第4話 楽々戦闘

 気がつけば、俺は海岸の砂浜に立っていた。海の波打つ音が鮮明に聞こえる。それに、潮の香りもする。


「すげぇなこのゲーム……」


 グラフィック、音、匂い、そして敵MOBのモーション。どれを取っても一級品である。正直、ここまでのクオリティだとは、思ってもいなかった。


『チュートリアル 血炎島からの脱出をクリアしました』


 突然、ウィンドウとは違う大きな画面が出てきて、そう告げられた。報酬は特に何も無かった。


「何がチュートリアルだよ……どう考えてもホラゲーだろ」


 思わず率直な感想が漏れ出る。


 ひとまず、落ち着いたことだしステータスを確認しようか。


 ―――――――――――――

【プレイヤーネーム】ルア

 Lv.1

【職業】サムライ

【所持金】0G


【HP】 50/50

【MP】 10

【ATK】30

【DEF】 5

【ST】 20

【DEX】15

【AGI】30

【CRI】10

【LUK】 10


 守護霊:無し


 スキル

 ・ムーンスラッシュ

 ・スピードブースト


【装備】

 右手 日本刀

 左手 無し

 頭 猫の仮面(黒)

 胴 ロングコート(赤)

 腰 無し

 足 無し


【アクセサリー】

 ・なし


 ―――――――――――――――

「あれ、俺の刀、粉砕されたんじゃなかったっけ……?」


 骨狼スケルトンウルフに噛みちぎられ、消滅した刀は、確かに、インベントリに残っていた。チュートリアルと言うだけあってそこは、運営の良心なのだろう。運営にも人の心があって良かった、うん。


 続いて、実数値を確認する。


「ふむ……」


 防御力がだいぶ終わってはいるが、当たんなきゃいいだけの話だ。そこは攻撃力で補うしよう。攻撃は最大の防御って言うしな。


 一通りステータスを確認していると、一つの項目に目が止まった。


「なになに……守護霊? NPCを仲間にできる的な?」


 ステータス画面からガイドを開いて、詳しい説明が載っているか確認したところ、守護霊の情報は何もなかった。もしかすると、特殊な条件で入手できるとか――なのかもしれない。


 ちょうどガイドを開いたので、必要そうな情報を頭に入れる。そして、やるべきことを定める。


「まずは、レベル上げってとこか……よーし敵MOB探すか」


賞金はクエスト報酬だったり、運営の公式イベントだったりと様々な方法で入手できるらしい。また、エリアを進めば進むほど敵の強さも上がっていくとの事だ。


そのためのレベル上げである。サルでもわかる単純なことだ。


 海岸を抜けると、草原が辺り一面広がっていた。太陽の日差しを浴びて黄金色に輝く草木が美しい。


 マップには、【豊潤の草原】と記されていた。草原の中心地には街があるようだ。そこを抜けると、新しいエリアに行けるらしい。


「ガルルルッッッ」


「おっ!出たな」


 適当に草原を散策していると、エンカウントしたのは、ウルフだった。


 当たり前ではあるが、骨ではなく毛並みの整った普通の狼である。それに、今回はLv1。さっきのチュートリアル(ホラゲー)とはまるで安心感が違う。


「ガルルルッッッ!」


 ウルフは牙を自慢げにむき出すと、後ろ足を蹴り上げ、俺に噛み付こうとしてきた。


「行動パターンはもう分かってんだよ」


 狼と言うだけあり、血炎島の骨狼スケルトンウルフと同じモーションが使われていることを確信した俺は、上体を逸らしつつ、脇腹を狙い刀を振るう。


「ガルッ!」


 すると、狼は赤いエフェクトと共に体が分断され、地に転げ落ちた。そして、じわじわと傷口から体が消え、蒸発するかの如く絶命した。どうやら一撃だったようだ。


 チュートリアルの時から思っていたことだが、この黒を基調とした赤いコート――めっちゃ動きやすい。それに、猫の仮面も邪魔にならない。仮想空間だから――なのかもしれないな。


「おっ……」


《Lv1⇒Lv2》

《ドロップアイテム:狼の毛皮》

《ドロップアイテム:狼の肉》

《10G獲得》


 倒した直後、リザルト画面がウィンドウに表示された。


「10Gか……結構しょぼいな……まあ、最初はそんなもんか」


 Gは自動で手元に入るらしい。しかし、ドロップアイテムはその場に落ちるようだ。ためしに拾い上げると、アイテムは消え、インベントリに格納された。


 ・狼の毛皮

 皮装備に加工が可能。


 ・狼の肉

 焼くことで、食べることが出来る。


 今一番必要なのはGである。というのも、レベルが上がる事にステータスポイントを5ポイント獲得することができ、そのポイントを振るためにはGが必要になるからだ。


 ◆◇◆◇◆


 暫く、無心でモンスターを狩り続けた。


 一時間ほど狩って分かった事は「豊潤の草原」では狼、鳥、ゴブリンしか湧かないということ。もう一つは、このエリアに湧くモンスターは10Gしか落とさないことである。


 そのため、今持っている所持金で何体倒したか把握できる。ちなみに全財産は1200G。つまり120体倒したということになる。


正直、こんなに倒すつもりはなかった。ついつい無我夢中になってしまったのだ。


「街に行って、売りに行くか」


 狩りすぎて、インベントリがカツカツになってきたのと、レベルが上がりにくくなってきたので、ドロップアイテムを売りに街へ行こうと思う。


 ――さあ、金だ金ぇ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る