【本編完結】NTR系エロゲの最強竿役に転生したので、主人公の代わりにヒロイン達の破滅フラグをへし折ってやります

@HaLu_

第1話 転生したらNTR系エロゲの竿役だった件

「お、おい……」ヒソヒソ……

「何かあったのかな…」ザワザワ……


 周囲からの視線が痛い。そりゃ今まで録に学校に来てなかった奴が朝のホームルームから大人しく席に座ってればそんな反応にもなるだろうが……


「も、もうすぐ期末テストだからな……夏休みが近いからって気を緩めるなよー……」


 教壇に立っている男の担任も俺の方をチラチラと見ながら話をしている。居心地悪すぎるだろ。コイツの今までの行いのせいもあるだろうがこんな対応なら来たくもなくなる。



 キーンコーンカーンコーン


 クラスメイトに怯えられながらのホームルームは終わり、俺の周りの席の人間は悉く席を離れた。だが俺はそんなこと気にすることなく、とある男女に目を向けていた。



 男子の方はこれといった特徴はない。どこからどうみても普通の男子高校生でしかない。名前は宮野みやのかえで。帰宅部だがコミュ力は人並み以上にはあり、それなりに友達も多い。


 こっちはどうでもいい。そんなことより大事なのは女子の方だ。


 ふわっとしたボブにまだ幼さの残る横顔。体つきは少しふくよかな印象をうける。性格はかなりのしっかりもので、誰にでも優しい。名前は水上みずかみ乃愛のあ。あの冴えない男子の幼なじみだ。


 こうして同じクラスになれて初めて分かる。普通の男なら惚れる。他の女子と比べても群を抜いている。ルート自体はかなり難しいがそれがまたいい。何度も脳が破壊された先に見たハッピーエンドはそれはもう素晴らしい……と、そろそろ俺の自己紹介もしておこう。


 俺の名前は井伏零央いぶせれお。髪を金色に染め、格闘技でも始めれば無双出来るのではないかと思えるほどの筋肉と身長180を越える体格の良さ。犯罪者のような極悪な人相。股間にぶら下げたる剣は龍の如し。


 まさしく悪役。まさしく竿役。


 そう。それが俺、井伏零央。


 R18ゲーム『俺のハーレムヒロイン達がいつの間にか寝取られていて……』における、主人公の幼なじみである水上乃愛を狙う、ゲーム中最強スペックのチャラ男である。




 ………俺だって未だに信じられない。昨日まで平凡な大学生でしかなかった。バイト帰りにちょっと車に跳ねられて、目が覚めたら知らない部屋に居たんだ。

 そこでなんやかんやと確認した結果、俺は生前にプレイしたエロゲの世界に転生したという結論に至ったのだ。

 しかも俺が何度も敗北した水上乃愛ルートの天敵、井伏零央として。



 だが、正直こっちに転生出来て良かったと思っている。

 あのゲームにはとんでもない仕様がある。パッケージや序盤の展開からハーレムゲーっぽい雰囲気だけは出してくる。

 だけど最終的に主人公の元には1人しかヒロインが残らない。どれだけ頑張ろうとも、誰かのルートに入ることが確定した瞬間に他のヒロインのフラグは全部折れ、今まで仲良くイチャイチャしていたはずのヒロイン達が少しずついなくなっていく。

 そのくせルートに入っても必ずしもそのヒロインと幸せになれるとは限らない。そこから寝取られないために努力しなければならないのだ。

 ハーレムルート?そんなものゲームのタイトルの通りあるわけない。



 つまり主人公になれば絶対にヒロイン達が他の男と関係を持つようになるのだ。それが幸せなら何の問題もない。だが大体は胸糞悪い過程を経て、破滅の未来を辿ることになる。しかもエロゲらしいシーン付きだ。

 そのエロシーンは初見ではスキップ出来ない鬼畜仕様により強制的に見させられ、そのあまりの衝撃に一度見れば忘れることが出来なくなる。




 そんな中、この男井伏零央ならどうだ。



 主人公ではない零央ならゲームの力に縛られず、胸糞悪い展開を全てねじ伏せることも出来るかもしれない。もしかしたら俺がサポートしてやれば主人公は幻のハーレムルートに突入するかもしれない。


 寝取られってのはフィクションだからいいんだ。胸糞系はフィクションだからギリギリ許されているのだ。同じ世界を生きる1人の人間として、分かっている破滅から人を救って何が悪い。あんなに健気なヒロイン達には幸せになって欲しいと願って何が悪い。



 それにこの世界に転生した俺がどこまで生きられるのかも分かっていない。明日には意識が元の零央に戻ってる可能性だってある。


 ならやることは一つ。



 俺が俺であるうちに全ての破滅フラグをへし折り、主人公とヒロイン達の順風満帆な暮らしを手助けしてやることだけだ!

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