第12話
一週間――十日間――ほどたったのち、
吉田と連絡が出来るように、貯めたお金でPDAネットワークとPDA通信を回復させていたのだよ。
そんなにお金はかからなかったかな。
下、中、上、と三段階あったので下から順番に取り込ませてもらった。
その方が高性能になるからね。あたしの機能は性能が置き換わるのではなくどんどん積み上がるからね。
昔には及ばないけど、まぁまぁ高性能になったかな。
防諜性能はそこそこあるよん。
さてそんな性能で吉田輝一と通話をする。
「へい、覚悟は決まった?」
「陽気だな。三百粒くらいあるか? まああるよな。一千万でどうだ」
計量したところ、大体五十グラムで五百粒くらい。
脳内データの日本銀河帝国大辞典で調べたところ五十グラムで七百五十粒くらい。一粒〇.〇六六六グラムだ。
今持っているのはそれよりもはるかに大きい。品種改良で大きくしたんだろう。一粒一グラムだ。一粒五十万ゼニくらいでもおかしくない。
「あたし一粒十万からって言ったわよね。だいぶ舐めた価格じゃないの」
「初回お試し価格だ」
「はぁ……他の企業に売っても良いし、なによりあなたの社長のボディガードはうちの重サイボーグよ。舐めてんじゃねえ!」
通話を切る。
そしてさっさと飲食店第二位のお肉専門店「田中の鶏は美味い」との交渉をする。普通に売り込みに行ったんだけどね。
カリッと大将が黒こしょうを食べた瞬間「買おう。本当に地球産かどうかは分からない。が、この香りと刺激、最適な星で最適な環境で作られてるのが分かる。実も
後日、地球産の生香辛料が食べられるということでかなり繁盛したみたいだ。
ここでナツメグとニンニクを売り込む。
ナツメグは一回に入れる量がごく少量のため百グラム程度、ニンニクは五キロ、デカい網一つくらいだね
完ちゃん付属の超凄い大辞典によると、ニンニクは一度に結構使うそうだからね。
かさばるし重いし、さっさと売っても問題ないと判断した。
六千万手に入った。合計八千五百万だ。
あたしに取っちゃ大金だが、企業ならこれくらい余裕で支払えるのだろうね。
入金は後日だったけど、本当正式に、真っ当に、入金がされた。こっちに移ろうかな。
さて、なにもお金持ちになるために稼いだわけじゃない。
目的があって稼いだのだ。
なにかというと……。
「あたしの破損した機能の再構成と、銀さん、サイボーグ君の強化よ。まずはあたしの補修だけど、次はサイボーグ君のエンジン交換と身体構成合金のバージョンアップね。銀さんはなにかある? ほとんど完成している機体だけど」
「そうですね、歩兵戦闘車のままタイヤ形態になれると嬉しいですね。それと兵員乗員席の大幅空間拡張。あと、エンジンのパワーアップはどんな機械でもやりたいです」
「タイヤかー。十二輪くらいでっかいのが買えると思うよ。動く要塞に見えるね。銀さんの兵員乗員席は元々大きいからサイボーグ君も乗れるし大きくする必要もなさそうだけどどうして?」
「はい、試算したのですが、タイヤであれば時速百五十キロメートルは出せます。巡航で百キロメートル。アスファルトも痛めませんし、迅速な展開が出来ます。十輪十二輪なら四十ミリ魔導ガトリング砲も連射速度を抑えれば撃てますし、悪くない機体になれるかと」
なるほどー、つづけてー。
「兵員乗員席を広くしてしまえば、キャンピングカーになる必要も無いと思うのです。バストイレキッチンなどはナノマシン製品を備え付けましょう。一緒に大きくなったり小さくなったり出来ます。中味は亜空間倉庫機能を内蔵していないと潰れますが。エンジンはそのまんまの意味です」
「なるほどね。ここじゃ軍用の改造は出来ないんだよね。ウェイサム……だったような。そこに行けば軍用タイヤとかエンジンとかがあるわ。ウェイサムに向かえばエンジン以外は出来るんじゃない? 銀さんのエンジンは、因果律崩壊エンジン特注サイズだから次のエンジンが数十億数百億すると思うんだよね。まあ、ターボは数百万で買えるって話しだったから買えるだろうし、考えようか」
と、いうわけで破損した機能の再構成から。
センサー、パワー、武具の強化、変身変形、自己ヒールのまだ行っていない施術、ナノマシン液体噴出量、空中ナノマシン吸収量、ナノマシン吸収モードなどなど。もちろん自動ドローン生成とドローン搭載数増加も回復させた。思いつく限りの機能を回復させたからね。
エーテル強化とナノマシンパワー強化は微々たる物過ぎるのでやめておいた。それでいて「下」で五百万ゼニするもんよ。
高い物は既に装着されているか、意味が無いので省いたんで、そんなにしなかったかな。二千万ゼニくらいで終わった。想定した価格ではなかったとはいえ、それでも高いねえ。
「うにょうにょ、スライム状になって桜ちゃんを襲うのだ!」
「狐火! 変態エッチ痴漢!」
「あー溶けるーあー」
「燃え尽きろにゃ」
「じゃじゃーん、小さくなったけど完ちゃんの再生でーす。ここから変身すると……百八十五センチの完ちゃんでーす!」
「うざすぎるにゃ」
なーんて遊んでいるとサイボーグ君が到着。
「姉御! 姐さん! お久しぶりっす! 二ヶ月で帰ってきちゃいましたけどいいんすかね?」
「お抱えフィニッシャーが舐めてきたからいいのいいの。サイボーグ君にはまずプレゼントがあるぞ。桜が考えたんだ」
「にゃ! 名前を考えましたにゃ!」
「おおおおお、あっしにもついに名前が!? ど、どんな名前なんです……」
「どうにゃ! サイボーグ君はガッチガチに堅くて、それでいて剛田のように強いのにゃ! 真っ先に敵陣へ突っ込む武士だにゃ! ただ、剛田も堅も同じことの繰り返しでちょっと面白くないのにゃ……」
「剛田堅士……かっこいいっす! 真っ先に突っ込んで敵を抑えるあっしには最高の名前っす! ありがとうございます、姐さん! いや、桜殿!」
わーいわーいわっしょいわっしょいと桜ちゃんをスーパーエキセントリック高い高いで上空彼方へぶん投げて喜んでいる二人を尻目に、銀さんの強化をすることにした。
「やっぱり追加で三十ミリ長口径――口径が長いと砲身が長くなり、その分加速するんで砲身から出た瞬間の速度が速くなり、威力も強くなる。ただ連射速度が落ちる――機関砲かねえ。これをガトリングにするとだいぶお金かかっちゃう。ナノマシンビームは高くてなあ。四十ミリ魔導ガトリング砲を強化となると、どこの部分も一億超えちゃうんだよね」
「提案した内装の変更はいかがですか?」
「五千万ゼニくらいかかって、剛田の改造資金がなくなるんだよね。エンジンと装甲強化だけはしたいからね。四十ミリダブルバレル速射砲を貰ったみたいだから遠距離は弾数以外は問題ない。近距離は殴ればいいしね」
「そうですか。ではまずは――」
「――五千万ゼニかけてタイヤと内装の変更するよ。剛田の次のエンジン、永久機関は輝和でんがなに香辛料を売りつけてから改装する。取引したらウェイサムへ行こう」
うおおうおお叫んでいる剛田を尻目に香辛料取引に向かうのであった。
輝和でんがなにね。
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