第22話

 ホテルはとったので――おんぼろのホテルだけどね。それでも高い――、みんなそれぞれ適した場所で働くことに。

 稼がないとフィニッシャーに合うのも厳しい。会うだけで五十万ゼニもするんだよー!?

 情報もらったり動いてもらうのにはどれだけお金がかかることやら。

 んで、今回もやっぱり頼りになるのは銀さんと剛田。


 出力が向上してどんな壁だって破壊できるしどんな重たい物でも持ち上げることが出来る。

 その四十ミリ魔導ガトリング砲をドリルに変えて、掘削機としても役にたてることが出来る。

 あらゆる作業機械になれる銀さん。


 そして。


 五メートルの圧迫感。機械の記憶力による人物監視。高性能スキャンによる偽装看破。

 左手には人を殺せるナックルガードとマニピュレータ、右手には逃げても誘導弾で追いかけてくる六十ミリダブルバレル速射砲が三機六砲門。――制圧射撃の炸裂弾も撃てるよ!――

 ボディガードや企業の受付、取締役員室に置いておくだけで超効果的な重サイボーグ剛田堅士


 やっぱこいつらが即席の戦力になりますわね。あたしはナノマシン魔導生命体は隠さないといけないし、桜ちゃんは占いくらいしか出来ないし。

 ただのナノマシン生命体じゃ雑魚っすからね。

 なにもしないのも悪いし、あたしは銀さんのオペレーター、桜ちゃんは剛田の付き添いとしてくっついて出歩くことに。


「銀さんよーそこ切削してくれー。その後はブルで均してくれや」


 現場監督の声が飛ぶ。


「わかりました。ブルドーザーは大きいので大雑把にまとめたあと小さいのでしっかり均す方向で良いですよね」

「ああ、頼むわー」


 銀さんが作った運転室の中で寝そべりつつ鼻くそほじりながらせんべいを食べるあたし。っかーお茶が美味い。


「オペレーターって言いますけど、何のために来たんですか」

「オペレーター」

「せんべい食いながらお鼻をほじってお茶を飲みながら寝そべるのがオペレーターなんですか」

「そう」

「そう、なんですか。とほほ」


 なんか今やっている工事は区画拡張みたいで、最高級区画を追加するらしい。

 このシティは閉鎖型都市なんだけど、ゆっくりと拡張しているそうで。


「なんで拡張できるんだろうねえ銀さんや」

「話聞いてなかったんですか? ナノマシンの泉があるから周辺に緑が豊富にあるじゃないですか」

「うん。泉は凄いね、塔とは違って周辺に及ぼす効果が違う。あとで潜ってこよっと」

「問題起こさないでくださいよ。それで、緑の拡大とともに区画もシティも、大きくなっているんですよ」

「ほー。でも砂漠化してからこれだけしか緑化されてないの?」

「ここは二十年くらい前に緑化開始だそうですよ。日本銀河帝国がナノマシン泉の基礎を突き刺して行った模様です」


 ほー、じゃあ砂漠しかないこの星の復興を日本銀河帝国はしてるんだね。あたしが現役の時代は緑で覆われていたもん。

 どうやら酷い戦争で砂漠の星になったって言うじゃないか。どんな戦争だったんだろうね。あとで銀さんに聞いてみるか。


「二十年で復興出来るんだから良い感じなのかねえ」

「そうなんじゃないのですかね。百年前の荒廃時よりかはかなり良くなりましたよ」


 話聞けるかな。


「百年前の戦争ってどんなのだったの?」

「――まずはそこのガレキを運搬しましょう」

「ふぁーい」


 銀さんはいつもお仕事熱心だなあなんて思いつつ、お茶をすする。

 すると、ずむずむと足から溶けて銀さんと融合が始まる。ちょっとーなにするきよエッチ。


「融合してなにをしろって言うんだい?」

「融合したらパワーアップするじゃないですか。効率良く仕事が出来ます。さっさと仕事を終わらせましょう」

「いやー仕事片付けたら次の仕事が舞い降りると思うんだけどなあ。というか銀さんに融合許可出してたっけ」


 融合許可ってのは他人がわたしと融合する許可ね。出しておくと勝手に融合することが出来る。


「あれー、してませんでしたっけ? 三百年前にもらってるはずですけど。完さんそこら辺の記憶が曖昧だから忘れているだけでは??」

「うーんそだっけ。まあいいや、融合しちゃうか。あそーれあそーれ」


 融合してパワーアップした銀さんがもりもりと仕事をする。上半身だけ実体化し、お茶をすすりせんべいをかじるあたし。

 赤いやつの液体を吸いまくって個体としての能力及び自己ヒールがだいぶあがってるはずだから、なんにでも融合できそうな気がする。

 自己ヒールは個人認識度でもあるから、あがっていると自分を保ちながら様々な形をとることが出来るのだ。


「銀さん脳味噌の権限もらっていい?」

「なななな、何するんですか!? 暴走ですか!?」

「いや、データ貰おうかなーって。だいぶ自己認識も自己ヒールもあがってるから、あたしも変身して機械になれば効率が――」

「――駄目です! 絶対駄目です! エッチ変態痴漢!」

「そ、そっか。じゃあやめとくよ。あたしは銀さんのパワー供給係ね」


 なんか強く否定されちゃった。このレベルの場合無理やりはいかんからな、航空機になるときとはレベルが違う。

 あのときは航空機になった銀さんに乗り込んで、行動系の権限を奪っただけだったもんね。


 この後クレーン車になったりパワーショベルになったりと大踏ん張りで活動した銀さん。さすがだなあ。

 あたしは、ずっと運転席でお茶をすすっていた。うめー。

 自分のナノマシン溶液をお茶にして飲んでいるだけなんですが。


 こうして頑張ってホテルに帰ってきたあたしと銀さん。先に桜ちゃんと剛田が帰ってきていた。

 なんでも桜ちゃんたちはぼけーっと突っ立っていたら終わったらしい。


「グギギギ、あたしたちは労働したのに!」

「しょうがないにゃ。今日は剛田がテロリストを一人殺してるのにゃ。えげつない方法で」

「いや、あっしはただ企業の護衛をしたまでで。左手のマニピュレータで首を掴んで持ち上げ、爆破物を見つけたとともにですね」

「残りは言わんでええ言わんでええ。テロリストってここより下層の人間でしょ?どうやって入ったんだろ」


 桜ちゃんの話しでは、偽造IDと通行権利を手に入れて侵入したのではないかということ。警察がそんなことを思っていたらしい。心を覗くのは桜ちゃんの得意技である。こゃこゃ。

 そのテロリストは首が長ーくなっていたと聞いて怖っわって思った。残りは言わんで良いのに。


 そんなことをしつつ二ヶ月が経過。お給料がもの凄いのでサクッとお金持ちに。フィニッシャーに情報を買いにいくぞー。


 出会うのはとあるバーのVIPルーム。剛田をバーの外に立たせて、桜ちゃんとともに部屋で待機。

 しばらくするとフィニッシャーが入ってきた。


「すまねえな、待たせてしまったようだ」

「いや、こっちが早く来ただけ。それで権造ごんぞう、買った良い情報はどういうブツなの?」

「ああ。お前が言う赤いやつの研究製造施設をバラしたやつがいる。本当かどうかは知らねえが」

「なるほど、良い情報ね。高かっただけあるわ。座標は?」

「今転送する。そっちの嬢ちゃんに渡せば良いんだよな」


 桜ちゃんは共有機能が強いからね。桜ちゃんに渡せば一機に仲間の間へと情報が伝わる。


「オレンジジュース飲んでたのににゃぁ。みんなに転送するにゃ。ほいっ」


 研究製造施設の座標が送られてくる。

 なるほど、この近くにある砂漠の中に作られているのか。

 権造に礼を言い、バーを後にする。お金は既に支払ってあるからね。


 さて、赤いやつ撲滅作戦といきますか。

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