第7話

 戦車の鋼材は百二十万ゼニで売れた。うめぇ!

 でも戦車の価格からすると安いのかなー?

 んで、このお金は……。


「馬鹿野郎、そんなの気にすんじゃねえ!」


 といって叩かれる。盛大にコケるあたし。


「あれ、お前そんなに貧弱だったっけか?」

「あたしもびっくりですね。サブ意識が、壊れないように自動的に自ら吹っ飛んだ模様です」

「ほー、よくわかんねえがトラックの代金にしてほしいだなんてこというんじゃねえよ。こっちは都市間輸送でだいぶ儲けてるんだ、トラックの三台くらいどうってことねえよ。自分に使いな」

「ありがとうございます」


 と、いうわけで自分に使います。エージェントに会う……のではなくて。


「おら、紹介状書いたぞ。ったく、ナノマシン生命体で一番重要な自己ヒール喪失しやがって。俺でも今のお前なら殺せるぞ」

「さすがに現代戦車砲の一撃は重かったですね……」

「粉みじんになってねえのがおかしいんだよそれは」


 というわけで、先生から紹介状を書いてもらい病院へ行き、弱いながらも自己ヒール能力を手に入れることに。

 このシティで一番最新型モデルで百万円。高いすなーでも払える。


「それじゃ取り付けますねー」

「お願いしまーすぐうぐう」


 重要パーツなので意識を落として作業。

 たしか身体に張り付けて同化させるんだっけかな。

 こういうときってサブ意識も落とした方が良いのかな。

 ほぼ無限に意識層があるんですけど。無限の意識が自動回避したり超連射エーテルヒールやったりしてるのだ。サブ意識ちゃんチュッチュ。

 表面意識下システムと根幹無意識システムとに置き換えてもいいかな。

 あ、生体モニターは後で書き換えようね。今日も攻撃したね。


 などとサブ意識で遊んでいるうちに作業は終了、メイン意識が戻された。


「無事に起きましたか。確認ですが自己ヒール付いてますか?」

「え? えっと、生体モニターでは付いていますね。MH-〇〇五・強度一〇。あれ、MH-〇〇五って私デフォルトの自己ヒールパーツでは」

「そうなんですよ。同化中に取り込まれてしまって。付いているなら良かったです。取り込んで強化していくパーツなんでしょう」

「そ、そうですか。まあ最新のパーツが付いて良かったです」


 そして病院を出る。ええー強度一〇って。デフォルトが強度一〇〇だよー。百万ゼニだしてこれかあ。


 頂いたお金残り二十万ゼニで何をするかと言えば!


「武器屋さんへちょっこー! 反撃できなかったのが苦戦した原因だから武器を持って反撃できるようにしまーす!」

「にゃるほど。なにを買うのにゃ? アサルトライフル? カタナ? ヘビーマシンガン? アンチマテリアルライフル?」


「んーと、ナノマシン武器だって。詳しいことは山田さんが教えてくれた武器屋に行けば分かるんだってさ。ナノマシン武器はいろいろあるからね」

「でも飛ばすか切るかに大別されるにゃ。飛ばすなら撃つ、撃って爆発。切るなら、切る、突く、叩く、しか属性がないにゃ」


 どうなんだろねーと言いつつ武器屋さんへ。ショーウィンドウが並んでいる。

 へー、手からロケットランチャーが出るんだ。これは杭打ち機? 面白いね。

 こっちは人用の防弾装甲か。ナノマシン魔導融合装甲使用だって。薄く軽くするの難しいのに。やっぱ技術進歩が進んでるね。

 ウィンドウショッピングを楽しんだ後は奥の工房に。

 色々機械が置いてますなあ。古い加工機具に見える。

 ナノマシンマシニングセンタとかは置いてないのかな? あれ一つでなんでも加工が出来るから便利だと思うんだけど。

 よく分からんなーと思いつつカンカン音がする方へ向かう。


 そこにはハンマーでカタナを成形しているおっさんがいた。つるっぱげ。


「ちょっとまて、もうすぐ打ち終わる」


 そう言って黙々と刀を火に入れて叩くおっさん。

 今の時代に叩いて成形は見たことなかったわ。


「古いなー……」

 思わずつぶやく。

「だが結局これが最高のカタナを作る工程だ。材料はもちろん最新だがな。よし、こんなもんか。後は焼き入れだから時間が出来る。ようこそわが工房『ロークス・セクレクス・カルビ・セニス』へ」

「ハゲたおっさんの洞窟工房……この時代にラテン語とは恐れ入った」

「ほー、そんな意味なのか。田中を絞めないといけないな」

「誰だよ……」


 本当誰よ。


「うちのエージェント、フィニッシャーだ。武器屋は情報網が広い。悪い集団に武器を売るわけにはいかないからな。色々と情報を仕入れてもらっている。で、お前らはどんな武器をご所望だ」


 ほーん、ということで武器の詳細を詰めることに。


「遠距離負けしたんで遠距離武器が欲しいんですよ、後は私の本気殴りでも折れないナイフとかですかねえ、カタナじゃなくていいんで。カタナだと細すぎて折れちゃいますし。後はなにか特殊武器でもあれば」


 ふーんなるほど、と聞くおっさん。


「すぐ出来るのは普通のアサルトライフルにナノマシンの銃弾を込めて発射するタイプだ。火薬ナノマシンを爆発させて加速させる。レールガンでもいいが。全てナノマシンで終わるからナノマシンパワーが威力を決定する。ちょっとデカいけどな、銃弾生成装置があるから」

「エーテル加速はないんですか? エーテルなら世界最強クラスのパワーを誇ります」

「一度測ってみるか。あっちの機械に乗れ」


 体組成機みたいなものに乗せられてなにかを測られています。

 なんですかねぇ。


「エーテルパワーが振り切れてる。すげえなこりゃ。一億までは測れるんだぜ」


 その機械によると、

 ・エーテル力一億以上。計測不能。

 ・ナノマシンパワー五千万。

 ・保有エーテル三億四千万。

 ・保有ナノマシン七十六億三千万。


 だそうです。基準が無いから分からん。


 桜ちゃんは、

 ・エーテル力百万。

 ・ナノマシンパワー二百万。

 ・保有エーテル五千六百万。

 ・保有ナノマシン一億。


 こんな感じ。こんこんさまと合体しているとエラーが出るので、単独になってこれ。

 桜ちゃんは魔導とこんこんさまの底上げがあるからもっと上を行くはず。やっぱりわからん。


「これだけナノマシンパワーもエーテルパワーもあるなら自分で武器を作成した方が良いかもな。腕にアサルトライフルや刃物を仕込むんだ。ナノワイヤーも取り入れよう。これだけナノマシンとパワーがあるならグレネードランチャーを仕込んでも問題なさそうだ」


 それ以外にもなにをくっつけようか、などとブツブツつぶやいているおっさん。


「なんや色々仕込みますね。そんなにくっつけて強度は大丈夫なんですか? あたしの殴りは人の顔なら破裂させますよ」

「ナノマシン武器だから、武器になるときだけ自分のナノマシンを使って具現化するんだ。通常はただの腕だよ。武器腕でも殴りたいなら外骨格作成してから殴れ、それくらい出来るだろ」


 なんか色々と測られてデータ的に丸裸にされたあたし。

 数日後に試作品を作るから来い、とのこと。

 予算は伝えてあるけど着手金払ってないんだわ。いいのかな?

 やっぱりおっさんはつるつるが最強なんだよなあ、などと思いつつ帰宅して就寝。


 翌朝からは配達の仕事が待っている。

 先生はさ、故障している部位に最低レベルでいいから機器を取り付けて機能復活させた方が良いって言うんだけど、お金が足らねえのでございます。

 まあ、少しでもお給料上げようと思ってね、私は企業の受付に応募しましたよ。

 もう銀さんと桜ちゃんだけで運送できるしね。

 四十トントラックになった銀さんが隊列の真後ろに陣取って、襲撃があった方に車体を寄せて壁を作る。

 そして全員殺す。

 このパターンが決まってるからね。

 使っているのが高速道路だから合流地点くらいしか進入口が無いし。完封。

 さて、あたしはどこの受付に応募したかというと、このシティで最上級の料理屋「お寿司でんがな」というSUSHIを基本とした料亭。ここはこのシティでもトップアッパーな富裕層が集まる場所。

 完全予約制。

 運送屋の社長田中さんがここと繋がりを持っていて、紹介してくれた。冷凍品に魚が混じっているんだってさ。

 面接は簡単に終わりましたね。

 曰く。

 ナノマシン生命体と張り合える。

 曰く。

 近日武装が付く。

 曰く。

 何人も殺害していて、人を人とも思わない性格をしている。

 曰く。

 顔と身体が良い。


 ここら辺が評価ポイントに繋がってたそうで。

 順当だね。人を殺した記憶は無いんだけど……それは襲撃者を撃退している銀さんと桜ちゃんだと思うんだけど……。

 お給料は月七万ゼニ。だいぶ美味しい。

 お客様を見分けるために統合センサーが必要なので、お金を前借りしてすぐに取り付けた。

 民間人の見極め程度なら最低限のがあれば良いので五万ゼニのやっすいやつにしたよ。

 記憶は無限記憶なので問題なし。

 これで月十万十二万ゼニくらいは稼げる体制になったので、そろそろ情報を買うフェーズに移行しますか。

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