第11話
「あっあっあ」
「つんつん地獄は気持ちよすぎて絶頂しちゃうよね」
「あぁーっ!!」
地獄は続いていた。あたしそんなに酷いことしてたっけ!?
もてあそばれてるだけな気がする。でも分離している桜ちゃんめっちゃかわいいしいっか……。
「姉御ー、スクラップ処分してきやした。五十万ゼニくらいっすね」
「あっあっ、そう、よかっあー!!」
「なにやってんすか姐さん」
「普段の行いの仕返し。サイボーグ君もやってみる?」
「いや、あっしは性的な官能のことはインプットされてないんで」
にやりと笑う桜ちゃんとこんこんさま。
「ふふふ、これは性的ないじめではないんだよ」
「つんつんすると痛く無いし、かゆくも無い不思議な感覚が蓄積されるのじゃ。それがあるラインを超えると……」
「あっ!!」
「このように感覚がバグって壊れ、頭の中が真っ白になるのよ。痺れるよ」
「麻薬みたいっすね」
「麻薬じゃないねー。脳内のバグを引き起こしてるだけだから。身長によって起こりやすさも違うし」
麻薬だったらこんなに苦しくないんじゃないかな?
サイボーグ君に助けを求めたら「あっしは桜様の命令しか聞けないので」と、てめぇこの野郎! みたいな切り返しで断られた。普段あたしの命令も聞いてるじゃんさ! って、いやーっ!!
身長が一メートルになるまでこの地獄は続いたのであった。
「桜くん。君の身長はいくつだい? そしてあたしの身長は?」
「百十センチメートルですね。完ちゃんは百センチメートル、一メートルですね」
「あたしはどんな生命体で、君の現状はどうなっているんだい?」
「完ちゃんはナノマシン魔導生命体で、私は一般人ですね。そろそろこんこんさま呼んでいいですか? こんこんしゃまー」
「させるか! 数々の犯罪――みたいな――行為を見過ごせるかっ、そしてこんなかわいい服着やがって! 私は患者着だったんだぞ! 往復ビンタ百連発!」
「ぶばばばばばば」
顔が膨れ上がった桜ちゃんを背後に、退院手続きを済ませる私であった。
「よう、だいぶ小さくなったな」
「先生、今回はお世話になりました」
「まあ良いってことよ。で、何だ相談って」
「この丸い球って何ですか?」
「お前俺が何でも知っていると思っているだろ。とりあえずナノマシンが強濃縮されている存在ってのは分かる。エンジンとかに挿入すればナノマシン強化できるんじゃないか?」
「あたしが使ったら?」
「成長すんじゃね? ナノマシンとしてさ。繰り返すが俺が何でも知っていると思うなよ?」
ナノマシン凝縮ジュースとでも呼ぼうか。身長が百八十五センチメートルまで戻ったら飲んでみるか。
ここからは少しおやすみの時間。
銀さんは桜ちゃんと一緒に百トントレーラーを引いて都市間輸送にいったり。七十五トン級歩兵戦闘車をギュインギュイン動かすパワーがあるので、引っ張るだけなら百トンくらいは行けるらしい。
あと、もう襲ってくるクランがほぼいないそうだ。機動力低くても良いってわけ。
そうそう、うちの圧倒的火力を盾に複数社が集まって運送することになった。護送船団方式である。
護送車も集団で集まることになるので、火力集中になってさらに襲えるクランがいなくなるという。
お給料もマシマシである。十五万くらいだったかな。
サイボーグ君は、あたしがSUSHI料亭の「輝和でんがな」に紹介したらすぐ採用。社長のボディガードだってさ。
月収凄そうである。
あたしの方が強いんだがなあ。サイボーグ君見た目が凄いもんな。
片腕用の武装もらったらしい。ラッキーである。
らしいとかそうであるとか言ってんのは、もうボディーガードやっていて会えないから。
三ヶ月雇用なので、場合によっては置いていってしまうかもしれない。それが気がかりだ。
都市間輸送が十五万ゼニくらい。私が七万ゼニくらい。ボディガードがウン十万。
ああそう、あたしのバッグに収納した高級収集品が百万ゼニで売れたよ。お金は足りたね。
一ヶ月はこれでいこう。一ヶ月もあればあたしが元の身長になれる。
働くと同時に香辛料の取引を進めていく。今手持ちにある香辛料は、
黒こしょうの粒――生――、五キログラム
ナツメグ、一キログラム
にんにく、二十キログラム
しょうが、五キログラム
本わさび、スーパービックなブツが二十本――大体四十二キログラムかな――
以上である。ナツメグが入っていた異次元ボックスの中にはいろんな物が腐ったりデロデロになったりしながら入っていた。
異次元ボックスが破損したんだろうね。
この五点はパッキングされていたから保存に成功していたってかんじかな。
さて、大体どれも業務用の量だ。なんであんな所にあったのかは知らないけど、
バーにお金を払ってフィニッシャーを呼ぶ。
呼んだフィニッシャーはSUSHI会社「輝和でんがな」の飼い犬、
高い手数料要求されたけど、ジャンク品集めて支払ったお金で呼ぶことが出来た。
ここは長いテーブルが中央にあるソファーがきっちりと詰められた四角い個室。
防音設備はしっかりとしているはず。
盗聴はされていないだろう。お店の名誉に関わる。
「売ってほしいものがあるって? いったいなんだ」
「生の地球産香辛料」
「はぁ?」
「まあこれかじってみな」
そう言って一粒の実を転がす。
それを手にし「安全なんだろうな」などといってかじる。
その瞬間、吉田に衝撃が走る。
「うめぇ! なんだこの花に来る刺激と香りは!? そして後から来る塩辛さ。こんなのはじめてだ。本当に地球産、なのか」
「地球産よ。もしくは食材惑星
「……いくらだ」
「一粒十万からね。あとの事はサンプルを食べて頂いてから。この瓶をどうぞ。二十粒くらい入ってるわ。亜空間効果が付与されているから――あたしのナノマシン能力が付けたんだが――今のところ劣化はしないけど、開けたら劣化するわよ、開封は慎重にね」
「サンプルで二十粒も……」
「あなたSUSHI料亭でしょ、タイやノドグロ、オオサキホウセキなんかに載せて食べると飛ぶわよ、きっと。もちろん肉にも合うはずね、黒こしょうなんだから。私はSUSHIの専門家じゃないし、今作られている肉の養殖技術がどうなのかなんて知らないけど」
ワンパッケージ三百五十グラム入っていて、粒で言うと大体七千粒くらい入っている。一粒十万で売れたら大金持ちってレベルじゃねえ。
「値段の交渉はまた後日。今日はこの辺で帰らせてもらう」
「値下げ交渉は嫌いだからね。ケチ付けて値下げしよう物なら一切入手できなくなると伝えておいて。これだけ大粒に育てただけでもかなりの価値があるんだから」
「ぐ、わ、わかった。ただ、交渉は交渉だ。大量買いする代わりに下げてもらうなんてこともありうる」
ということで吉田輝一との交渉は終わった。一ヶ月以内に返答は来るでしょう。
ここは銀さんのキャンピングカーの中。
身長も百八十五センチメートルに戻り、例の球を取り込んでみようということに。
桜ちゃんの解析では、中に液体が入っていて、それが重要なのではないかと言うこと。
それじゃあとナノワイヤーで上部を切り取り、それを食らう。
「それ食べ物じゃ無いと思うにゃ!?」
「でもこれもナノマシンの濃縮体でしょ?食べないともったいない。お、結構美味しいぞ。小麦粉菓子みたいな味がする」
そして中のドロップみたいな液体を飲む。
味はほんのり甘く、医者が子供に出すシロップみたいな味がした。いや、飲んだことはないんだが恐らくそういう味だ。優しかった。
飲み終わったカップもバリボリ食べ、様子を見る。
「あー、なるほど」
「どうにゃ?」
「置き換わってるね。ナノマシンが。どういう変化になるかはどこかが置き換わってみないと分からない。でも悪い気はしないな」
飲んですぐに神経集合体のナノマシンが置き換わっていったんだけど、なにぶん量があるので。
「ふーん、パワーが上がったね。今本気で殴っちゃうとちゃんとくっついていないから腕が飛んで行っちゃうけど、ナノワイヤーとか強度などがあがったんじゃないかな」
「太く発射できますかにゃぁ?」
「太く発射! あ、見えるよねこれ。ミリくらいのスケールで出ているんじゃない?」
「確かに見えるにゃ! ちょっと二、三本で編めばすぐに切れない紐になるにゃ! 便利だにゃあ」
「耐荷重量も増えてそうだしね。それじゃあちょっと休んで置き換わるのを待ってみますか」
待った。結果を並べると。
エーテルグラビディ取得。
ナノワイヤーの強度太さ増強。
ナノマシンパワーの増強。
エーテル力増強。
自己ヒール回復。六十ポイント。
体内エーテル量増加。
体内ナノマシン量増加。
全面改修だった。正確な数値は武器屋のおやっさん――つるっぱげ――のところに行けば分かるよね。
しかしグラビディ取得は運が良いなあ。あたしの体重って百十キログラムしかないんだよね。重い物を押し返すのも限界がある。
足が地面とグリップするのに限界があるからね。
そこを、重力を変更して重さを変えてくれる、グラビディがあると本当に助かる。九倍すれば約一トン。
グリップ力がダンチ。重さもダンチ。
一トンもあったらサイボーグ君とでもやり合えるぞ。巨大な敵との戦いで優位に立てそうだ。
私は二千トンを余裕で動かすパワーがあるわけで、一トンまで増えたくらいじゃ苦にならないしね。バ
「そろそろ取引の時間だ。ちょっと行ってくるね」
「気をつけるのにゃ」
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