本編後の色々
温泉旅行は満喫したい その1
11月2日土曜日の昼過ぎ。三連休の初日。俺達7人はとある温泉街の旅館へとやってきていた。
「ではこれはお部屋の鍵ですので」
チェックインを済ませ、代表として保護者でもある
「ありがとうございます。ほら
「はーい!」
「よぉし桜!競争ね!」
「こら走るな!危ないだろ!」
部屋に向かって廊下を走ろうとする桜と
その道中、薫さんはどこか恥ずかしそうにしていて俺はどうしたのかと聞いてみることにした。
「どうしたんですか薫さん?」
「……少しね。やっぱり私だけ浮いてないかしら」
「そんなことないですよ。自慢の彼女です」
「…………はぃ…」
俺は薫さんの手を優しく包み、皆が待っている部屋へと向かうのだった。
「ねえねえセンパイ!!外に温泉あります!!すごい!!」
「少しは落ち着け」
部屋に着くと既にテンションが最高潮に達している燈がまるで踊ってるかのように動き回っていた。
予約した宿は7人でもそこそこのスペースがあり、和室にリビングに客室露天風呂に……予算を少しでも出してくれた皆の親には感謝しないといけない。
「こーら。荷物の整理が先だと言ってるだろ。そろそろ怒るぞ」
「いいじゃん栞ちゃん。こんな機会ないんだしさ、栞ちゃんもゆっくりしなよ。私がやっとくからさ」
「しかし…………」
場を仕切ろうとしてくれている栞に七海が気をつかって休むように促す。それでも休もうとしない栞に乃愛が背後から近寄り、肩を揉み始めた。
「そうですよ栞さん。ちゃんと勉強の疲れをとりましょう。私、マッサージ得意なんです。やってあげますから~」
「そ、そうか?なら、お願いしようかな…」
「はい喜んで。じゃあこちらに横になってくださーい。うつ伏せでお願いしまーす」
七海と乃愛に絆された栞はようやく肩の荷を下ろし、普段では考えられないほどのとろけきった表情で乃愛のマッサージを堪能し始めた。
その後、俺と薫さんも荷物を整理していると桜が俺達の間に入り込んできた。
「ね、
「どうした?」
「…………まだ時間あるよね。3人でさ、デートしない?」
「……桜と零央くんのふたりで行ってきなさい。ほら…私は新幹線で疲れてるから」
桜の提案を申し訳なさそうに断る薫さん。きっと邪魔になると思っているのだろう。そんな薫さんを俺が誘おうとすると、それよりも先に桜が俺と薫さんの手を握って少し照れながらも笑ってみせた。
「行こうよ。もう家族なんだからさ」
「……っ………いつの間に…こんなに立派になって……」
「だから言ってるじゃん。もう子供じゃないんだって」
桜の成長ぶりに涙を流す薫さん。俺も泣きそうになるのを堪えながら、必死にカッコつけることにした。
「よし。じゃあ行こうか」
「うん!」
「…っはい!」
俺達3人は荷物の整理を終えてから立ち上がり、栞をもてなしている乃愛に声をかけた。
「ちょっとデートしてくる。夕飯前には戻るから。もしもの時は連絡してくれ」
「いってらっしゃーい。あ、なんか美味しそうな物あったら買ってきて!」
「はいよー」
そうして俺達が部屋を出ようとすると、和室の方を探索していた燈が大慌てで現れた。
「デート!?ボクも―――」
「燈ちゃん。これなーんだ」
燈の横槍を遮るかのように七海が荷物を指差す。それは燈の荷物で全く手がつけられていなかった。
「…………帰ってきてから――」
「駄目です。荷物を片付けない人にデートの権利はありません」
「そんなぁ………」
七海に注意され、燈は反省したのか肩を落として荷物の方へと向かっていった。そんな燈へ桜は仕返しと言わんばかりに意地悪な顔をして煽った。
「ねえ燈」
「……なにさぁ」
「私が最初ね」
「!!?!?!零央センパイ!?!」
「………そうだな」
何故か燈から助けを求められたので俺はあえて桜の頭をなで、優しく微笑んでやった。
「うひひ………」
「ボ、ボクが最初なのにぃ…………」
「はいはい。分かったら栞ちゃんの言うことは聞くこと。ね?」
「…………ごめんなさい」
「気にしてないさ………ぅ……乃愛……もうちょっと…そこ………ぁ…いい……」
「お客さんこってますね~」
しょんぼりとしてしまった燈は後で慰めることにしつつ、桜と薫さんとの温泉街デートへと出発したのだった。
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