第28話

 ドラゴンも倒したし荒野を走るよブンブーン。


「道路に着きました。これよりタイヤモードで走りまーす、ウキウキ」


 館内放送のように、異次元空間に銀さんの声が響き渡る。頑張ってあたしと桜ちゃんでスピーカー作ったんだよね。

 今のあたしのナノマシン溶液なら何でも形作れるし、異次元を抜けて通信する魔導通信は桜ちゃんのお手の物だからね。

 今までもスピーカーはあったんだけど、ナノマシンスピーカーはやはり音が良い。


「タイヤモードになりました。出発進行ー」

「銀さん楽しそうだにゃ」

「楽しいは良いことだねえ。さーて少し寝るかな」


 ちなみに剛田はシミュレーションルームで、桜ちゃんが作ったシミュレーション戦闘を使って訓練している。訓練は脳内でやるんだって。

 だいぶハードらしいが、そんなことを感じさせず割と楽しそうにやってるなー。剛田、訓練好きそうだしね。


 う゛ぇあー、つかれたー。

 あたしの部屋のキングサイズベッドに靴を脱いで滑り込む。

 さ、寝よう。お休みなさーい。


 ――おきるにゃ、おきるにゃ!


 なにか声が聞こえる。にゃー助太郎かにゃ?


「ううーん。起きたよ。なにがあった?」

「シティに人がいないにゃ! 検問所が破壊されているので急いでシティまでいったら人が全くいないにゃ!」

「は?」

「シティ一つ人がいないなんてあり得ない話しだにゃ! 軍隊とかいるかもしれにゃい!」


 偵察ドローンを大量に飛ばす。


「軍隊はいないね。血の跡は燃やされてる。おびただしい血の跡だね」

「住民の死体は……?」

「偵察ドローンで見た感じ、中央広場に積み上がってる、というか塔になってる。このシティの人全てが標的にされたのかな」

「おえぇ。見たくないにゃ」

「燃えて骨になってる頭蓋とうがいが積み重なってるだけだよ。センサードローン発進。燃えて頭が残ったのか、首を切られて頭だけ集められたのか調べよう」


 進入はまだやめておきますねと銀さんが言い、ドローンで遠距離走査をしている。

 あらかた調べが付かないと怖くて入れない。

 センサードローンで走査したところ、特に燃えているところを感知。ドローンを近付かせて調べさせる。


「ここに大量のカルシウムがあるね。遺体は全てここで焼き尽くされたんだろう」

「じゃあ焼き壊されていない首はどういう意味だにゃ……」

「首は切り取られて骨が残る程度に焼かれたんじゃないかな。こんなことが出来るのは……」


 刀と炎の使い手、実験体二号機「かい」くんだけだ。


「ち、ち、ち、近くにいるのは間違いないにゃ」

「ここは国家だったよね。シティが密集しているはず。まさか全てが滅ぼされてはいないと思うけど」

「界くんはそんないかれたやつじゃないにゃ。心優しい……とは言わないまでも常識人として作られたナノマシン生命体にゃ」


 常識人がこんなことするかなあ、と思いつつシティの内部へ進入を開始。銀さんの砲塔の上にあたしと剛田が陣取る。


「索敵していて全く生命の反応が無いから、次のシティへ行っているかもしれない。索敵距離をもっと広げてみる」

「了解っす。もうセンサーもなにも、姉御に敵う部分はなくなりやしたな」

「どうだろねえ、白兵戦の経験はまだまだ足りないと思うよ」


 そうやって距離を広げていたら。

 いた。

 小高い山の上に、一体のナノマシン生命体の反応が。

 偵察ドローンを差し向ける。カメラがあるからね。

 偵察ドローンが到着するかどうかというときに、一瞬生命体が動いた反応があった。


「わー、炎で全部焼かれたよ……数百は飛ばしたのに」

紅蓮花ぐれんがだにゃ……あの技を見たのは研究所で調整をしていたときの界くんが放った時だけにゃ」

「じゃあ、小高い山に座っているのが界くんか。遠いなぁ」

「光学でやんすが、狙撃してみやす」

「ああ、肩に付いてる百ミリレールガンか。短口径だけど出来るの?」

「魔導で口径伸ばすんで射程は伸びやす。光学では捉えていやす。本当に軍服着てやんすね」


 ――このときの口径は砲身の長さのことだよ! 軍事用語はややこしいね!――


 地面に降り、足を固定して狙撃体勢に入る剛田。

 魔導によって短口径の百ミリレールガンが長口径レールガンへと生まれ変わる。

 桜ちゃんの魔導もチャージし、マッハ三十で発射される弾。当たればさすがに弾け飛ぶだろう。第一宇宙速度を超えている。

 しかし。


「当たってない! カウンターきやす!」

「シールド展開!」


 魔導、妖術、エーテルのシールドを展開する我ら。

 斬撃を飛ばしたであろうそれは魔導と妖術を切り裂いて、エーテルシールドでやっと止まる。


「凄い火力……」

「界くん、もう終わったのにゃ。完ちゃんは優しい性格になったのにゃ。任務は終わりにゃ」


 呼びかける桜ちゃん。界くんの答えは。


「斬撃の乱射だ! 桜ちゃん!」

絶対破壊防壁こっちくんにゃ!」


 界くんの斬撃は防壁を破れずに消えていく。


「あたしのレールガンはどうだ!」


 左腕に大口径のレールガンを作り、大弾頭のレールガンを連続射出する。


「『物干し竿』に切って捨てられたにゃ。やはりとんでもない剣術力にゃ」

「三メートルの長さを誇る刀か。あれであたしのレールガンを全て受け止めているんだからとんでもない技量の持ち主だよね」

「完ちゃんの記憶と実際の界くんの強さとはズレがあるからその点注意してにゃ。妖術強化のために尻尾増加!」


 麗しい女性になった桜ちゃんのこっちくんにゃによって一気に距離を詰めるあたし達。

 斬撃を避けるために、剛田の後ろに隠れていられるようにあたしもでっかい剛田の後ろで膝を折っている。

 剛田の戦闘機動はかなり効いていて、斬撃が当たることはほぼない。当たってもこっちくんにゃによって防げている。


 さあて、接近してきたぞ。お楽しみ地獄の戦闘はこれからだ。

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