第6話


「……んぁ、あさか。ふぁあぁ……」


 目が覚めた。なんかいつも以上によく眠れた気がする。魔法を使って疲れたからだろうか。

 とりあえず今何時か確認しよう。ステータス


 ブォン


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 名:緋野 燈矢(ひの とうや)2歳


 職:緋野家の2歳児


 Lv:1

 経験:0


 生命力:30


 力:3


 魔力:59/60


 適正:火、水、生、死


 スキル:


 G:0


 06:50

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 朝7時か、結構寝たな。寝る前は21時だったので10時間くらい寝た様だ。いやまだ24時間か見てないからもっと寝てるかもだけど。


 てか、寝る前は増えて無かった魔力が10増えている。やはり使えば増える感じなんだろうか。


 コンッコンッコンッ


「おはようございます。燈矢様。起きていらっしゃいますか?」


 ステータスを見ていたらみやが起こしに来たようだ。いつも大体同じような時間に来るから、7時頃にいつも来てるのかな。

 一応ステータスを消してからみやに声をかける。


「いいよ、はいって」


 ガチャ


「失礼します。おはようございます、燈矢様。そろそろ朝食のお時間なので準備をしましょう」


「ん、わかった」


 寝巻きから着替えるのを、みやに手伝って貰いながら今日どうやって過ごすが考えている。

 うーん、昨日魔法使えるようになったし、どのくらい魔力を使うのか、どんな事が出来るのかを試してみたい。みやには昨日使えるのは伝えたし、教えて貰えるかもう1回聞いてみようかな。ダメだったら隠れてやるしかないけど。

 

「ねぇ、みや」


「はい。なんでしょうか」


「ぼく。きのうまほうつかえるようになったでしょ?だから、おしえてほしいんだけど…… だめかな」


「…… そうですね。すみません燈矢様。その事なのですが、昨晩勝手ながら旦那様と奥様に燈矢様が魔法を使えるようになったとご報告させて頂きました。勝手なことをしてしまい、申し訳ありません」


 みやはそう言って深く頭を下げてくる。

 いや、まぁみやにバレれば必然的に父ちゃん達にバレるだろうと思ってたから特に驚きはしないし、怒りもしない。けど、父ちゃん母ちゃんをビックリさせられないのが少し残念程度かな。


「えっと、たぶんそうなるとおもってたから、べつにいいよ。きにしてない」


「ありがとうございます」


「うん。それより、どうだった?おこってた?」


「いえ、怒っては居ないかと、ですが勝手にやっていた事はお小言頂くかもしれませんね。恐らくそれも含めて今日お話になるかと思われるので、思った事を伝えれば良いと思いますよ」


「そっか、わかった」


 ふむ。怒っては居ないそうだ。それは結構ありがたい。実際俺はダメと言われていたから少し罪悪感があったんだ。理由は教えてくれないが、頑なに5歳までダメと言うよっぽどの理由があるのかなと考えたが、俺の好奇心には勝てなかった。


 父ちゃんと母ちゃんはお互いとても忙しくしている。だから1日で会う回数は少ないが、それでも俺の事を大事にしてくれているのはとてもよく分かる。前世ではあまり家族関係が良くなかったから今回は仲良くいたいのだ。だからあまり迷惑をかけたくないし、期待されているなら応えたい。


「終わりました。では行きましょう、燈矢様」


「うん。ありがと、みや」


 そして俺はみやに抱っこされ、食堂に向かった。


「やぁ、おはよう燈矢。よく眠れたかい」


「おはよう燈矢。ふふ、少し寝癖が着いてるわよ、いらっしゃい直してあげる」


 食堂に入るとすでに父ちゃんと母ちゃんは座っていて、俺を待っていたようだ。

 あと、母ちゃんに捕まって頭を撫でくり回されてます。嫌じゃないけど恥ずかしい。


 そんな事をしていると食事が運ばれてくる。今日のメリューはパンにサラダに目玉焼き、ソーセージ、あとスープらしい。

 だが、2歳児の俺には食えないので、食べやすいように小さくカットしたパンにスクランブルエッグと野菜、カットされたソーセージを挟んでミニサンドイッチみたいな感じだった。スープは同じのだと熱いらしく、少し温度を下げたようだ。


 うむ。いつもの通り美味しいご飯だった。


「さて、燈矢。今日はこの後暇かい?」


 多分さっきみやが言っていた事だろうな。


「うん。ぼくはだいじょうぶだよ」


「そうか、なら少し、私とお母さん、燈矢の3人でお話ししようか」


「わかった」


 さて、先程みやはお小言は貰うだろうと言っていたが、どうなるか。

 出来れば魔法は続けたいが、ダメだったらどうするか考えないとな。


 そうして場所を変え、3人でお茶を飲みながら話すことになった。場所は何故かガゼボになった。なぜガゼボなのか問うと「まぁ、少し真面目な話だけど、リラックスしながら話したいからね。景色のいいところで話そう」と言われた。


「さて、早速本題と行こう。燈矢、昨日魔法が使えるようになったね。それについて家族みんなで話しておきたかったんだ。あれから体調不良はないかい?」


「うん。ごめんなさい、ダメっていわれたのにかってにつかって。けどこうきしんにまけちゃって……。あと、たいちょうはだいじょうぶ」


「そうか、それなら良いんだ。確かに私達がダメだと言ったことを勝手やった事は褒められることでは無い。けどね、私達も説明不足だったんだ。燈矢に何も言わずに、駄目だと言い続けて危険な事をさせてしまった。本当にごめんね。けど、それ以上に燈矢が誰にも教わらないで魔法が使えた事は誇らしく思っている。本当にすごい子だよ燈矢は」


「お母さんもごめんなさいね。ほら、1度私に魔法の感覚を聞いたことあったでしょう?あの時に後回しにしないで、ちゃんと聞くべきだったわ。本当にごめんなさい。お父さんも今言ったけど、私も燈矢が魔法を発現したことは誇らしく思うの。よくやったわね、偉いわよ。」


 そう言って父ちゃんと母ちゃんは俺の頭を優しく撫でてくれる。


「うん。ありがと。これからはなにかやりたいことあったらちゃんとつたえるね」


「あぁ、そうしてくれると私達も助かるよ。それで魔法の事なんだが、きちんと説明をしなければ行けないと思ってね。なんで5歳まで駄目だと言い続けたか、燈矢も気になるだろう」


 そう、そこだ。5歳になるまで教えないと使用人や父ちゃん母ちゃんには言われ続けていた。それにさっき危険なことと言っていたから恐らく何か問題があったのだろう。いや、今後もあるのかもしれないが。


 説明してくれるらしいし、聞けばわかるか。


「私達が駄目だと言っていた理由だけどね、本来普通の子は5歳になるまで魔法の適性は無いはずなんだ」


 魔法の適性がない?


「けど、ぼくはつかえたよ?」


「そう、普通の子はね。これでも私と亜衣夏はこの国でもトップの魔法士だ。もちろんそれなりに適性があって魔力量も大きい。そういう人達の間には産まれた子は、最初から普通の子より多い魔力量を持っている人が多いんだ」


「じゃあ、ふつうのこどもはまりょくをもってうまれないの?」


「いや、そこは少し難しいんだが、人は皆産まれながらに魔力をもっている。けど本来その所持している魔力は、身体の成長や精神の構築。まぁ簡単に言うと、より楽に生活できるように身体を馴染ませるんだ。その際に魔力を使っているから、本来魔法に使用するだけの余分な魔力がないのが普通なんだよ。ここまではわかるかな」


「うん。なんとなくわかるよ」


 つまり、今この俺の体にある魔力はこの世界に適応するために使用されており、本来魔法に使う、要は水や火などに変換する程に強い干渉力がない事が殆どという事だろう。年中ガス欠状態だというイメージかな。


「そうか、本当に賢いね。それでその身体や精神の構築が完全に済むのが大体4歳〜5歳の間になる。それまで普通は魔法適性が判明しないし、使いたくても使えない。これが通常の常識だ。そしてさっき言った魔力量の多い子供だけど、量が多いということは身体を適応させるのに必要な分を超えて余っている状態になるんだ。そうすると5歳未満の赤ん坊でも魔法を使うことが出来る」


 成程、俺の体はその状態って事だよな。


「けど、一つだけ問題があってね。5歳になるまでは身体中に魔力が流れ続けている状態で無理やり魔法を使うと、身体を巡っている魔力の流れを無視して使おうとするから、身体がどっちを優先していいか分からなくなってしまって魔力の流れが乱れてしまうんだ。そうすると使用後に気持ち悪くなったり、最悪命に関わる可能性もある。ここまでで分からないことはあるかい?」


 ふむ。なるほど。父ちゃんと母ちゃんは凄い魔法士だから俺の魔力量は多く、本来ガス欠なはずが、そうならないで魔力が余っていた訳か。

 けど魔力が余っているからと言って身体の適応仕切っていない。だからその適応を無視して魔法を使うと最悪死ぬ。と。

 

 ……は?しぬ?


 なに、俺知らぬ間に死の橋を渡ってたの?うっそだろ。おいおい父ちゃん、そんな大事なら早く言ってくれよ、言われたらやんなかったよ?死にたくないし。


「えっと。いのちにかかわるってしぬってことだよね?」


「あぁ、そうだな」


「ごめんない。そんなキケンなことだとおもってなくて」


「いや、それは私達が説明しなかったのが悪い、ごめんな、けど1度きちんと説明しなければいけないと思ったんだ。どうかな?今の話を聞いて、まだ魔法を使いたいと思うかい?5歳になれば命の危険については無くなる。もちろん事故や暴発による怪我などはあるだろうが、魔力が暴走して、という危険は無くなる。

 もちろん今の時期から使うといいこともある。魔力量が増えたり、周りに比べて長く魔法を使っているのだからその分アドバンテージがある。あと、幼い方が飲み込みも早いしやれる事は多い。

 私達は昨日話し合って、燈矢が今の話を聞いても魔法を続けたいと言うなら、万全の体制を整えて魔法をおしえるつもりだ。どうかな燈矢」


 俺が前世から使いたくてたまらなかった魔法。やっと使えたと思ったら今度は5歳にならないと死ぬかもしれないとか。今の話を聞いて怖くないという方がおかしいだろう。死ぬかもしれないと言われたら誰でも怖い。

 

 

 けど、それでも、俺は……










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