マニック・マンデー 3

 ベッドに手をついて、エイミィがベッド上のコンソールへともう一方の手を伸ばす。ストレッチ素材のパンツはあますことなく、尻の良い形を伝えてくる。思わず巧の手がピクリと動いた時、照明が切り替わった。

 ブラックライトに深海の様子が浮かび上がる。壁面に描かれた夜光塗料の絵の上を、ミラーボールから投影された魚や泡がゆっくりと巡っていく。

 まるで悪戯に気づいている先生といった調子でエイミィはふふっと笑って立っていた。

 ブラウスが青白く光り、そこから覗く肌もまた白い。

 Tバックと同じく、ブラも黒だった。

「黒スケは看護師としてどうなんですか?」

 タクミは自分でも間抜けな質問をしているなと思ったが、安易なミニスカを選ばないエイミィのセンスには、どうもそぐわない気がしたのだ。

「透けないから大丈夫」

 タクミの目を見ながら、エイミィはブラウスを脱ぎ、ベッドへ落とした。

 半袖の上着をゆっくりと着込み、丁寧にボタンを閉めていくと、そこには病院にいるような看護師の姿が——

「あれ、なんかエロくないですか? 透けてはないけど」

「ストレッチ素材のワンサイズ下だからね」

 ぐいと胸を突き出す形になると、隆起が露わになった。デカい。ブラだけの生肌も見ていたのに布ごしだとボリュームに圧倒される。くの字を描く腰のラインもヤバい。

 あ、そうそう、と放り出した紺色の布をエイミィは羽織った。カーディガンだ。

「お……おおお……!」

 タクミは、カーディガン姿に思わず声を漏らした。先ほどのように胸を張っているわけではないが、カーディガンの布が垂れ下がることで、より乳の大きさが浮かび上がっている。トップとアンダーの差が鮮明なのだ。先端から垂直に落ちる紺の布と、へそを隠すストレッチ素材の布との間の空間に俺は住みたい、と切に願うタクミなのであった。

——雨風を、俺はあの乳の傘の下でしのぐのだ。

 ソウイウモノニワタシハナリタイ。

……コロポックルか何かかな?

「あとはバインダーかな?」

 桃源郷に彷徨い込んでしまったタクミを尻目にエイミィはさらにバッグを漁り、小道具を取り出した。そして、小さく、あ、といった。

「タッキー! おい、タッキー、聞いてる? 目ぇ開けたまま寝るなオイコラ!」

「は! な、なんですか?」

 こほん、と咳払いをしてエイミィ、

「まず、最初にいうことがあります。わたしのことはエイミィちゃんと呼ばないこと。なぜなら、ふたりの関係は変わったからです」

「こ、恋人同士に?」

「それはゲームの中の話。え、まさか本当に恋人同士になったとでも……?」

「え」

「いずれは、そうなるかもしれません。ですが、現状は今日出会ったばかり。いまはまだコスプレをするわたしと、それを見るあなたという関係でしかないのです!」

「えぇ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る