第4話
クリニックの先生と対面する。めっちゃパンクな先生だった。
頭の半分しか髪の毛がなく、髪の毛は全てなにかのコードだ。
腕は完全に機械の腕で
出来る。できるぜこいつぁ。
この先生は自らをこうまでアーティスティックに改造したんだろう。信頼できる。
先生はどっしりと椅子に腰掛けると、後ろを指さし、「いれ」とだけ答えた。
後ろには改造台兼診察台がある。素直にそれに乗った。
深い診察には意識を落とさないといけないのは人間と全く一緒。逆に変な機能が起動するナノマシンやアンドロイドのほうが面倒なんだにょ。
先生がガスマスクを着けようとして「OK?」と了承を取ってくる。
OKはOKなんだとちょっと感動しつつも「OK」と返してマスクが着けられ意識が無くなった。
「深刻:生体スキャナーされており、生体インターフェイスに侵入されようとしています。逆攻勢をしかけます」
待ってストップやめてお願い。そうじゃないから、違うから。言語が通じたらPDAインターフェイスから侵入してもらうようにしようかな……。
「警告:現在、脳にウィルスを仕込まれている可能性があります。即時ワーム防御を開始」
まってまってまってぇぇぇぇ! それが言語インプラントだから。いっちゃん重要だから。
というかインプラント入れるたびに
生体モニターを押さえ込んでいるうちに手術は完了し、意識が回復した。
「どう、わかるか?」
「わかります、そちらはどうですか?」
先生がたばこを吹かしながら椅子に座っている。
「わかるよ、ったく、あんたは最低な患者だぜ。2回も攻撃かけられたんだから。途中で止まったから良かったけどよ。何年前の何エンド?」
「すいません、内部に入る想定がなかったもので。えーと、300年前のトップエンドですね」
「100年前のひでえ戦争以前の製造なのか。通りで。今のナノマシンは性能制限されてるからな。軍用でもそうなんだぜ」
「吸うか?」といわれて「フィルターが全部濾過しちゃうので」と断る。
「300年前だと、エーテルは使えんの?」
「それが、休眠から目覚めた時には全部使えなくなっていたんですよね」
先生はありゃーという顔をする。
「今エーテル魔法は全て禁止なんだ。製造すらされてない。残念だったな」
「どうにもならないんですか?」
「廃墟の吹きだまりに魔法の素が落ちているときもある。ま、今は魔法と同等の機械を内蔵するのが主流なんだけどな」
「魔法の素ってどういうのにゃ? にゃが逃げだしたときこういうのが落ちてたにゃ」
といって青い宝石みたいな物を差し出す。美味しそう。
「美味しそうですね。桜ちゃんは看護士さんにやってもらったの?」
「おまえで成功したらあとは俺がやる必要はねえよ。これが食べ物に見えるのか? ま、これが魔法の素かもしれないな。噂では青い宝石を飲んだらエーテル魔法を得られたとかなんとか。どうせ自力で吐き出せるんだし、飲んでみたらどうだ?」
青い宝石は二個合ったので一つ食べてみる。
おお、甘い飴のような味がする。私の特性上すぐ溶けてしまったけど。
あめ玉のエキスがナノマシン配管を通っていくのがわかる。
全身に行き渡る。
【生体モニター:エーテルヒールを入手しました】
「おお、エーテルヒールを手に入れたって!」
「にゃも飲んで見るにゃ!」
パクッと食べ、ゴックンと飲み込む桜ちゃん。かわいい……。
「おおおお、エーテルリジェネートだにゃ! 高威力広範囲、激痛ヒール!」
「おおー、これで戦場でも死ななくなったね。回復が早すぎて激痛を起こすんだよね。とんでもなくひどい成長痛!」
二人で万歳の舞を舞ったあと、こんこんさまが限界なので分離。
桜ちゃんの口調が変わったことに驚きつつも、受付兼看護婦さんのきれいなおねいさんアンドロイドに奥へと連れて行かれた。
今日はここで泊まりそうだね。
「で、この後お前らどうするつもり? 金あんの?」
「お金は無いんですけど、とある事情で三百年前のナノマシン生命体を探してまして。探し歩きたい所なんですよね」
「んじゃ運送会社紹介してやるからそこで働いて情報集めな。このシティじゃ運送は物も情報も集まる所だ」
「わざわざ仕事の紹介まで。ありがとうございます」
見た目の割には凄く優しい先生であった。パンクは優しい。ミィ覚えた。
保有ナノマシンをナノマシン燃料として放出しすぎている、少し深く寝ろといわれ、麻酔をかけられて診察台で寝た翌日。
確かにそのようであって、自己を自己と認識するナノマシンが減り気味であった。自己認識がなくなったらナノマシン生命体は終わりだからね。
すっきり眠って大復活! ナノマシン保有量も完璧! あたしいは保有量に制限がないんだけどね!
「この星には既に国はほぼなくなって久しい。百年前のひどい戦争で荒廃しているしな。砂漠ばかりだ。シティはどっかの企業が独占支配している。企業によってシティの雰囲気はまるで違うぞ」
「ふーん。このシティはどうなんですか?」
「温和な方だ。料理屋企業がトップっていう珍しいところだからな」
「分かりました、ありがとうございます」
先生と受付の看護婦さんに見送られ、教えてくれた運送屋さんへ。
社長は
「……というわけで、雇ってほしいのですが」
「ナノマシン魔導車を持ってるなら大歓迎だぜ! 何トン牽引できるトレーラーになれる?」
今はピックアップトラック形状の銀さん。
道路を走行するなら歩兵戦闘車じゃなくても良いし、タイヤだと道路が傷まないから良いんだよね。履帯は金属だから痛むんだよ。
「何トンでも行けますが、20トン冷凍車になれます。これなら機銃を上部に付けたまま移動できます。まあそれはトレーラーでも出来ますが。タイヤが空転しなければ時速180キロメートルは出せます」
「っかー、さすがだなナノマシン魔導車は。冷凍車はかなり貴重なんだ。なら都市間輸送を担ってもらうぜ。そんなに出る日数はないがその分自由な時間が出来る。よろしく頼んだぜ!」
すんなりと雇ってもらえた。
都市間輸送をしない日は、危険地帯への配達を担うことに。
ホームレス地帯やシティが管轄できていない地域とかだね。
まあ重武装できるし、装甲はナノマシン魔導融合装甲だしね。
玄関先にアームでぽいっと置けば良い。アームは変形機構を桜ちゃんの魔導で作る。
桜ちゃんは加工が得意なのだ。一度作るとずっと付属してるくらい。
自由な時間より少しでもお金稼いで情報を得ないと。焦れないけど急がなきゃ。
急がなきゃと思いつつもなにも仕入れられない。お金がなくて情報を仕入れる場所に行けないのだ。
働いている間に住まいを借りられた。よりよい仕事に就くには住まいが必要だ。
借りたのは一ヶ月六百ゼニとめちゃくちゃ安いが極狭アパートである。
ミドル層なら十倍は払っているはずだ。
六百ゼニで住まいがあるという地位を手に入れられたのは大きい。
「まあ、ここに住むわけじゃないけどね」
「にゃたちには銀さんという強い存在がいるにゃ! 大型ニャンピングカーになってもらえばいいのにゃ!」
「ニャンピング?」
「
バストイレキッチンなんでもあるよ。ベッドを買うまでは雑魚寝だったけれども、山田さんが早めに給料を出してくれたのでふかふかのベッドを用意することが出来たよん。テーブルなどもね。タスカルー。全国の山田さんありがとう。
変形の都合上、備品以外は一回一回出し入れしないといけないが、私には右手にこの宇宙から別の宇宙へと物を移動させる多元宇宙バッグ機能が付いている。
空間拡張、亜空間、異次元、その次の多元宇宙である。
機能が損傷していて量は入らなくなっているが、最高級、いや最高のアイテムバッグだ。
出し入れもセンサーと連動で出来るのでいくら大きい物でもどれだけ極小な物でも、出し入れ自由だ。
今はセンサーが損傷しているので目で代替しているけどね。
まあそんな空間移動機能もあり家具の移動は楽ちん。
出し入れはアームを使って銀さんがしてくれる。
銀さん便利だ……。
快適空間を維持しつつ、汗かき汗かき働いたのでしたー。
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