マニック・マンデー 6

 さらにアムの指先が下へと降りていく。感動パンツ(商品名)の膨らみの、その輪郭をなぞるようにゆっくりと楕円を描く。

「あっあっあっ……」

 お脳をいじられたわけでもないのにタクミは自動的に声を漏らした。その目は閉じられている。開ければ、すぐそばに愉悦の表情を浮かべるアムに気づいたはずだ。

「……我慢しないで……我慢しちゃダメ……したら終わ」

「申せ申せと言うけれど!」

 突然にタクミが大声を上げ、アムはビクッとなった。細められていた眼が真円の形になる。何か言いかけようと唇が開き、けれど声を発する前にタクミの大声が遮った。

「言うに言われぬことがある! とはいえ、言って聞かせやしょう! 我慢の果てに吐き出される精こそ、男の腰を砕くのです! それを解せぬ十戒など、何が十戒でしょうか!」

「そ、そうなの……?」

「男タクミ、嘘や二言はございやせん! だから、その、その手の動き止めて……!」

 アムが「あ」と無意識に動かし楕円軌道を描いていた指先を離した。

「そこで終了とはご無体な!」

「あ、え? さすったほうがいい?」

 カッと眼を見開き、瞬間すぐ上から覗き込むアムの顔の近さにのけぞりそうになるも、タクミは水の呼吸でそれを食い止めた。

「そうでなく『我慢したら終わり』というのがご無体な、です!」

 ふふ、とアムが微笑む。「つまり、タッキーはもっともっと気持ちよくなりたいんだ」

 タクミの顔と耳が急速にあかくなる。

 半歩分、アムは後ろに下がり、小首を傾げた格好でじっとタクミを見つめた。

「べつに何回いっちゃってもいいんだけどなあ。そのぐらいタッキーなら楽勝でしょ?」

 確かに。タクミは調子に乗って「何回でもイけるぜ!」とかマチアプゲームのやりとりで書いてしまったことがある。誇張ではなく、実際そのぐらい精力を持て余してはいる。だが、それとこれとは話が別なのだ。別なのだ!

「まあね」とアムは自分の鼻先を叩きながら、言った。「まだ全然、わたしのコスプレも堪能してもらってないし、タッキーのいうことももっともかな?」

「そ、そうですよ! せっかくナースになってもらったのに、プレイすら」

「プレイ?」

 アムの声が険しくなった。

「プレイ? そんな風俗じゃないんだからプレイなんて……はしたない!」

「えぇ……」

「でも、せっかくの衣装、じっくり堪能してほしいからポーズなら、なんだってリクエスト聞いちゃうよん」

「え、マジすか?」

「マジ」

「よつんばいとか開脚とかでも?」

「わたし、あんまり体柔らかくないから、無理ない程度になら」

「エイミィちゃん、柔らかそうなのに」

「め! アムって呼んで」

「アムちゃん、柔らかそうなのに(特におっぱいが)」

「なんか局所的に熱視線感じるけど、でも見るのは自由よ、恥ずかしいけど……」

「それではリクエストいいですか?」

「あ、ちょっと待って!」

 あわてたようにアムがベッドの上に散らばる衣装から、ナースキャップを取り出した。

「これがないとね! あ、名札はなしよ。なんか名札とか履き物とか妙なリアリティ求める御仁もいるみたいだけど、タッキーはそんな変態じゃないわよね?」

「あ、いや、変態ですけど、そんなことよりベッドに手をついて、お尻をこちらに向けてください。できれば頭を低く、お尻を高くつきあげる形で!」

「え、ナースキャップ……」

「ぼかぁねえ、パンツを穿くときのエ……アムちゃんのお尻を突き出す時の仕草にやられちゃったんだな。間近で、少し伸びた繊維がぴったりフィットしてるお尻の形も、太ももと太ももの間の三角の空間も、舐めるようにして見たいんだな」

「せっかくのナースキャップ……」

「ぐずぐずしない! もう我慢しない、欲望に生きる、何も怖くない! アムちゃん、頭は低めに‼︎」

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