第5話
本日は都市間輸送の日。
都市間輸送は集団で移動する。
なぜなら都市間輸送は大量に運ぶし、貴重な物資を運ぶ傾向にあるから襲撃される可能性があるのだ。
帆船が集団移動して沈没リスク海賊リスクを分散させていた時代と同じように、集団で移動してリスクを少しでも分散しようってわけ。
ちょっと意味合いが違う? 同じ同じ。スペイン金護送船団とか神話時代の歴史って教科書で習ったっしょ?
こちらの護衛も集中できるし護送しやすくなるから襲撃されにくくなる。
いちおーさ、シティ圏は都市が守るけど、シティとシティの間は誰も守ってくれないからねえ。
そこに襲撃者が潜む隙間が生まれるってわけ。
襲撃者はクランとかいって車で移動し生活する集団が主体。
車の操縦はなかなかの物で、今までなんども都市間輸送を襲っては略奪してきたそうだ。
今回襲撃してきたのもその類いかなあ。そう、襲撃されている最中である。
肩パッドに棘突きの腕輪、モヒカンとまあ、いかにもな格好をしている。
ただ車には軒並みヘビーマシンガンを装備しているあたり、侮ってはいけないみたいだね。
「銀さんを体当たりさせてやつらの気を引きつけるよ! 銀さんは二十ミリガトリング砲をどんどん撃って!」
「魔導を使ってアームを作るにゃ。引っ張り上げて転倒させてやるにゃ。こっちはどこまでも重くなれるのにゃ!」
襲撃対策でどのトラックにも機銃は装備されているんだけど、そんなに弾数は多くないし大きなマシンガンは使えない。武装をすればするほど運べる量が減っちゃうからね。
ついでに自動走行で自動射撃が普通なんだけど、運送会社の搭載システムじゃ射撃精度があんまりよろしくない。頼りにはならん。
先頭を走っていた銀さんがサイドに移る。一番デカい二十トン車なので迫力あるなあ。
「集中射撃開始!」
無線で指示を飛ばす。一応大隊から班まで、指示訓練とかは訓練済みだからね。戦闘指揮は私が任された。
最強化するために、生まれてから五十年くらいは軍事訓練していたんだよねえ、懐かしい。
ちなみに運送のあれこれをする事務員も完全護送されて隊列に参加している。
などと考えていると、銀さんの体当たりが相手部隊の前列、バイク部隊ににぶち当たる。
銀さんは全部のタイヤを自由に回転そしてパワーの出力ができるから極めて敏捷性が高いのだ。
因果律崩壊エンジンも火力がとてつもなく出るエンジンなので、急停止した後からの再ブーストも楽に行える。お金入ったらターボ付けたいね。銀さん特に付けていなかったはず。
バイク部隊がコケるとコケた同士を避けるために車部隊の隊列が乱れる。
何らかの方法で盾を展開して銃弾を防いでいた車がズレて隙間が出来る。
そこにバラバラの機銃が飛んでくる。
お金がかかっていない車なので人間か人型機械の射手がいる。その射手が身体を引っ込める。
こちらへの射撃が減る。
多少は落伍するトラックが減りそうだ。
高いんだぞトラックって。中央は冷凍車が3台いるし。
こっちにも護衛車がいるので護衛車からマシンガンが火を吹く。ヘビーじゃないのはマシンガンでも十分に車は破壊できるため。トラックじゃあないからね。
撃ち合いになったところで相手側隊列の右側面に銀さんが割って入ってくる。ヘビーマシンガンの銃弾を山ほど浴びるが一切意に返さない。ナノマシン魔導融合装甲なのでこれくらいじゃ話にならん。
「そしてこの桜ちゃんさまの魔法と銀さんの弾数大量にある二十ミリガトリング砲が火を吹くわけにゃ!」
銀さんの二十ミリガトリング砲がヴィーンと甲高い音を立てて回転する。
桜ちゃんの狐火と雷狐、
作っていたアームは自分自身が振り落とされないための防護装置に切り替えた模様。靴が草履だもんね。
二十ミリガトリング砲は重火器に分類される。当たればバイクでも車でもひとたまりも無い。
超キビキビ動く銃座がバイクを蹴散らし、車を破壊していく。ちょっと爽快。銀さんは自分の身体なら銃座をどこにでも生やせるので左側面に移したようだ。
弾薬は空間転送技術によってガトリング砲に装填されている。
桜ちゃんの魔法は私ですら燃やし尽くすほどの火力がある。
火で燃やし雷で感電させ氷で滑らせる。
機械が壊れるというか、中の人が死んでいく感じだった。
撤退を開始した襲撃者。でも銀さんの追撃はこんな物ではない。
二十トン車が暴れまくり、ハイウェイという逃げられない場所で襲撃者を磨り潰していく。
後ろに逃げてもバック時速百二十キロメートルで追ってくるんだもん逃げられないよなぁ
これらによって襲撃者はボッコボコにされていた。ボッコボコである。ボッコボコ。
「こりゃあこっちの勝ちだね。被害はなしか」
「私が積んでいる荷物は相当破壊されたと思います」
「あー、それはあるか。まあそれが全部ではないし」
三日間かけて中継シティへ到着。トラックがずらっと並んでいる。二百台以上はありそうだ。
「ここはナノマシンが生み出される場所があるから燃料補給に最適なんだってさ。一つの都市だし修理場まであるね」
「命がけの筋肉やろうがいっぱいいそうだにゃ」
といってぴょんぴょんどっかへいく桜ちゃん。ナンパかな。やだな。あたしだけの桜ちゃんなのに。ブツブツ。
修理場へ行ってターボあるか聞いてくるか。
「ちゃーっす。ここって因果律崩壊エンジンのターボとかっておいてありますか?」
「ああん? 軍用エンジンのタボやチャジャを何に使うんだよ」
「軍用エンジンを持ってるんですよ。チャジャもあるんですか? スーパーチャージャー」
「ほーそらすげえ。ここじゃなんにも無いな。隣のシティ、名前なんだっけかな。そうだ、『ウェイサム』、ウェイサムになら置いてあるはずだぜ、軍事工場シティだからな。ただタボもチャジャも構造が特殊だからかなり高えぞ。ねーちゃんが百年輸送仕事しても買えるかわからねえんじゃねえか」
「ウチは食料品加工品の輸送が主だからウェイサムへは行きそうにないなあ。ありがとうございました」
ムッキムキの筋肉ちゃんが答えてくれました。桜ちゃん、君の答えはここにあったぞ。
しかし高いな、百年輸送仕事は余裕で出来るけど。時間が、ねぇ。
今でも余裕を持って襲撃者を撃退できるみたいだし頭の片隅に置いておけば良いや。
さて、休憩も終わり。
さらに五日かけて隣シティのロッサムに到着。
相手の会社に無事に品物を引き渡す。
銀さんの品物は大半が駄目になっていたが、そもそも一番荷物高そうなの積んでいそうと偽装していた。
安物しか積んでいなかったのである。
他三台に高い冷凍物積んでいたんだね。
PDAネットワークで山田さんに報告してもらう。
帰りはまた荷積みを持って出発。
しかし、シティとシティの間ってトラック速度とはいえ七日かかるくらいあるのか。現在のJUNA、人口密度は高くない? 悲惨な戦争が後を引いてる?
国、というか植民星だから国は日本銀河帝国なんだけど、地域管轄ってどうなってる? 無くなってるの?
よく分からんまま都市間輸送は終了した。
都市間輸送を三回、毎日の配達をして、一ヶ月経過。
「なんと、三万五千ゼニも頂いたよーん!」
「やったにゃー! 焼肉パーティにゃー!」
事前にいただいたお給料と合わせると四万超えるね!
ただ、全部使うわけにもいかず。およよ。
「このお金の大半は情報を仕入れるために使われるんだにょ。焼肉パーティはまたこんどだにょ」
「しょんにゃぁ」
仲間を探すのが目的だから仕方がない。焼肉パーティは諦めて居酒屋でささやかなパーティを開いたよ。
あたしも桜ちゃんも三百歳を超えているナノマシン魔導生命体。年齢制限は超えております、というか製造時点で飲酒できます。ロボットなので。
代謝を調整すればちゃんと酔える。
「それでは、生活できたことにカンパーイ。唐揚げ食べよ、唐揚げ」
「牛の代わりに鶏肉だにゃ。でもしょうがないにゃね。みんなを見つけ出さないと。で、どうやって情報を仕入れるのにゃ?」
「唐揚げうめー。えっとね、社長情報なんだけど、バーとかで店長にお金を払うと、フィニッシャーというエージェントに出会えるんだって。そのフィニッシャーから情報を仕入れるの。フィニッシャーとの仕事もして信頼感を高めながらね」
その支払う額が高額なのだ。確か六万くらい。あと二ヶ月は運送業しないと。
二ヶ月もあれば宇宙に持って行かれてもおかしくないけれど、やれることがこれしかない。
とにかく祈りながら目の前のことをやっていこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます