第2話 主人公の周りにはハーレムヒロインが沢山
ヒロイン達の胸糞エンドを回避するためにもまずは観察。これが大事だ。主人公がどのルートに入るのかを見極めなければならない。
ゲームの開始は6月3日から。なんの因果かその日は俺がこの世界に転生した日だ。この中途半端な日付が何を意味するかというと、既にヒロイン達と出会い、ある程度親睦を深めている状態からスタートするのだ。
ゲームの難易度自体がかなり高いというのもあり、あれから一週間経った6月10日の今日の段階で主人公の動き次第によっては既にフラグが立っている可能性もある。
というわけでここ数日の観察による結果と共に、主人公周りの女子の情報を改めて整理するとしよう。
まずは幼なじみ枠の水上乃愛だが……乃愛に関しては俺が何も動かなければ問題はない。一番安全ともいえる。
次に俺たちと同じクラスのオタク女子である
主人公との出会いは図書室でラノベを手に取ろうとしたところ、同じラノベを取ろうとした主人公と手が触れ合い……というなんともベタベタな展開。まぁそのくらいが分かりやすくて良い。
明るくて話も合う主人公に密かに恋い焦がれている。だが自分から話しかけることはせず、昼休みの今も乃愛や友人と楽しそうに話している主人公の事をこっそりと目で追っている。どうやら順調に話は進行しているようだ。
そして次は……
「センパーイ!」
主人公達の方をぼんやりと眺めていると、教室の後ろのドアから元気な声が聞こえてきた。
「センパイが忘れたお弁当を
「わざわざありがとな」
「いえ!これくらい!それでは!」
嵐のような勢いで主人公に弁当を届け、そのまま教室を去っていった女子こそ3人目のヒロイン。ボーイッシュ僕っ娘の「
燈の主人公との出会いは彼女の友達である主人公の妹「
余談だが、妹と主人公に血の繋がりはない。それが判明するのは隠しルートである桜ルートをプレイする必要があるのだが……シナリオライターに人の心が残っていたのか、妹に胸糞悪い要素はなく、家族でもある妹に手を出してる時が一番気楽である。
さて、ヒロインは後もう一人居るのだが…
「君、少しいいかな」
突然背後から声をかけられる。聞いたことのある凛としていてかっこいい女性の低い声だ。
「……なんすか」
噂をすればなんとやら。俺の後ろにはこのゲームの4人目のヒロインが立っていた。
「ここじゃ目立つ。場所を変えようか」
そういって連れてこられたのは生徒会室。わざわざ自分からこんな不良男とふたりっきりの空間を作るとは……これだから痛い目にあうんだぞお前。
「さて、単刀直入に伝えるが……最近君から嫌がらせを受けているという報告が私の耳に届いてね」
「……そんなのしてねえよ」
「そうか。被害者によればやけにこちらを睨み付けてくるといった内容なのだが……本当に心当たりはないのか?」
「目付きが悪いだけっすよ」
「……先程も、とある男子生徒を睨み付けていたようだったが?」
「………………はぁ」
この無駄に正義感の強く、引き下がるつもりのない女子の名前は「
主人公とは彼女が廊下でプリントを落とした時に拾って貰ったのが出会いのきっかけ。それから度々主人公は栞の仕事の手伝いをするようになり……といった流れ。
栞はかなり真面目な性格で、曲がったことが大嫌い。その性格ゆえに敵を作りやすく、それがきっかけに事件を起こしてしまうのだが…今はまだこの話はいいだろう。
それよりも、この状況をなんとか切り抜けなければならない。目をつけられては行動しづらくなる。
「人を見た目で判断するのは良くないっすよ会長さん」
「そ、それもそうか…だがそれでは楓くんが…………ハッ!?いや、なんでもないぞ!?」
栞はその体格から中学までは嫌がらせにあっていた。つまり見た目の話をしてやれば反論出来なくなる。
それにチョロい。多分一番チョロい。
「そろそろいっすか?まだ昼飯食い終わってないんで」
「あ、あぁ!すまなかった。だが他の者からも今回のような報告があった場合は……」
「分かってまーす。気を付けまーす」
俺は栞にそっけなく返事をし、生徒会室を後にした。
これでいい。そもそもここ数日観察していたのは事実だし、上手く誤魔化せて良かった。わざわざ善人になろうという気もない。破滅さえ防げればそれでいい。
一通り観察して分かったことは色々あるが…恐らく主人公は乃愛ルートに行くことだろう。主人公が何か積極的に動いている様子もない。ゲーム中ではなにもしなければ乃愛ルートに入るからきっと同じような流れになるはずだ。
ではこの場合の問題は何か。
このゲームで最初のイベントが、この週末に起こるということである。
初見のインパクトで日にちまで覚えてしまっている。対処の方法がない完全な初見殺しで、一撃でこのゲームの本質をプレイヤーに示してきた最悪のイベント。
6月14日金曜日。
イベント名『ボクだって女の子らしく…』
対象ヒロイン 世良燈
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