べべべ別に!?零央さ………あの人は関係ないです!!単に成長しただけです!!」
「桜ってば本当に素直じゃない子ね……」
「桜らしいといえば桜らしいけどな」
ステージ上で顔を赤らめて否定している桜を見て俺と薫は苦笑いしていた。すると桜と目があってしまい、乃愛と同様に軽く手を振ってやると桜はさらに顔を赤くしてうつむき、ポツリと呟いた。
「まぁでも……ちょっとは…関係ある……かも…………です」
「くぅぅぅ!これこれぇ!」
呟いた言葉はマイクを通して体育館中に響き渡り、司会の日向を筆頭に会場が湧きまくった。その反応に対して桜が吠えようとしたが、それよりも前にマイクを没収され、桜はただこの悪ノリを受け入れるしかなかった。後で慰めてやらなきゃな。
「盛り上がってきましたね!では3位の発表を姫崎さん!お願いします!」
「ほいさ!ではでは3位は~~!」
3位の発表に移り、またしても七海が全力で祈りを捧げていた。せめてここで名前を呼ばれたかったのだろう。
しかし……
「ジャン!世良燈ちゃんです!」
「っ……はい!!!」
光によって照らされたのは燈で、マイク要らずの大声で元気良く返事をした。その隣で七海は肩をがくりと落とし、ただ1人絶望の表情を浮かべていた。
「良いねぇ元気だねぇ!はいマイク!」
「……えっと、コホン!世良燈です!選んでくれてありがとうございます!ボクは乃愛さんや桜と違って難しいことは言えないので、一言だけ言いたいと思います!」
燈はそう言うとまたまた俺に熱い視線を向け、渡されたマイクを使わずに大声で叫んだ。
「零央!!!大好きだよーーー!!!」
「ブフッ!!?」
まさかの公開告白。そのせいで周囲の視線も一瞬で俺に向き、羨むような怒りのような嫉妬のようなそんな色んな感情で突き刺された。
「流石生徒会長!思い切りが良いですね!カッコいい!そしてかわいい!ヨッ!陸上の王子様!それでこそ世良燈!最強!」
「ふふん!!!」
日向から無茶苦茶に煽てられ、調子に乗った燈は胸を張って綺麗なドヤ顔を披露していた。そんな堂々とした立ち振舞いの後ろで七海は青ざめており、遂には逃げ出そうとしたところを栞に捕まってしまった。
「さぁさぁ!最後は1位と2位を同時に発表したいと思います!どちらが1位なのか………結果は!」
これまでよりも長いドラムロール音が体育館に鳴り響く。その間七海は慌てふためいており、燈と乃愛に落ち着くようにとなだめられていた。対する栞は相変わらず堂々と立っており、結果をひたすらに待っていた。
そんな真反対の2人をいったりきたりしていたスポットライトがBGMが止まると同時に、このミスコンの1位を示すように明るく照らした。
「2位は!木下七海さん!そして1位は藤田栞さんです!おふたりともおめでとうございます!」
発表と共に会場は大きな拍手で包まれる。慌てていた七海はずっと緊張しっぱなしで疲れたのかぐったりとしていた。そして栞も流石に安堵したようでホッと一息ついて柔らかい表情になっていた。
「じゃあ2位のななっちから挨拶してもらおっか!ほら立って立って!」
姫崎に急かされるままに七海はマイクを持たされて前へと進んだ。挙動不審になりながらも七海はなんとか己を奮い立たせて喋り始めた。
「えと…………あの……あ、ありがとうございます。一応聞くんですけど、間違えてたりしないですか?大丈夫ですか?だってほら、皆すっごく可愛くて、カッコ良くて……でも、あの、とにかく……私を選んでくれて嬉しい…です。はい」
「大丈夫ですよ七海さん!誰も間違ってません!それだけ皆から好かれてるって証拠です!自信を持ってください!マジ女神!」
「そ、そうですか…?ふへへ…………」
ミスコンで2位を取ったという事実は七海にとっては大きな自信を持つきっかけに繋がったようで、天使のようなニヤケ顔で元の位置へと戻っていった。そんな七海からマイクを受け取り、交代するように栞が前に出てきた。
「では最後に1位の藤田栞さん!ビシッと決めちゃってください!」
「………はい。皆さんお久しぶりです。藤田栞です。またこうして皆さんの前に立って話をするなんて思ってもみませんでした。なんだか懐かしい顔ぶれも居ますが……飛び入りで参加した私を選んでくれて本当にありがとうございます」
堅苦しいがこれもまた栞らしい。それに1年前よりも柔らかくなっているのも確かだ。というか栞の言う通り体育館には去年の卒業生が多い気がする。栞が飛び入りだというのに1位だった理由はそういうところもあるのだろう。そもそも今の2年生や3年生はお世話になった相手でもある。
「素敵な挨拶をありがとうございます!そしておめでとうございます栞さん!私達は栞さんが生徒会長だったからこそ助けられた場面も多かったです!感謝してもしきれません!」
「ふふっ。だそうだ乃愛に燈ちゃん。私を越えるにはまだまだ先は長そうだぞ」
「「ぐぬぬ…………!」」
生徒会長だった者としての格の違いとも言うべき余裕の態度を崩さず、前生徒会長と現生徒会長に挑発する栞。2人はその挑発に生徒会長であることよりも大事な意味合いを感じ取ったようで悔しそうに唸っていた。
「いいねいいね!バチバチじゃん!じゃあ来年もやろっか!何なら伝統にしちゃおう!」
「それ良い!じゃあ新聞部にお任せを!語り継いでみせますとも!」
大いに盛り上がったミスコンの結果発表は来年以降も続けていくという宣言がなされ、盛大な拍手に包まれながら幕を閉じるのだった。
「どうだった零央!ボクの愛の言葉は!」
「……嬉しかったよ」
「ふふん!」
「デレデレしちゃって………」
ミスコンが終わり、皆で集合することになった。その目的は雑談することではなく、もう1つの勝負の決着をつけるためだった。
「それで?零央くんは誰に投票したのかな?」
「してない。なんて言い訳は通用しないからな」
「うんうん。私も頑張ったんだから零央くんも素直に白状すべき!」
「それは……その………あ、てか皆はどうしたんだ?やっぱり自分に入れたのか?」
誤魔化すために話題をそらす。すると桜以外の全員がニヤニヤし始めて桜の方を見た。その視線を受け取った桜は恥ずかしそうにしながらも一息入れると、俺の隣にいた薫に指差した。
「………んっ」
「え………どういう…」
その行為の意味を探ろうと薫が戸惑っていると、桜の代わりに燈が説明し始めた。
「桜の提案で!ボク達は誰にも投票してないんです!ボクらの分を全部薫さんにあげようって!」
「……そういうこと」
「っ…………そぅ……ありがと……ぅ…」
「うぇっ…ちょっと泣かないでよ!恥ずかしいじゃん!」
「ごめんなさいっ……年を取ると涙腺が……本当に……ありがとう…」
「もぅ………しっかりしてよ」
親子の感動的な話によって空気が和らぐ。ついつい俺ももらい泣きしてしまいそうだった。そんなやり取りを見て俺も覚悟を決め、投票した相手の名前を告げるのだった。
「……俺が投票したのは――」
そうして二度目の文化祭は滞りなく進んでいき、最後のキャンプファイヤーの時間では去年と同じように貸しきりの屋上でダンスを踊ることになるのだった。
――――――
どうもHaluです。
と、いうわけで!人気投票の順位はこうなってます!
1位 藤田栞
2位 木下七海
3位 世良燈
4位 安達桜
5位 水上乃愛
です!
実はどこも僅差だったんです!沢山の投票を本当にありがとうございました!
さて!というわけで1位の栞のイラストがございます!タイミングバッチリに納品されました!近況ノート及びXの方に乗せますので是非是非!ちょっと表情が柔らかくなった栞が見れるかと思います!ボイスはまだかかりそうです!その時は近況ノートでご報告します!
ではまた。どこかでお会いしましょう!
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