第7話 一難去ってまた一難

 あれからというもの……


「センパイセンパイ!」


「はいはいなんですか」


「今日の写真!どうでした!」


「………良かったよ。かわいかった」


「ぃひ………ありがとうございます!」


 毎朝毎朝決まった時間に燈から下着の自撮りが送られてくるようになってしまった。初めはスルーしようとしていたのだが、その日のうちに教室にまで乗り込んでこられたので諦めて構ってやることにしている。


「それにしても……やっぱり屋上っていいですね!ボク憧れてたんです!中学は立ち入り禁止だったから…夢が叶いました!」


「そりゃ良かったな」


 燈が絡んでくるようになったので昼休みは屋上に逃げることにしたのだが…あっさりと見つかってしまい、何故かふたりで昼飯をつつくようになってしまった。


「それでですね!桜ってば面白いんです!今度センパイに紹介したいなって!」


「………それだけはやめてくれ」


「なんでですか?」


「いや……なんとなく………」



 シナリオによって守られていた主人公の妹。会ってしまえばとんでもないことが起こる気がする。まさに今の俺たちの関係のような。


「………分かりました。考えてみればボクとしてもちょっと嫌ですから」


「そうなのか?」


「はい。だって…………センパイには、ボクだけを見ててほしいですもん」


「スゥーーー………さいですか…」


 イタズラっぽく笑う燈の表情を見てドキッとし、少し今の状況を考えてしまう。



 そもそもだ。この世界の主人公である楓は燈の事をどう思っているのだろう。ゲーム中の描写的に好意を持たれている事に気づいているはずなのだが……この世界では乃愛一筋だから他の女子の気持ちには答えられないということなのだろうか。

 まぁ普通に考えたらそれが当たり前だ。ハーレムとか言ってる俺の方がおかしい。だけど燈によれば楓はあれからも俺と絡んでいるのを良く思っていないらしい。事あるごとに離れた方がいい。事件に巻き込まれるぞ。と注意されているそうだ。


 心配する気持ちも分かる。仮に俺が同じ立場ならそうするだろう。

 だったら自分の手中に収めておくべきだと思うのだが…口うるさく注意するだけでなく、何か弱みでも握られているのかと、親身に寄り添うべきだった。

 だけどそれはしない。あの日もそうだったが、俺に対しても嫌悪の視線を向けるだけ。燈に対してもダメだと言うだけ。



 ゲーム中でも匂わせ自体はあった。


 恐らくだが主人公の本質は…………



「――――イ。……センパイ!!」


「ぁ……悪い。考え事してた」


「もう……昼休み、終わっちゃいますよ?」


「そうか。じゃあ戻るとするか」


 燈の元気な声で現実に引き戻され、俺たちはふたりで屋上を後にすることにした。


「待ちなさい」


 そうして燈と分かれ、教室に戻ろうとしていた矢先、とある女子に声をかけられてしまった。


「………なんすか?」


 女子の正体はヒロインの1人でもある生徒会長藤田栞。あれ以来話したことはない。久しぶりの対面だ。


「君に話がある」


「時間もうないんすけど?」


「そうだな。だから放課後。生徒会室まで来てほしい」


「…………へいへい」


 栞相手に威圧しても意味がない。大人しく言うことに従っていた方が面倒がなくて済む。


 それに俺としても栞には用事があった。ここで話せるのは好都合だ。





 なんてったって次のイベントは…………



 6月27日木曜日。

 イベント名『砕ける信念。堕ちる正義』



 対象ヒロイン 藤田栞

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