第23話
赤いやつの製造研究所は本当に砂漠の中に埋まっていてしかも深いところに存在している。みんなで調べたけど空気孔などもなく、一般人は手出しが出来ない。
内部は自動運転なんだろうね。
赤いやつは液体になれるから昇っていけるんだろう。
しかしこちらにはこれがある。
「じゃあよろしく」
「わかりました。砂漠移動機械になります」
「銀さん便利だにゃ。よーし、にゃが魔導の膜を張って、砂をかき回しやすくするにゃ」
「ありがとうございます!」
うにょうにょと変形し、砂の中を移動できる機械になる銀さん。
手のひらに砂をかき分ける砂かきがあって、機械の先端はドリル。スッとスリムで足は人魚みたい。ヒレだし。
砂という液体をかき分けるのに特化してるね。
砂漠には土と岩しかない砂漠もあるんだけど、その時はその時で最適化するんだろうね。
製造研究所に攻撃能力もありそうだからと、全員臨戦態勢で銀さんに作って貰った運転席で状況を見守る。
もちろん無事に攻撃され、桜ちゃんの妖術シールドで弾いたり私のエーテルシールドで耐えたりした。
「あっしってここにいる意味あるんですかい? 六十ミリダブルバレルは砂漠推進弾を発射してもたいした威力じゃないし、あっしを出撃させたら砂に埋もれやす」
「いやー、ここに入り込んでくる赤いやつがいるかもわからんでしょ。そのための待機」
「なるほど、わかりやした!」
まあ襲ってくることはなかったんだけど。
襲ってくるより籠もってくる作戦みたいで。
「うーん、どうやっても貫通しないし削れないねえ」
「絶対拒絶結界を張っていると思うんだにゃ」
「ちゃんと展開されるとどうにもならんね。融合して杭打ちでもしようか」
「本物の攻城戦じみてきましたね」
張り付き型杭打ち機になって結界に張り付く。接触した物を溶かすように破壊する、絶対破壊結界だったらこんなことできないので、まあラッキーといえばラッキーか。
がっしゃんがっしゃん杭打ちが始まる。だれも砂の中でこんなことが行われているとは思わないだろう。しかし真実はいつも一つなんだなあ。
製造研究所もなにもしないではなく、赤いやつを放出してくる。
そいつらはあたしが液体となって砂を泳ぎ、ナノワイヤーで処分する。細かく切れば再生できなくなって終わりだからね。
製造限界であたしのように完全な液体にはなれていないようだ。俺様って言う前に破壊してるもんね、えっへん。
赤いやつを処分しつつ三日くらい杭を打ち続けたら、さすがに結界を張るパワーが無くなってきたのか、結界が薄くなってきたみたい。銀さんがそう報告してきた。
んじゃあ、止めはあたしがやりますか。砂をかき分けて固定してっと。
「ナノマシン・スーパー・左ストレート・ストライク!!」
莫大で強烈なナノマシンの物理エネルギー、というか左ストレートの一撃。
絶対拒絶結界にぶつかる! 絶対拒絶結界はぶん殴られてパチンと崩壊した! そうだよ、パチンとだよ。
「おー、センサーが破壊を感知したっす」
「あたしの左ストレートは全てを壊すキリッ」
「殴っただけでバリアを崩壊させるなんて」
「んじゃ銀さんドリルで壁を削ってにゃ。普通の壁だろうから削れるはずにゃ」
「はーい。ゴリゴリゴリ」
空いた。んじゃ、いってきまーす。
「製造研究所に侵入するっすよ。もうバレてるだろうから内部ではセキュリティと赤いやつが待ち構えてると思うっす」
「うちらの敵じゃないけどね」
内部ではまだ赤いやつの製造が行われていた。そんなに数があるわけでは無いけどね。製造施設をアタックドローンで破壊していく。
ドローンも十分使えるレベルに育ったねえ。嬉しい。
いろんな姿のセキュリティが出てきたけどみんな剛田が処理していた。剛田つええ。
剛田がジャンピングぶん殴りで潰したけど、蜘蛛のようなごっついセキュリティが出てきたときはちょっと怖かった。もちろん勝てないわけじゃなくてその容姿に。
とにかく剛田が強いんで、あたしは造弾ボックスとかナノマシン溶液の補充とかに徹することにした。あと、ちょい融合。ちょいでもパワー爆上がりみたい。
「早期警戒ドローン展開完了。センサーを補完するね」
「あざっす!早期警戒してくれるとこの研究所における構造がわかったり、危険度に応じて敵を処分できるから楽になるっす!」
そんな感じでボッコボコにしながら最深部へ向かう。
どんどんでてくる赤いやつ。
でも製造限界に来ているから、限界以上に強くなったあたし達を迎え撃つことが出来ないんだよね。
一度に結構な数が来ているんだけどどれもあたしに傷ひとつ与えることが出来ない。
「さすがに製造限界の赤いやつを吸収してもあんまり成長しないね。データだけ盗んでボッコボコに破壊しちゃおうか」
「うっす。データセンターはどこっすかね」
赤いやつも出てこなくなったのでブラブラと散歩……じゃなくて探索する我々。
防衛も考えられているのか通路が入り組んでいるんだよね。
司令部じゃないけどデータセンターに当たったから首尾よくデータを吸い取る。解析は桜ちゃんがしてくれることでしょう。
ふらふらと歩きながら中央の司令部へ到着。
「ここを破壊すれば赤いやつが生まれることはなくなるのかな」
「そうね、ここを破壊させるわけにはいかないの。あなたを止めるためにね。悪魔の申し子、
綺麗な声でそう答える赤い女性。頭の先から指の先まで完全に私で、我々の後ろから出てきた。背後をとられていた……?
「悪魔の……希? ううん、あたしは完成の完よ。止めるにしても、もう製造限界が来ているのでは? あなたは所長さん、かな。声まで同じ個体とはなかなかやるね。俺様とかはいわないの?」
「製造限界は二号機の
「んー?それでも目が覚めてからすぐのやつが俺様っていっていたような」
「わからない? あなたが起きる前にあなたと界の融合実験は始まっていたのよ。間に合わなかったけどね」
実験か。毎回ほとんど同じ性能で襲ってきていたのはその時点の戦闘データがそこまで経ったからかな。それとも戦闘データが無いと成長できなかったか。
しかし、既に始めていたってどういうことだろう。あたしが起きる前提で動いてるよね。
あたしは侵入者を排除する目的で作られたんだけどな。
「まぁいいか。あたしを狙わないなら見逃してあげるけど、どうする? もちろん製造設備は破壊するけども」
「愚問ね。あなたは私とともにこの地下深くで眠るのよ。私だって時間なら稼げる」
そして鳴り響くサイレン。爆破……?
自分で時間を稼ぎ、爆破であたしを粉々にし、施設ごと生き埋めにして封印するつもりかな?
「やるならやるっすよ! あっしの出番が来たっす!」
剛田が意気込む。
視線を所長から変えずに剛田に話しかける。
「ごめん剛田、逃げ道の確保を頼む。銀さんまでの道を保持しておいて」
「いいんですかい? あっしだって戦力になるっすよ」
「あたしのセンサーが妨害されてるのよ。多分この人はあたしかそれ以上に戦闘能力が高い。つまり速い。剛田じゃ分が悪いかな。ナノワイヤーも持ってるだろうし」
「……わかりやした、後方支援にまわりやす」
「あらゆるセキュリティが襲ってくるだろうから、それを無効化してあたしを待っていてね。絶対銀さんのところへ戻ってくるから」
赤い所長は無言で二本の刀を取り出して構える。
「自分は界くんのデータをも所持しているってわけか。届いたのは先行データだけじゃなかったのかな?」
さて、やりますか。
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