第17話 ラドリー博士

バウクロにはクエスト毎にレアリティが存在する。


下から『ノーマルクエスト』、『レアクエスト』、『スペシャルクエスト』『レジェンドクエスト』『グランドクエスト』の系5つである。


等級が高ければ高いほど、報酬が豪華になるとかならないとか。


そんな中、俺らが発見したのは『シークレットクエスト』というものであった。


「私たちが死ななかったのは、シークレットクエストのフラグだったって訳ね」


「ぬぉぉぉ! ウェブ、よく見ろ! 報酬賞金じゃねぇか!」


「ほんとだ。Gじゃなくて賞金3万って書いてある……って興奮しすぎでしょ!」


「いや、だって賞金だぜ? そりゃぶち上がるに決まってんだろ」


「まあ、そうだけどさあ」


俺とは裏腹に、ヒナウェーブは、やけに落ち着いていた。


世界大会で350万を獲得した彼女にとっては、こんな金額、ちっぽけなものでしかないのだろう。その気持ちはよく分かるよウェブ。


「で、やるよな?」


「やらない選択肢なんてないでしょ。私も賞金を狙いに来てるんだから」


意気揚々と話すヒナウェーブ。まあ、賞金付きゲームだからそりゃそうか。


《シークレットクエスト【ラドリー博士の試練】を開始しました》


すると、直ぐに異変を感じた。


「ねぇなんか動いてない?」


「地震か?」


地面がゴゴゴゴ……と振動する。すると、正方形のように足場がくり抜かれ、エレベーターのように降下していく。


しばらく待つと、目の前に重厚感のある鉄の扉が待ち受けていた。俺が先導してドアノブを捻り、押す。以外にも、軽い扉だった。


「洞窟の地下にこんな施設があったなんて……」


辺り一面は雪のように真っ白な壁で覆われている。それに、洞窟内と比べて天井が馬鹿高い。クエスト名から察するに、ここは研究所的な場所なのだろうか。


――すると。


「君たちが、ワシの研究に協力してくれる人間ですかい?」


「――ッ!」


俺とヒナウェーブはピタッと足を止めた。驚きで、一切声が出なかった。というもの、ここは一方通行になっているため、背後に人がいるのはありえないからである。


恐る恐る声のした後方を振り向くと、白衣を着た白髪の老人ただ一人。身長160cm程だろうか。いかにもザ・博士といった印象だ。


「ま、まあそうですね」


俺より先に、ヒナウェーブが答える。


「では、君たちついてきなさい」


手を腰の辺りまでまわし、先へ進む謎の老人。言われた通り、着いていく。


「なんか……幻想的……」


「まるで、水族館の上位互換だな」


俺たちは、円形のとてつもなく広い空間に案内された。壁、天井、床、全てがガラス張りになっており、海に飲み込まれたかのような感覚を覚える。


「ワシはラドリーじゃ。博士としてここで研究を進めておる」


もちろん知ってる。こちとらクエスト名でネタバレ食らってんだよなぁ。


「で、ここは?」


「洞窟の地下にある地底湖の中心部じゃよ」


「でも魚とか全く見当たらないですけど……」


ガラス張りの地面に目線を移しながらヒナウェーブは言った。


すると、博士の顔が曇る。


「かつて、この湖には多くの生物が生息しておった。突如消えたんじゃよ……なんの前触れもなくな。今やこの湖はただの抜け殻という訳じゃ」


「では、その原因を解明すべく研究されてると?」


「ああ、お主の言う通りじゃ」


「それが不可解だから研究してるってのは分かるんだけどさ。もしかして何かまずいことになったりとか……」


「ちょっと……不吉なこと言わないでよ」


ヒナウェーブは、声を震わせる。


「いや、ちょっとした冗談……」


「詳しく説明しよう」


博士の表情がコロッと変わった。


何やら嫌な予感がする……。






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