第8話 明らかに不審な少女

「着いたぁ」

「ここで良かった?」

「うんっ!」


 俺と由奈は近くのショッピングモールに来た。

 ショッピングモールにはいろいろな店が並んでいるし、食事の後に色々見て回れるのでちょうど良いのかもしれないな。

 とりあえず、由奈がお腹を空かしているので何か食べることにしよう。


「何食べたい?」

「んー、夕貴は何か食べたいのないの?」

「そうだなぁ、ハンバーグ食べたいかな」

「それじゃ、ハンバーグ食べよっ」

「いいの?」

「うん、私もハンバーグ食べたくなってきたからね!」


 俺たちはハンバーグを食べることにし、フードコートにあるハンバーグ料理を提供している店で注文をした。


 料理が出来上がるまでの間、俺と由奈はハンバーグを食べた後の予定を計画し始める。

 ショッピングモールにはあらゆる店があるので、暇することはないだろう。


「ハンバーグ食べた後はどうする?」

「映画とかどう?」

「最近話題の映画が確か放映してるよね」

「そう! それ見ようよ!」

「よし、決まりだね」


 俺たちはハンバーグを食べ終えた後は映画を観に行くことにした。

 たしか、上の階に映画館があったはずなのでそこに行こう。


 由奈はやはり映画が仕事だからとか関係なしに本当に好きなんだろうなぁ。

 そう考えると、由奈にとって女優という職業は天職だったんだろうなと思う。


「お、できたみたい」

「取りにいこっか」


 机の上に置いていた呼び出しベルが鳴りだしたので、俺と由奈はハンバーグ料理を受け取りに行く。


「おお~美味しそう」

「早速食べようか」


 俺はデミグラスソースのハンバーグを頼んだが、由奈は中にチーズがたっぷり入っているものを頼んだらしい。

 どちらも食欲をそそる香りを漂わせている。


「「いただきます!」」


 ハンバーグを一口食べると、口中に肉汁が広がっていく。

 由奈も美味しそうにハンバーグを頬張っている。きっとハンバーグを嫌いな人は少ないだろうな。


 そんなことを考えていた時だった。

 どこからか視線を感じる。誰かが俺たちのことを見ているのか。


 俺はあたりを見回す。


「夕貴、どうしたの?」

「いや、なんか視線を感じて……」


 もう一度よくあたりを見回す。


「ん?」


 よく見ると、由奈の後ろにある柱から誰かがこちらのほうをジーっと見ている。

 大き目のサングラスに白いマスク、そして夏にもかかわらずフード付きの長袖のパーカーを着ている。

 明らかに不審な見た目をしている。


 だが、神は肩まであり、体も華奢なので恐らく女性だろう。

 俺たちを見ているということは由奈目当てだろうか。

 もしかしたら、由奈のストーカーの可能性もあるのではないだろうか。


 俺はすぐに由奈に伝える。


「由奈の後ろの柱のとこにこっちを見てる人いるみたいなんだけど、どうする?」

「えっ?!」


 俺の言葉を聞くと、由奈はすぐに振り返った。

 すると、急に振り向かれたことにびっくりしたのか、その女性は「ひゃっ」と声を出してどこかへと走って行った。

 一体、なんだったんだろう。


「なんだったんだろう」

「でも、今の驚いたときの声どこかで聞いたことあるような気がする……」

「由奈の知り合い?」

「サングラスとマスクで顔が見えなかったから分からなかったけど、聞き覚えはあるような気がする。気のせいかもしれないけどね」

「そっか。まあ、とりあえず、今はハンバーグを食べようか」

「そうだねっ」


 少し不安が残りながらも俺たちは食事を続けた。

 由奈が聞き覚えがある声かもしれないと言っていたので、由奈の知り合いという可能性もありはするのだが、それならどうしてあのような格好をしていたのだろう。

 あの格好は不審がられても仕方のない恰好だと思う。


「「ごちそうさま!」」

「美味しかったね」

「うん、美味しかった! 次は映画館に行こ~!」


 ハンバーグを食べ終わった俺たちはすぐに上の階の映画館へと向かった。


 ♢


 映画館に着いた俺と由奈はすぐにポップコーンや飲み物を買ってから、観る映画のチケットを購入した。

 ハンバーグを食べた直後にポップコーンが入るのかとも思ったが、ポップポーンは意外にも食べれたりするんだよな。映画を観ながらだと無意識にポップコーンを食べ進めて、気づいたらなくなっている事とかよくあるしな。


「もうすぐ放映時間だからもう入ろうか」

「うんっ、楽しみ!」


 俺たちは指定のスクリーンへと向かい、座席に座る。

 今、話題の作品なので俺自身も結構楽しみだったりする。


「この映画、結構楽しみだなぁ」

「だよね、私も!」

「今、話題の作品だからね」


 映画の予告映像が終わり、いよいよ映画本編が始まろうとしたその時。

 一人、俺の隣に慌てて座った。

 きっと、時間を見てなくて気づいたら放映時間になっていたから急いで向かってきたのだろう。


「お隣、失礼しますね」


 その人は、小声でそう言った。

 声が高めなので女性だということは分かった。

 それと、暗くて見えづらかったが、その女性がサングラスとマスクを外す仕草が見えた。


 映画館にサングラスとマスクで?

 少し既視感を感じたが、今は気にするべきじゃないなと思い、俺は映画に集中することにした。


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