第30話 ギャンブル敗戦
第三の街【ダラワ】は、最初に訪れる第一の街【シーロ】の上位互換のような街である。建物は【シーロ】とほぼ同じ造りになっているが、なんと言っても、元となる素材が違いすぎる。
【ダラワ】で使われているのは、宝石とかそういう類のものだろう。高級感満載の街は、何処を見渡しても煌びやかで、歩くのもおこがましく思えてくる。
ヒナウェーブはまだしも、俺とウキワがあまりにも奇抜すぎるが故にそのような感情に陥っていると考えられる。というか、間違いない。
仮想空間――言わば、ファンタジーの世界だからこそ、この衣装が成り立っているわけだが、あまりにも奇抜すぎると、どうやっても浮いてしまうのだ。
賞金まっしぐらで、あんまり気にしたことは無かったが、一度気になってしまうと、それを引きづってしまうのが人間である。
――はっきり言うと、顔を仮面で覆っているとはいえ普通に恥ずかしい。
というのも、俺とヒナウェーブがこの世界で初めて賞金を獲得したことによって、プレイヤーから多くの視線を感じていたからである。
「あれ、もしかして……」
「ヒナウェーブって……プロゲーマーの?」
「もう一人のやつは誰だ?」
「猫の仮面つけてんぞ」
などと、ザワザワ声が鳴り止まない。生まれて初めての経験だった。
「いつの間に、有名になっちまったなぁ……」
「まさか、一番乗りだとは思わなかったもんね……」
俺が、気を逸らすために呟くと、ヒナウェーブがそれに同調する。
「ウェブは慣れてそうだよなこういうの」
「いや、全然。世界大会で顔を出すことは増えたけど、やっぱり苦手だね」
「ほーん」
実際に俺も慣れていないせいで、なんも言えなかった。
「さあ、着いたよ」
周りの視線など気にすることなく、黙々とマップを確認し、先導していたウキワが一言かける。
俺たちが訪れたのは『
「思ったよりガチだな……」
豪華な内装と広々とした空間は、ラスベガスのカジノを彷彿とさせる。行ったことないけど。いや、そもそも年齢的に無理!
それに、スロットマシンや、ルーレットなども置いてあるようだ。これだけでも新作ゲームとしてやって行けそうなほど本格的である。
話し合いにより、俺たちがやるのはチンチロに決まった。
ルールは単純で、サイコロを三つ振り、役の高いプレイヤーが勝利となる。
アイテムを売ることで、G(ゴールド)の足しにできるが、敢えてしなかった。それは、ギャンブラーとしての理念に反する行動だ。最初から負けることを考えてちゃ勝てるものは勝てないからな。
まずは、賭け金を決める。
「……最初は様子見ってことでまあ1万か」
「じゃあ私も1万にしよ」
「ふーん」
一戦目、俺とヒナウェーブは1万G、ウキワは2万Gを賭けた。
「俺からか……ほいっ!」
目は3.3.5だった。
「おー」
「よしっ……これはデカい!」
「じゃあ次私ー」
続いてヒナウェーブのターン。
「ほっ!」
出た目は1.5.3。つまり、振り直しである。
「頼むっ………」
ヒナウェーブはそう念じると、次の出目は2.2.2であった。
「はぁ? ゾロ目かよ!」
「やったぁ!」
「6で喜んでた人は息してるのかなー?」
ウキワが微笑を浮かべつつ、息を吸うように煽りを入れる。
「ふん、まだ振ってねぇ癖によく言えたな」
「まあ見てな……よっと……」
自信満々に言うと、出目は4.5.6だった。
「はぁ? お前ら不正だ不正!」
「じゃあどうやって不正するのか教えてよ」
「ぐぬぬ……」
「でもまだ分からないよ。NPCの結果次第なんだから」
「ぐぬぬぬぬ……」
「お次は私ですね」
男のNPCがそう言ってサイコロを振る。2回振り直した挙句、結果の出目は4.6.4だった。
――つまり、俺の一人負けである。
「やっぱ負けじゃねぇか!」
「三倍もーらいっ! はいお疲れー」
「や、やったあ。二倍になって帰ってきたぁ」
その後、フィールドを変え、スロットやらポーカーやら色々試した結果、俺とヒナウェーブが負け、ウキワがちょい勝ちで閉幕となった。
「だから、却下って言ったのになー。誰かさんのせいで無駄な時間を消費しただけじゃん」
「それは結果論だろ?」
「はいはい、負け犬の遠吠えは辞めてよね」
「でも、初めてやってみたけど楽しかったなぁ」
「あーあ、ギャンブル脳になっちゃったよ。誰かさんのせいで」
「いや、ウェブはギャンブラーだろ。元々素質はあったぞ」
「なわけないでしょ」
「んー分かんないや」
金は消えたものの、なんやかんや楽しんだ俺たちは、店を出た。
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