第25話 守護霊ラルメロ

「まさか、あんなにうまく行くとはねぇ……正直、絶対死ぬと思ってた」


「言っとくけど、それはこっちのセリフでもあるからな」


「ま、まあ……勝ちは勝ちだし、結果オーライってことで」


 湖から上がり、陸地で談笑していると、リザルトが現れる。


《シークレットクエスト ラドリー博士の試練をクリアしました》

《ドロップアイテム 毒牙鮫の牙》

《ドロップアイテム 毒牙鮫の鱗》

《報酬 賞金3万》


 賞金3万……


 ドロップアイテムよりも、神々しい輝きを放つ、賞金に目が眩む。


 ようやく、実感が湧き、リザルトを閉じることなく、釘付けになり見つめていると、


「ねぇ……あれ何?」


「あ、え……ん?」


 ヒナウェーブが指を差す方向は、湖だった。目を細めて見てみると、不透明な動物(?)が水面に立っている。


 ――すると、その動物は四足歩行で駆け出す。


「こっちに来る……」


「クエストはクリア……したんだよな?」


「そうだけど……撃ってみる?」


 フィールドに、緊張感が走る。


 敵なのかそれとも――。


「いや、ちょっとまて……あれ、もしかして猫じゃね!?」


 半透明な動物は、近づいてくるにつれて、容姿がしっかりと視認できるようになる。柔らかな耳に、丸い目、特徴的な口。まぎれもなく猫でしかない。


「でも、攻撃してくるんじゃ……」


「耳を見ればわかる。あいつは飛び込みに来てるってな」


 そう言い切れるのは、俺が家で猫を飼っているからである。


「えっ……」


 俺の胸元に飛びついてきた猫は、触れることが出来なかった。それどころが、貫通したのだ。直ぐに後ろを振り向くと、猫の姿は消えていた。


「体の中に入っていった……」


 横で見ていたヒナウェーブは目を丸くして言った。


「どういうことだよ……」


 訳の分からない状況に頭を抱えていると、


「僕はラルメロだぜい! よろしく頼むぜい!」


 俺の体からもう一度姿を現し、割と可愛い声を猫は発した。


「よろしく……ってこの語尾、何処かで聞いた覚えが……」


「確か、シーロのNPCが言ってて、掲示板で話題になったやつね。結局、バグだったみたいで、直ぐに修正されたみたいよ」


「てことはもしかして……」


「僕の人工知能が、そのNPCと入れ替わってたんだぜい」


 なんだそりゃ。奇跡と言うべきなのか否か。


「で、この猫、結局なんなの……」


「ぬふふ……僕は守護霊だぜい?」


「ぬぉぉおおお! マジか!」


 俺は、いきなり叫ぶ。


「なになに、急に……」


 ヒナウェーブは、呆れたように呟く。


「守護霊欄にラルメロの名前が入ってるうううぅ」


「ぬふふ……本当だぜい」


 ラルメロは得意げに言う。クソ――コイツ、あのおっさんなんかより、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか……。


「くぅー、触らせろッ!」


 いくら、もしゃもしゃ手を動かそうとも、触れることは出来なかった。


「僕は一度死んでるからだぜい」


 そう言われてもなお、俺は、諦めきれない。


「にゃァァァ……やっぱ、ダメか……」


「なんで一瞬猫になったのよ」


 ヒナウェーブがツッコミを入れる。


「まあいいや。これからよろしくな」


「はいだぜ!」




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