第32話 反撃
ルシラスが二勝。対してウキワは二敗。後がなくなったウキワはルシラスに、鋭い眼光を浴びせる。
「余程の自信があるようだな」
「だって……勝ち確だからね」
両者は自信に満ち溢れていた。
「兄弟なだけあって、やっぱ似てるよなー」
「確かにね……で、どっちが勝つと思う?」
「お前最初からそればっかだな」
「いや、どう分析してんのかなーと思って聞いてるだけだよ。勉強にもなるしね」
「なんだそりゃ」
ヒナウェーブの思考はどうなっているのだろうか。相変わらず意図が読めない。そこが、一般ゲーマーの俺とプロゲーマーの違いなのかもしれないな……。
「で、どうなの。相手の動き見てたんでしょ?」
「んー、ウキワが勝つだろうな」
「その心は?」
「まあ、見てればわかるさ」
ヒナウェーブが若干ムスッとしたように見えたが、気のせいだろう。
三戦目――
やはり、先手を打つのはルシラス。冷酷そうな割に、案外攻撃的である。
「
息を吸うように、魔剣にバフを入れ斬りかかる。
「
ウキワも先程と同じようにスキルを唱え、真正面に鏡が出現する。もはや二戦目の再放送であった。
ルシラスは剣を真上に投げ、
「どっからでも来いよ……」
「ふっ、行くのは私じゃない……
ウキワが正面の鏡に向けて唱えると、その名の通り、鎖が現れる。
鏡の先は――
「――狙いは剣かッ!」
鉄の鎖は上空に投げた剣に巻き付く。そして、瞬時に鏡の中に戻る。ルシラスの魔剣は没収されたのだ。
「同じ行動しかしないんから当然でしょう?」
「ちッ……
ルシラスはスキルを発動するが、剣は鎖に縛り付けられ、動きもしない。
「クソッ――なら
やはり、何も起こらなかった。
「滑稽ね……何度やっても無駄。だってこの鎖が魔力を吸い取ってるんだもん」
「いやぁ、正直油断した。そんなスキルを隠し持ってたとはな」
「馬鹿すぎる……この手のゲームは、予測が基本でしょ」
「へっ、もうそんなヘマはしないさ」
すると、ウキワは問答無用で切り刻んだ。ルシラスは何一つ抵抗しない。交わしたとしてもどうせ殺られるため、時間の無駄だと思ったのだろう。
「まずは一本……」
「ふんっ……そのくらいくれてやるよ」
ウキワがようやく一本取り、四戦目――
ルシラス動かず構える。どうやら、行動パターンを変えてきたようだ。それを瞬時に判断したウキワは逆に攻めに行く。
「
ウキワは鎖をだし牽制しつつ、接近する。ルシラスはいつものバフをかけ、いなす。そして、ヴォイドステップを宣言し、交わす方向性に切り替え、剣を振るった。
しかし、その攻撃は左の鎌で防がれる。
「
ウキワはスキルを詠唱し、禍々しい鎌が紫色のオーラを発するのを確認した後、右の鎌で首を掻き切ろうと水平に振るう。
「遅い!」
ルシラスはヴォイドステップで避ける。その後、スキルを詠唱しようとするが――
「は……」
ルシラスが分かりやすく混迷した一瞬の隙をウキワは見逃さなかった。
「
紫がかったエフェクトが両鎌に付与されるとそのオーラが渦のように、ルシラスに押し寄せる。その正体は、高速の乱撃であった。
「これで並んだね」
「……」
ルシラスは無言で、佇む。
ウキワの勝利により2-2と並んだ。つまり、次の試合で勝負が決まる。
「なんにも言えなくなっちゃったのかな?」
ウキワはいつもの煽りを浴びせる。
「――まだ勝者は決まってないだろッ!」
冷静沈着であったルシラスは、大きく叫ぶ。魔剣にバフをつけ、ヴォイドステップも上乗せし、がむしゃらに剣を振るう。
「
ウキワはスキルで光の速さの如く裏に回る。
「
鉄の鎖は魔剣ごと締め付け、ルシラスの身動きは取れなくなった。
「おまえの鎌に当たる。もしくは、鎖に触れるとMPが奪われる……か」
「実は、こういうこともできるんだよねぇ」
ウキワはそう告げると、目の前に
「
スキル宣言した後、両手に携えた鎌を鏡に向けて投げる。繋がっていたのは、ルシラスの背後だった。
「――ぐァッ!」
二つの鎌は、ルシラスの背中に突き刺さり、悶えた。
「剣で刺された時のお返し。どう?」
「早く……決着をつけろ」
「はあい」
ウキワはルシラスの背後に回り込み、鎌を引き抜き、幽玄の
ついでにクリティカルも入り、ルシラスのHPは全焼した。
◆
「強くなったと思って、威勢を張る。それが敗因」
地を這うルシラスに対し、ウキワは、上から睨みつける。
「いつからそんな性格になったんだ」
ルシラスは小声で問う。
「んー、最近からかな……」
「ふん、そうか」
「あ、そうだ。G(ゴールド)の件はチャラね。さっ、行くよ」
ルシラスの元を離れ、ウキワは俺とヒナウェーブに呼びかける。
「お、おう……」
「ははは……」
圧倒的な強さを目の前で見た俺とヒナウェーブは、放心状態だった。
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