ex4 その後の彼女 If
作者からのお知らせです。このお話はノクターン様にて公開しているIfルートの薫編を含めた後日談となります。といっても特に大きな変化はありません。ただ桜の母親でもある薫がヒロインに含まれているだけとなります。
ではどうぞ。
―複雑すぎる家系図―
「大丈夫ですか薫さん?無理せず言ってくださいよ?」
「えぇ……ありがとう乃愛ちゃん」
あの日、私も零央くんと付き合うことになってから数年が経った。皆が高校を卒業し、大学進学や就職をし、シェアハウスという形で家を借りてまさしく順風満帆といった暮らしをしていた。
今日は休日。リビングでは乃愛ちゃんと桜と私の3人でのんびり過ごしていた。零央くん達はショッピングモールに買い出しに行ってくれている。乃愛ちゃんと桜は私のために残ってくれたというわけだ。
「…………どっちなんだろう」
「まだ分からないんですか?」
私は大きくなってきたお腹を優しくさすりながら乃愛ちゃんに「そうなの」と返した。すると乃愛ちゃんは少しニヤけながら台所にいた桜に声をかけた。
「桜的にはどっちがいいのー?」
「………乃愛さん?私それだけは考えないようにしてるんだけど?」
「いいじゃーん。栞さんの時も同じこと話したじゃーん」
「それとこれとはまた違うの!」
桜は夕飯の仕込みが一段落ついたのかエプロンを外しながらリビングにやってきた。昔は可愛かった桜もいつの間にか立派な主婦だ。私なんかよりよっぽど。
「ただでさえ大きくなった子供達になんて説明するか悩んでるのに…………」
「そんなこと今から考えてたらもたないよ?」
「いやだからぁ……」
頭を抱えながらクッションの上に座る桜。そんな桜に私も意地悪な質問をしてみることにした。
「桜は…私に子供が出来るのは嫌だった?」
「そういうわけじゃなくて………もちろん嬉しいよ?でもさぁ…その……お母さんの子供ってことは私の弟か妹になるわけで………てことは私の子供にとってそれってどうなるのって話で……」
「えーっと…………まず薫さんがおばあちゃんになって………その場合零央くんもお父さんでおじいちゃんにもなって……えー…叔母か叔父?」
「父親が同じ叔母か叔父なんてあり得る?」
「……考えたら駄目な気がする!色々と!」
「だから考えないようにしてたって言ったじゃんか!」
桜と乃愛ちゃんが楽しげに話し合っていると、リビングへと眠たげな男の子がやってきた。
「おはよ……」
「あ、やっと起きてきた。どうせ夜更かししてゲームしてたんでしょ!」
もう昼過ぎだというのにまだ眠そうな男の子に桜が厳しめに注意をし始めた。すると男の子は気まずそうにそっぽを向いて呟いた。
「………してない」
「へぇ?七海さんに聞いたら分かるんだよ?」
「……………ちょっとだけ」
「まったく。嘘はダメって教えてるでしょ」
自身の息子を叱っている桜を見ながら、私は乃愛ちゃんに桜の変わりようについて小声で話しかけた。
「…………桜がそんなこと言うなんてね」
「……ですね。昔はあんなだったのに」
「そこ!聞こえてる!」
「「ごめんなさーい」」
私達ふたりが桜に対して平謝りすると、男の子は私の方にやってきて、興味津々といった様子で尋ねてきた。
「もう生まれそうなの?」
「いいやまだまだよ。産まれてきたらお兄ちゃんとして優しくしてあげてね」
「うん…………えっ……ん?お腹の子供はおばあちゃんの子供で………うん?」
「そういう詳しい話はお父さんに聞こうねー」
難しい話になってきた所を桜が割り込み、全ての責任を零央くんに投げる形でこの複雑すぎる家系図の説明を先延ばしにしたのだった。
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