ex3 その後の彼女達 その3
―生徒に人気の新任教師―
「先生!」
「ん?どうしたの?」
授業が終わり、昼休みに入ると女子生徒数名が私に声をかけてきた。
「この前の続き!聞かせてくださいよ!」
「えぇ………そうだなぁ……お弁当食べながらでもいい?」
「もちろんです!」
「やったぁ!」
「急いで急いで!」
生徒達に急かされるように私は職員室にお弁当を取りに行き、その後に皆で屋上に向かうことにした。
「えっと……前回はどこまで話したっけ?」
「文化祭ですよ文化祭!劇はどうだったんですか!」
「あー…そこか。では、こほんっ」
興味津々といった生徒達に私はまた昔話をしてあげることにした。
高校3年生の文化祭。私達のクラスは演劇をすることになった。しかもラブロマンス物をだ。主役はもちろん私と零央くん。別のクラスになった七海ちゃんやそもそも学年の違う燈ちゃんにズルいと猛抗議されたっけ。まぁちょちょいっと買収したけど。
その頃の零央くんはとってもモテモテだった。そもそも顔が良いし、優しいし、6人目として取り入ろうとしてくる女子が何人かいた。その事に零央くんは気づいてなかったけど私と桜がどれだけ苦労したことか。
という状況だったというのもあり、私は本番でとある作戦を実行した。リハーサルの段階では台本になかったいわゆるアドリブってやつだ。
物語もクライマックス。最後に私は零央くん扮する王子様に助けられたところで終わり…だったはずなのだが、私は幕が降りる寸前に油断していた零央くんにディープキスをした。
体育館は騒然としていたが、裏方をしていた琴音ちゃんがニヤニヤしながら幕を降ろす手を止めていたおかげで、私はライバル達に存分に見せつけることが出来たのだった。
もちろんその後に先生からものすごく怒られたが………ちょちょいっとね。そういうのは得意だから。
「…………というのが伝説の文化祭として今も語り継がれてるってわけなんだよ」
「あの話って本当だったんだ……」
「というか先生大胆~!」
「その時の写真とか無いんですか!?若い頃の旦那さん見てみたいんですけど!!」
「え~……あるかなぁ…あの人写真とか苦手だったからなぁ………」
スマホの画像フォルダを開き、一応探してみる。めいっぱい下にスクロールしてるけど昔の写真なんて流石に…………あっ。
「……懐かしい」
「え、あったんですか!?見せてください!」
「あ、いや演劇の時じゃないんだ。それの1年前の文化祭の写真なんだけど……それでもいい?」
「全然っ!!」
生徒達に覗き込まれ、私はその写真を皆に見せた。今思い返すだけでも懐かしい。薄暗い屋上でなんとか写真を撮ろうと四苦八苦し、校庭のキャンプファイヤーの明かりをバックに撮った思い出の写真。まさしく青春の1ページ。この写真を撮る前に皆でキスしまくってたのは秘密だけど。
「うっわぁ……先生若い…旦那さんカッコいい………」
「いいなぁ…青春だなぁ……」
「青春に憧れるのはいいけどね、皆は5股なんてする男に引っ掛かっちゃダメだからね?」
「出たイブ先生の持ちネタ!」
「5股なんて許してる方も許してる方ですからね~!」
「私だったらそもそもムーリー」
「なんだと~!今度の小テスト難しくしてやろうか~!」
その後も私達は昔よりも賑やかになっている屋上で騒ぎまくり、今日も今日とて何気ない日常を過ごしたのだった。
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