第20話

 振り込みを確認してからウェイサムシティへ帰還。

 途中ナノマシンの塔によってリフレッシュもしてきた。

 だいぶ機能は直ったかな。

 体重も百五十キログラムと良い感じに増量。

 あたしはどれだけ増えても体型は維持できるのだ。全宇宙の女性の皆さん、済まないな。ハッハッハ。


 帰りは銀さんに運転させたんだけど。


「わああぁぁぁぁぁ」墜落。

「あぁぁぁぁぁ」暴走。

「ひえぇぇぇぇ」ぐるぐる回る。


 全然駄目。やはり陸のものが空を飛ぶのは無理があるね。しょうがない。

 私が融合して空を飛んできた。


 そんなこんなでホムンクルスのオッサンの元へ。


「やっほーオッサン、お金持ってきた――倒れてる!?」


 地面に突っ伏しているオッサン。急いでオッサンの元へ駆けていく。


「大丈夫かにゃ」

「――死んでる。ホムンクルスの培養液が全くない」


 ま、いいか。


 オッサンには地下工房の場所を教えてもらったし、それ以降特に必要な場面もない。

 ありがとうオッサン。髪の毛はふさふさなオッサン。三十センチメートルのオッサンはちょっとキツかったぞオッサン。


 地下へ行くエレベーターのスイッチも発見しますますオッサンの意味が無くなる。

 地下へ行くと、ハレルヤさんが待っていた。


「おまちしてまーした。早速改造していきましょ-う」


 銀さんのパワーとタイヤを吟味する。


「低出力、中出力、高出力、各々に三連ターボを付けましょー。それでパワーはかなり上昇します。小型の因果律崩壊エンジンを付けて補助出力も付けましょー、ターボラグを解消させます。四十億とそこまではしませーん」

「七十四億稼いできたから全然大丈夫。タイヤのことを考えましょう」


 そもそも銀さんは大きいので、タイヤは十輪になったよ。速度も申し分なし。エンジン改良が相当なパワーアップに繋がったみたい。


「タイヤは二十億でここまで六十億。十四億で剛田を改造しましょう」

「え、あっしっすか? 五十ミリ魔導ガトリング砲にするものとばっかり」

「あっしっすよ。五十ミリも良いけど、ここで戦争五十年前の装備になって強くなろうよ。姐さんの護衛と白兵戦はあっしの専業分野でしょ。ほら、まずはエンジンのパワーアップしよう!」


 あっしのパワーアップ計画を始動。重サイボーグ程度なのでそんなに値段は高くならない。

 普通に多元宇宙エネルギー吸収エンジンを搭載。十億。

 装甲と内部機関をナノマシン魔導融合装甲に換装。防御は固くしないとね。

 武装は右腕に六十ミリダブルバレル速射砲を三ヶ所のハードポイントに。三基六門のバレル砲門がついたので近距離砲撃戦もいけるかな。

 合計六ヶ所で速射できるので、相当な弾薬数が内部に必要だけど、亜空間に搭載しているのでかなりの弾薬を搭載してる。

 近距離ならあたしの主砲並だと思う。

 六十ミリと本当に大きいのでいろんな弾種が使える。使うかどうかは微妙だけど。

 右肩に短口径百ミリレールガンを搭載。

 主砲。

 内部搭載数は少なくて二発くらい。弾薬は異次元空間に搭載してある。

 亜空間じゃなくて異次元空間なのは、デカいからね。空間もデカいのが必要。

 これも近距離だね、短口径なので。


「これなら狙撃も出来るっす!」


 と言っていたが、どれくらいのレベルでの狙撃が出来るかは不明。狙撃の試射してないからね。

 本体のパワーで押し出すので相当な速さで出てくる。マッハ二十とか三十とかいくのではないだろうか。

 とにかく主砲だ、わかったな。


 左手はトゲトゲのついたナックルガード。手の第三関節くらいの所に分厚いガードが付く。マニピュレーター手の関節の保護だね。肘までガードが付いているので簡易防御も出来る。

 ただ、この肘までガードは予備。パワーあがったからナックルガードの装甲が耐えられないと思う。割れたらカッターのようにどんどん先へと押し出される機構。


 ここまでの作り方――弾やガード部分とかね――は造弾ボックスがあるし、私が覚えているから大丈夫。実質無限。


 装備で二億。


 全体が固くなったのでパワー任せで全長を大きく。今三メートルですが五メートルに巨大化しました。

 パワーに負けない足、新設のブースト機構。内部装填数の増加。

 大きくなった身体に、大きくなった造弾ボックス。

 多少の負傷には負けないナノマシン溶液ボックスも追加。

 背中には私がナノマシンを注入する手のひらの型も追加してこれで改造は完成。二億。


「お金ほぼ使い切ったけど改造もほぼ完了だ!」

「エンジン換装だけでもとんでもねえのに武装まで頂いちまってやべえっす! 白兵戦ならマジで無敵っすよ!」

「私も移動できる居住空間としての役目を果たせそうです」


 実に有意義な改造に満足なあたし。


「満足満足。これなら負ける相手はいないっしょ」


 最上級層のバイトをしつつウェイサム一体の施設を探り、研究所はないと結論づけて――赤いやつの襲撃もなかったしね――このシティを離れることに。


「シティ自体に魅力はなかったけど、大改造できたのが良かったね」

「シティ自体に魅力はなかったけど、オッサンの中にナノマシン溶液入れたら元気になったにゃ。ハゲたけど」

「ハゲに興味はない。そいじゃあ、次のシティに進みますか。大富豪シティ『ゲイスサム』よ」

「ゲイたちのサムかにゃ?」

「gay’s sumじゃありません。違います。そこで区切らないでください」


 そんな危ない突っ込みあいをしつつ搭乗口へと進む。そう、ここは各シティを結ぶハブ空港として栄えているのだ。メイスだのなんだのは下々の間で繰り広げられるもの。

 上流階級は航空機関連で仕事をして生きている。


 基本、航空機には永久動作エンジンを積んである。

 ターボは大体六連で、主力エンジン以外にも、主力エンジンからエネルギー供給されたターボファンエンジンとかも付いているそうな。

 無限の燃料にむちゃくちゃなパワーでかなりの積載量を誇るとか。一千トングラム二千トングラムは余裕で積むらしい。

 この世界の足だね。地上で時速三百キロメートル走るよりバカツヨ航空機でマッハいかない程度に飛ぶ方がはるかに速い。この星のマッハは秒速五百九十二メートルなので時速換算二千百三十四キロメートル。時速二千キロメートルは出せる。


「ふ、ふふ。私の改造はお金の無駄……、ふ、ふふ」

「そんなことないよー。航空機モードになればパワーあがった分マッハ三とかで飛べるよ。私が融合すればマッハ五は固いね」

「そそそそ、そんな速さで飛べるわけないじゃないですか! 私は陸上生物ですっ」


 まあいいからいいから、ということでナノワイヤーで巻かれて滑走路に引きずり出される銀さん。

 渋々と航空機形態へと変形する。


「なんか変わったことはない?」

「バランサーが改善したような……」

「とんでみなー」


 ゆっくりと浮き上がる銀さん。そしてふわふわと宙に浮いて移動する銀さん。


「なんですかこれ!? 宙に浮けますよ!」

「ハレルヤにナツメウナギの宝石一つ渡してさー、バランサーのデータ買ったんだよ。まだふわふわ受けるだけだから、私と融合してデータ集めよ? じゃあみんな時間だ乗れ-! 滑走路使える時間は決まってるんだ!」


「ウィッス!」

「はいにゃ!」


 みんなで異次元空間に移動し、私は融合して、マッハの影響を考えて上空十万メートルまであがって移動を開始。


「へー、ドローンみたいな航空機だけど、四ヶ所の足を可変式にして、ウイングも付けたんにゃね」

『ナツメ結晶売って改造してもらった。銀さんの知らないうちに』

『私って常に起きてるんですが……』

『ナノマシン溶液から、わからないうちに気絶してわからないうちに目が覚める麻酔作ったから、気がつかないと思う』

「完ちゃんって時に怖い存在にゃね」


 それじゃ、かっとぶぜーい。さすがに一気にマッハ五まで加速すると銀さんの身体に負荷がかかるので、ゆっくりと加速。

 マッハ二位になったあたりでエーテルシールドを展開。地上十万メートルといってもまだ空気層が厚いのがこの星。シールドしないと銀さんが熱を持っちゃう。

 マッハ四で全方位シールドを展開。空気との摩擦を分断する。ここで音速を超えたときに出来る衝撃波ソニックブームも消える。摩擦が消えるからね。

 そしてマッハ五――


「エンジンが持ちません! 桜さんたすけて!」

「まだまだいけるぜひゃっほう!」

「融合してるからどこにハンマー落とせば良いのかわからんにゃ」

「あっしが――」

「デカすぎるにゃ! お前は出るにゃ! 全方位シールドから身体が出たら弾け飛ぶにゃ! マッハ五をにゃめるにゃ!」


 結局この星を一周して超裕福都市『ゲイスサム』へと舞い降りたのであった。たーのしかったー。

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