第27話
砂漠を走るよぶんぶーん。
「国まで行ったら戻れないね」
「そうだにゃあ。さすがにこの砂漠を往復するのは厳しいにゃ。んまぁ、戻れるとは思うけどハレルヤに用がない限りは戻る必要性はなさそうにゃ」
そんな感じで進んでいくと――。
「上空に生物反応ですっ」
「外にでてっと。……デカいね。偵察ドローン発射。航空管制ドローンも出すか」
「私も外に出て妖術で観察するにゃ」
返ってきた結果は。
「偵察ドローンが威圧かなにかで破壊されたと管制の通信できてるね。画像は送られてきてる。こりゃードラゴンか」
「剛田、聞こえるかにゃ。出発にゃ。ドラゴンを追いかけ回して左ストレートをぶちかますにゃ。今のお前にゃら空中戦も対応できるにゃ」
「まだ敵対してきたわけではないし様子見だね。銀さんは潜砂車になってすぐ潜れるようにしておいて」
「了解ですっ」
桜ちゃんから魔導を貰って急速変形する銀さん。
銀さんは己の魔導を使って変形するんだけど、魔導を追加注入して急速変形できるほど桜ちゃんの魔導力はいかほどか。
魔導力や妖術力ではずば抜けてるんだろうなあ桜ちゃんって。
さてそんなことをしている間にドラゴンは急速――垂直かもしれない――降下して突っ込んでくる。
「接敵まで三十秒。一応防御行動としてバリアはっておくか。攻撃するとしても先に撃たせたい」
「わかったっす。姐さんも背中に積みましたしあっしはいつでもいけます。降りてきてくれるなら好都合っす」
ハレルヤの火器管制システムがくっそ高くて買えなかった。
代わりに銀さんにはヌルヌル動く砲塔、剛田には「桜ちゃん搭載スペース」を取り付けてあるのだ。
桜ちゃんも自己ヒールあるし、リジェネート持ちだから自分や剛田も傷を治せる。
そもそも剛田の装甲はナノマシン魔導融合装甲だからめっちゃ強固。銀さんのシールドマシンでぐちゃったらしいが。
「管制ドローンより入電、ドラゴンが火の玉を放った! 後の先をとるよ! 全方位バリアで凌いだ瞬間に一気に行く! 展開!」
管制機から画像データも送られてくる。手が小さくて羽根が大きいいかにもドラゴンて感じの真っ黒なドラゴン。
壊れたナノマシンがこういうのを形作るとは聞いていたけど。まさかおとぎ話のドラゴンが目の前にいるとはねえ。
飛んでいるのはナノマシンパワーによる反重力だろう。かなり大きいからナノマシンも膨大。物理法則ではあり得ないことを余裕でしてくる。魔導を持っているわけでもないくせにね。
「火の玉接触します! みなさんに防壁を展開!」
銀さんがバリアが割れたときのために防壁を展開してくれる。世界一のエーテル力持ちが放つ全方位バリアが破れるとは思えないけど。
――うそ!? この火の玉全方位バリアを侵食してきてる! エーテル全開ピンポイントバリア展開! 全方位バリアは二段目を再構築!――
喋っている暇が無い。瞬時にシステムを呼び出しピンポイントバリアを任せる。
六十兆のバリアを出せそうだ。
ただ全方位バリアの内側で火の玉が爆発したらだいぶダメージを受けるので、ピンポイントバリアの展開は火の玉を囲むようにする。全方位バリアの侵食をふさぐ形だ。
火の玉が炸裂する。とんでもない爆発音とともにピンポイントバリアが全部突破され、全方位バリアが割れた。
エーテル力世界一の称号はこのドラゴンに譲らなければならないね。
けど防御は十分。策を打ったので無傷だ。あたしと剛田が飛び出し、銀さんが潜砂車で体位をずらし仰角を上げ四十ミリ魔導ガトリング砲の狙いを定める。
「総攻撃開始!」
「うおおおお!」
「ガトリング、いきます!」
全身に推進機構を形作り、そこからナノマシンを放出し、反重力も利用し、かっ飛んで行く。ふふふ、泉に浸かったことでことであたしも少しは最新性ナノマシンに追いついたのだよ。
ま、ドラゴン見て応用しただけですが。
発射物撃つと推力が落ちるので、とにかく真っ直ぐ飛ぶあたしと剛田。
五メートルの巨体十トンの重さの塊が空力無視して空を飛ぶって、なんか物理法則を無視している感が凄い。
ただ剛田は重サイボーグなんで物理法則の世界なんだよね……科学技術って凄いね。推力の元はナノマシン溶液だけどさ。
「っしゃあ! まずはドカンと一発ぶん殴ってやらあ!」
あたしより先行してドラゴンに近付く剛田。
しかし何らかのバリアによって勢いをそがれてしまう。
即座に落ちるわけでもない、鈍化の魔導か?
まずい。この状態で炎を吐かれたら剛田に直撃する。
これを見計らってかドラゴンが大きく息を吸い込む。
エーテルシールドがぎり間に合う……か?
とここで銀さんが撃ち続けていたガトリングがバリアを破る。
鈍化が消えて真っ逆さまに落ちていく剛田。
「体勢立て直してもう一度来い! 六十ミリぶっ放そう!」
「すいやせん! わかりやした!」
「バリアの特性がわかったんだ、戦闘後いじけるなよ!」
「ザッス!」
バーニアを吹かして勢いよく落ちていく剛田。それを見てドラゴンは狙いをあたしに切り替える。もう火の玉を発射寸前だ。
「ナノマシン魔導生命体を舐めんじゃないよ!」
防壁ドローンを大量に放出し、バリアを展開させる。爆風を囲むように並べたので直接当たることはない。
威圧でドローンを壊したいところだろうが発射態勢に入っていたドラゴンはそのまま火の玉を発射。
まずは防壁ドローンに当たる。爆破するかと思ったがそのまま貫通してあたしに向かってくる。爆破っていうか直撃させて焼き尽くす感じか。
「なら、こうだね。エーテルシールド」
エーテルシールドを半球状に展開し迎え撃つ。
エーテルシールドとぶつかった瞬間に火の玉がドリル上に変形しシールドを掘り始める。ナノマシン生命体に常識は通用せんなあ……。
「ガリガリ削るけど貫通はしないね、エーテル量もそんなに減らない、十分。守るだけなら完封かあ」
さてどうしよう。守れるが攻め手に欠ける。
剛田はバリアを展開されるとかなり危険だ。
銀さんはうちらの戦闘高度が上がってるからガトリングの強さがちょっときつい。重力に引っ張られるからね。
当たれば魔導ガトリングだから侵食はするんだけど……。
うーん、やるだけやってみるか。
「剛田、の、中にいる桜ちゃん。妖術シールドで火の玉対処してくれる?」
「了解にゃ!」
「銀さんは今のまま邪魔をしておいて。止めは銀さんかもしれない」
「わかりました!」
剛田の到着を待って、二人でドラゴンに突撃をする。
ドラゴンはずーっと火の玉を吐いている。それしか出来ないのかな。壊れたナノマシンの塊だもんね。
「よし、突っ込め剛田。あたしがバリアを破壊するから、破壊した瞬間急上昇急ターンで上を取って。んで殴るか六十ミリ撃つかで意識をそらしておいて」
「了解! いくぜぇぇぇぇぇ!!」
剛田が巨体に見合わない速度と軌道でドラゴンに接近する。
あたしも急いでドラゴンへ急行する。エーテルシールドはそこそこ射程があるから剛田を守れるはずなんだ。
バリアに剛田が飲み込まれる。
エーテルシールドを予定通り張って。妖術シールドも展開したのを見て。
「いくぞぉぉぉ、艦載レールガン!」
実弾系宇宙戦艦のレールガンに全身でなった。なったのだ。ででーん。
これは赤い所長から手に入れた技術。日本銀河帝国が対他銀河帝国の宇宙戦艦相手に、ナノマシン生命体を変形させて撃つように作った実験作。
ナノマシン生命体を道具としか見てない非道の作だが、そんなの使いよう。
システムに反重力で空中浮遊させ、三点連射をする。あまり早く撃つと砲身が熱で燃え上がっちゃう。
三点連射は全てバリアに命中し、バリアが割れる。剛田がバリアの影響から外れ、一瞬下に落ちる。
「うおらっしゃぁ!バチコンぶっ飛ばしてぶちのめしてやらぁ!」
「上をとるのを忘れるにゃよ!」
「わかってらぁ!」
ドラゴンと剛田の空中戦が始まった。こりゃー見物だ。
ドラゴンはブレスを吐いたり爆破する火の玉を撃ち出したりしつつ高速移動をする。
剛田はそれを妖術シールドで凌いで上を取ろう取ろうとする。六十ミリダブルバレル速射砲で火の玉を撃ち落としたりしている。あれそんなに威力あったっけ……あったんだろうな。使ってなかったからなー。
「だらっしゃぁ! 上を貰ったぁ! 六十ミリ乱射しやす!」
「にゃが造弾ボックスにナノマシン溶液補充するから撃ちまくっていいにゃ!」
片腕に合計三基六門付いている六十ミリダブル
「完ちゃんつっこみまーす! うおおおおお!」
私が元の姿になりドラゴンに接近する! そしてあのエーテル技を発動!
「グラビディ二千倍!」
ドラゴンは反重力で浮いているとはいえ、浮ける重さには限界がある。二千倍もかければ真っ逆さまよ。
急降下していくドラゴンに上空から剛田のパンチが冴え渡る。ダブルバレル速射砲は撃ち尽くしたようだ。
あたしもグラビディをいじって落下点を調整していく。
「持ってきたぞぉぉぉ!」
「いきまーす!」
持ってきたのは銀さんの射線上。それも銀さんの近く。
銀さんが四十ミリ魔導ガトリング砲の火を吹く。
なんだかんだいって最強の火力は銀さんのこれだ。
ナノワイヤーで押さえ込みつつグラビディをかけ、銀さんの四十ミリ魔導ガトリング砲を当て続ける。
三十秒もしないうちにドラゴンは液体へと変化していった。
「勝った! それもチーム戦で!」
「いやー久しぶりにまともな戦闘したっす!」
「わわわ、私が一番火力を持っているんです! えっへん!」
「にゃにゃにゃー」
みんなが勝利に浮かれているうちにそっとドラゴンの液体を吸収する。
ぐおあ、百年前の戦争の記憶が入ってる。吐き出そうかな。
でも、正面から見ないと駄目な部分でもある。
その記憶には、暴走するナノマシン生命体をあたしが次々と再起不能にする映像が残っていた。
暴走しているのはナノマシン生命体の方な感じがする、あたしには意思があって、ナノマシン生命体にはない感じがする。
やっぱり、あたしの記憶はおかしい。百年前の悪魔ではないきがする。
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