第16話
ウェイサムには給油所を二つ通過する必要があるんだけど、その一つ目に到着。
人がおらん。
給油所だし、ウェイサムに行く一般人なんていないってことか。
美味しいもの栽培していると聞いたんだけどな。それくらいじゃぁ無理か。
最初のシティくらい飲食店で繁盛してないとな。あそこの都市名何だったんだろうなぁ……。
またいくからその時聞いてみようっと。
中間都市ロッサムみたいなシティではなく、ナノマシンがたれ流れていて燃料として使える、というだけの場所だね。
あ、ロッサムへ向かった場合の、終着点の都市名も聞いてないや。
あの頃はそんなに興味なかったからなあ。
最初の町に誰かが運び込まれてるって思ってたし。
「さあ、ナノマシンが流れ出る塔があるからそこへ行こうか」
「にゃのお氷狐で討伐したのに、あの笑いは何なのにゃ……ブツブツ」
「ナノマシン濃度が高いから分離しとくといいよ」
ぼふんと分離してこんこんさまを抱きかかえながら進むにゃさん。
見えてきたのは十メートルはあろうかという真っ白な液体が流れ出る塔。
塔の周辺だけは緑豊な環境となっている。
「へー、これがナノマシン噴出器なのか」
「あれ、世界見学で見たことないっけ?」
「あんな課外教育まともに見る人なんていないよ」
「あたしは結構真面目に見たけどな。使い方分かる?」
分かるわけなーい!といってこんこんさまを後ろに放り投げるにゃさん。これストレスたまってるね。
「そうそう、妖術のこんこんさまがもろに被ると死ぬ恐れがあるから後ろに置いておくのは重要」
「さすが桜さまなのだ」
「塔の奥に燃料噴射器があるからそれを引っ張って……銀さんに装着する! 剛田は燃料ボックスってあったっけ?」
「ブースト用燃料ボックスならありやすね。あとは造弾ボックス」
じゃあぶっ刺そうということになり、ぶっ刺した。白兵戦になったときにもの凄く活躍するだろうね。
「私はぶっ刺すところがない代わりに全身で吸収できるから、奥の水たまりになっているところで浮かんでいるわね。裸だけど見に来てもいいわよ。そういう回路がないから」
「私は
ダバダバと流れるナノマシン溶液。真っ白なその液体の奥へ進み、上空からは流れてこない代わりに水たまりになっているところへと進む。
じゃあ、少し休ませてもらいますか。
二時間くらい眠っていたかな。周辺のナノ溜まりを見ると、真っ黒に汚れていた。
「うへぇ、こんなに汚れていたか。戦闘続きだったもんなあ」
千切れたりもげたりすると瞬時に回復させるし、レールガンを撃ったりとナノマシンを使うたびに、体内ナノマシンが汚れるのだ。
あんまり汚れちゃうと動きが悪くなっちゃう。
自然に回復するんだけど、ナノマシン溜まりに浸かるとすぐに回復するのだ。
洋服があるところに行って着替えて、みんなの所へと向かう。
「いやーいろんな箇所がよくなったよ。桜ちゃんは……」
「あそーれ、にゃのマシン。あそーれ、にゃのマシン。あそーれ、にゃのマシン」
扇子を開いて両手を斜め上にして広げ、背中を反らして、あそーれの音頭で片足ずつぐるぐる回るステップをしている。
じーっと見つめるあたし。全然気づいてない桜さん。
「ふーむ、確かにこんこんさまがお氷狐で出した巨大氷とそっくりだ。しっぽとみみがないから迫力はないけど」
「あそ……」
あたしを見て固まる桜さん。
「もっとやってどうぞ」
「いやこれはね、ナノマシンが綺麗になったから妖力も向上してね。その音頭なんだよ」
桜ちゃんがにゃーにゃーいうのはこんこんさまとくっついているときだけである。いまは一般的な幼女のサイズ感でしかない。
「やっぱ扇子持ってたんだねえ」
「に、二れん狐が出せるようになったんだよ! すごいでしょ!」
「こんこんさまは?」
「お昼ねしてるよ。完ちゃんはなにか手に入れた?」
うーん。変身……改とでもいえば良いだろうか。
「体中をいろんな形に変えられるようになったかな。手から持てるタイプのブレード出したり、腕が盛り上がって発射する大きなグレネードランチャーにしたりとか」
「すごいすごい! もう敵無しじゃん!」
「あとは丸い球を飲めばさすがに赤いクローンも追いつかないかもね。剛田、銀さん、全身をナノマシンに浸してないよね、浸したらどうかな。完璧にリフレッシュするよ」
剛田と銀さんにも浸すのをお勧めする。ナノマシン溶液は万能だからね。
「あっしと銀さんはウェイサムで換装するんで大丈夫だと思っていたんですが」
「ナノマシン溶液に浸すとネジ一つまで若返るよ。ターボだって劣化が戻る」
「わかりました、浸かりましょう」
「剛田はナツメウナギが再度出たら切り札の桜ちゃんを運ぶ係だから、めっちゃ重要なんで、こっちからやってとお願いする感じだね。あと、無限エネルギーのコアをお氷狐で冷やしてるじゃん、エンジンに相当な負荷がかかってるはずだよ」
と説得して、ナノマシン溶液の滝に浸かる剛田。
「あーぎぐー。これすごいっすね。隙間から浸透して全身を回っていく。ナノマシン溶液ってぇのはどんな隙間からでも浸透するんすねえ。あーエンジンぎぐー」
「あっはっは、おっさんだなあ、剛田おじさん」
「いやだって効くんですもん。あーぎぐー」
そのころ銀さんは。巨大プールがあったのでそこに浸っていた。
「銀さんは腐ってもナノマシン魔導機械。ナノマシン魔導存在には変わりないから奥に入っても大丈夫でしょう。ゆっくり浸かってね」
「ありがとうございます。大分変形で消耗していたので凄く良いです。エンジンもリフレッシュされてます」
二時間ほどで引き上げてくる一機と一台。動きが速くなったな。
「いやーリフレッシュしましたっす! 二百年分の放置していた汚れとお氷狐で負荷がかかっていた、エンジンが綺麗さっぱりしたっす! それとパーツの擦れが解消したっすね!」
いやーかなりリフレッシュしたようで何より。銀さんはどうでしょう。
「パーツ一つ一つ、そしてエンジンがリフレッシュしましたね。変形も速くなると思います。きっと走る関係全てが向上したのではないでしょうか」
速度アップは素晴らしいね!
それじゃ、飲んでみますか。丸い球。
銀さんのキャンピングカーの中で。
「まずは桜ちゃんからどうぞ。ちゃんとこんこんさまとの合体は解いてあるね」
「うん。頂きます。ごく。げほげほっげほ。濃度が強すぎるよこれ。私程度のナノマシンじゃ強くて飲めない」
「そんなに? 飲んでみるね。……甘いだけだなあ。しょうがない、私が飲むか。まずがこの球をバリボリベリバリ」
二つ目、桜ちゃんの分も飲む。球もむさぼる。ギャギャギャバリバリバリ。
「生体モニターに監視させてみるか」
「どれくらい伸びるんだろうねえ」
結果。
・ナノマシンパワーの増加。
・エーテル力増強。
・自己ヒール回復。百二十ポイント。
・エーテルシールド獲得
・全方位バリア獲得
「攻撃系エーテル魔法が出ない……」
「で、でも。自己ヒール百二十ポイントも回復してるよ! 合計二百ポイントじゃない!?」
「そうだね、これは大分良い傾向だよ。あっちは飲めば強くなれることを知らないみたいだしね。だんだん追い越してきてるよ」
今日はこのままキャンピングカーで就寝。ここは人もいないしぐっすり眠ろう。
ぐうぐう。
翌朝、寝言が「にゃーにゃー、にゃにゃ!」と、猫になっていた桜さんを起こして合体させる。
「うにゅー、まだねむいにゃ」
「はいはい、お顔洗いましょうね」
「うにゃー! 手から水が出てるにゃ!」
そうなのである。汚れを取った際に手に入れた身体の大規模変身は、自身をナノマシン溶液にしたり、それを瞬時に変身させてお水を出したりするなどが出来るようになったのである!
「ちなみに手からシャワー出すことも出来るよ」
「シャワーは濡れちゃうからお水だけでいいにゃ」
ごしごし、と洗う桜ちゃん――分離しているときは桜さん、合体しているときは桜ちゃん、と言い分けていたりする――。
保湿効果もある洗剤もあるよー、とささやいたら目が輝いていた。
銀さんじゃないが見たことあるものならほとんどに変身できる。
朝の準備も終わったし、それじゃ次の給油所にしゅっぱーつ!
二つ目の給油所は寂れていたというか、ナノマシン塔が折れていたので素通りすることとなった。
日本銀河帝国本国圏域が建てた塔だ。
なんで溢れるくらいナノマシンが湧き出しているのか、理屈もわからないんだよ……。
リフレッシュで出力一割増しになった三トントラックでひた走る。
1日二千キロメートルで三日間走ったかな。
ウェイサムが見えてきた。
この距離じゃもう最初のシティに戻れそうにないなー。
香辛料売っておけば良かった。
どんなシティなんですかね、ウェイサムは。
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