いつも誰かが側にいる

毎晩毎晩

　夜、自分の家が見えてくると、背筋に悪寒が走る。

　玄関扉を開けるのが怖い。

　自分には霊感なんてないし、そもそも幽霊など信じていない。

　まだ宇宙人の方が可能性があると思っている。

　なのに怖い。

　もしかしたら、後ろから誰か着いてきているかもしれない。

　玄関扉を開けて、家に入り、閉めようとしたその瞬間、その一瞬の気の緩みを突かれて、誰かが入ってくるかもしれない。

　万が一、鍵を締めても、

　ガン、ガンガン。

　とドアノブをイジる音が外から聞こえてくるかもしれない。

　あと数秒遅かったら入られていたかもしれない。

　毎晩そんなことを考える。

　部屋の明かりをつけて、シャワーを浴びていると、水音以外の音が気になる。

　シャワーを止めて、耳を澄ましてしまう。

　晩ごはんを食べているとき、ふとベランダに視線をやる。

　誰かが外からこっちを見ている気がする。

　男か女かわからないけれど、大人か子供かもわからないけれど、何者かがじっと見ている気がする。

　カーテンを閉めても、隙間から。

　寝室に入る。

　ベッドで横になる。

　また、扉が気になる。

　聞こえてくる予感がする。

　ドンドン、ドンドン。

　と扉を叩く音が聞こえてくる気がする。

　家が悪いんじゃない。

　友達の家でも、ホテルでも、同じようなことを考えてしまう。

　自分に霊感はない。

　統合失調症でもない。

　いたって正常だ。

　お昼は元気だ。

　でも、毎晩怖い。

　気が休まらない。