第36話 強硬のゴーレム
盛大な爆発の後、いきなりよく分からないところに飛ばされ、強制的にクエストが開始されるとは思いもしなかった。
しかも『レジェンドクエスト』である。最上級のクエストとして君臨している『グランドクエスト』の一個下なのだから難しいのは確かだろう。
それより、このクエストを引き起こしたトリガーが気になる所ではある。
気に障るのは足跡が消えるという現象、そして地面と足が瞬間強力接着剤で身動きを封じられた事だ。今思えば、どう考えても怪奇現象――でしかないが、あり得るとするならばそこら辺の類で間違いないだろう。
「とりあえず、アイツらと合流しなきゃな」
最優先事項はソレだ。しかし、連絡手段が遮断された異国の地で、指定された人間を探すなど無謀オブ無謀である。とはいえ、引き込もっててもしょうがないので足を運ぶ。
「おい、いるかラルメロ」
「にゃむにゃむ……ん?」
「お前絶対寝てたろ」
「おう」
「お、おう」
今気づいたが、ラルメロは俺の体内(?)にいても一応話せるらしい。相変わらず、ぐうたら猫である。
◆
進み続けるうちに、分かったことがある。それは、俺が転移させられたのは、『古代の遺跡』であるということだ。
壁際や地面には、錆びた剣や石器等が埋められていたり、出土したりしており、それらを回収し、説明文を確認してみたところ『古代の遺跡』でしか取ることのできないアイテムと書かれていた。
高く売れるかインベントリがカツカツになるまで回収業者になるとしよう。
「ん……?」
一瞬地面が振動したような……いや、気のせいだろうか。だが、その思考は一瞬にして覆された。
「来る……」
地面がいきなり割れ、ズズズと出てきて立ち塞がるのはレベル50の【強硬のゴーレム】。名前と見た目からしてあからさまに硬いという情報は受け取った。
毒牙鮫の鱗に対して、攻撃が通らなかったことも加味すると、何かしらの弱点がない限り、ダメージはほぼ通らないと見ていいだろう。
全身砂岩で覆われているゴーレムは目を光らせると、のそのそと近づいてくる。
なら……
「蒼月一閃」
一旦様子見のスキルで首辺りに攻撃を叩き込む。すると、刀がすり抜ける感覚がした。どうやら、頭と胴体は糸のようなもので繋がっていたらしく、頭だけがどすんと地面に転がり落ちたようだ。
しかし、HPバーを一目見ると1ミリも削れていなかった。予想通り過ぎて、思わず苦笑いが溢れる。
「ゴゴゴゴゴ……」
ゴーレムはどこからか唸り声を上げ、身体をゆっくり反転させる。ということはつまり、ゴーレムは実質俺の方向を向いているということになる。そして、数秒もしない内にゴーレムは大きく一歩を踏み出し、駆け出した。
「そりゃあ殴ってきますよねぇ!」
頭が無いにも関わらず、右レンガストレートをかましてくる察知した俺はバックステップで後ろに下がり、遅いパンチを交わす。
頭が無い状態にも関わらず、何故か俺の位置が炙り出されているようだが、今はどうでもいい。
それよりも、ゴーレムの動きがとろすぎて当たる気がしない。スピードブーストを使うまでも無さそうだ。
とはいえ、コイツを倒す方法が思い当たらない。胴体と手足は隙間なく接続されているため、分離させるのは不可能だろう。
絶対に倒せない敵なんている訳無いしな……
「待てよ……」
とある作戦を思いついた俺は、ゴーレムを俺は、転がり落ちたゴーレムの頭を抱える。
「ぬぉぉぉぉ! どんだけ重めぇんだよ!」
いくら力を入れても、持ち上がらない。クソッ、筋肉があれば全てを解決出来たのにッ!
バウンティクロニクルは、筋力というパラメータが存在しないが、隠しパラメータとして存在している。筋力は、リアルの筋肉量に応じて、自動的に数値化され、それが反映されるのだとか。
そのため、キユウのようなムキムキ人間に一般人が勝負を仕掛けるのは不毛である。
だが、俺は別だ。守護霊という最高なパートナーがいるからな。猫の手も借りたいというのはこの事だ。
「引力遊戯」
守護霊のスキル、引力遊戯はその名の通り、物質を引っ張る能力である。
「おぉープラスチック並に軽くなった……」
「ぬ゛ぬぬ゛ぬ゛ぬ゛」
ラルメロが悶えている声が聞こえる。まさか、そういう感じだとは思わなかった。なんかすまん。
「ラックカウンター」
ゴーレムの攻撃が、ゴーレムの頭に直撃。その瞬間、頭にエフェクトが発生する。これは、ラックカウンターの成功を表す。
「――自壊しろッ!」
頭の砂岩が、ゴーレムの右手にドリルのようにねじ込まれると同時にHPが凄まじいスピードで溶けていく。そして、ヒビは全身に広がって行き、塵となった。
「経験値うっま」
レベルが32に上がったところで、一旦ウィンドウを開き、確認しようとすると……
「――ッ!」
鎖のジャラジャラとした独特な音がした瞬間、感覚で下がりつつ避ける。そして、狂刃乱舞を発動。鎖を八つ裂きにし、消滅したところで息が止まる。
「マジかよ……」
鎖が飛んできた方向に目線を移すと、両手に鎌を携えた『ウキワ』の像が微笑を浮かべつつ、俺を見据えていた。
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