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 この文章は、学生の一部によってSNSにアップされ、小規模ながらネット上で話題になりました。


 話自体の内容が、というよりはやはり、その奇妙な経緯が原因だったのでしょう。


 現在でも『きよすみりょうた』の名前で検索すると、同様の張り紙を見たが、名前の部分が違った、というもの、自分も『きよすみりょうた』という名前について知っている、というものなど、様々な言及が見られます。


 ただ、不気味ではあったものの、実際に霊現象が起きているわけではなく、あくまでコピー用紙の束をロッカーに挟み込んでおく、という人間にも十分可能な行為であったため、悪質ないたずら、という見解で徐々に話題は収束していったと思います。


 ただ、そのように単純に受け入れている人ばかりでもないようでした。


 というのも、事件発生当初、つまりロッカーにコピー用紙が挟まれているのが発見されたとき、その場に居合わせた中でひとりだけ「怒っている」学生がいたのです。


 長瀬君という学生でした。


 僕も含めその場に居合わせた学生は、多くが困惑し、中には高揚感や好奇心、ありていに言えば少しワクワクしていたものもいると思います。それは実際、怪談の内容がSNSに投稿されたことからも読み取れることでしょう。


 嫌悪感を示すにせよ、なんだろう、キモイね、程度だったと思います。


 なんにせよ、基本的にその場にいた人間は、その怪談をまじめには受け取っておらず、切実な感情を向けるようなことはなかったように思います。


 たった一人を除いては。


 長瀬くんは、コピー用紙の内容を読んだ後、それをくしゃくしゃに丸めて、


「こういうことって、なにが楽しくてすんだろうな」


 とつぶやきました。


 彼とはグループワークで軽く話したことがあったのですが、少し浮世離れしているというか、どこか遠くに目線が向いているような人で、良くも悪くも感情をあらわにするようなタイプには見えませんでした。


 だから、彼の声がひどく震えていたこと、目じりに涙が滲んでいたことに、驚いたのを覚えています。


 僕は、この時点ではまだ『きよすみりょうた』という名前についてすっかり忘れてしまっていたこと、そして、自分自身があの文章に対しどちらかといえばワクワクしていたことなどがあり、少しだけ気まずいような、妙なものを見てしまったような気持ちになりました。


 今思えば、彼の反応は至極当たり前だったのですが。


 そして、昨日の事が起きました。

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