第98話 オッサン齢53歳にして二次遭難にあう。

 笹かまと2人でHランクダンジョンに入る。


「なんか懐かしい気分だな」

「そっすねぇ、そういえばここってイレギュラー入って来てなかったんじゃないっすかね?」


「そういえばそうだな、ここだけ自然発生の氾濫だったのかな?」

「なんとも言えないっすねぇ、氾濫自体は起こる時は起きるんで」


「順番からいったら、未確認ダンジョンが最初の氾濫なんだろ?」

「だと思うっす、氾濫したモンスターは全てイレギュラーの経験値になったから表に出なかっただけで」


「あのイレギュラーは氾濫起こす能力持ってたよな、ここだけ自然発生ってのもなんかしっくり来ないな」

「あー、俺たちが来た時はまだ、マザーの発生はしてなかったっすね。

 氾濫兆候出てからマザー発生するまでって結構時間かかるっすから特におかしいと思わなかったんすけど…言われてみれば、なんか不自然っすね」


「人間の協力者いたんだろ?そいつが何かしたとか無いか?」

「えー、何かするにしたって、最下層まで行かないと出来ないっすよ、それなりに実力ないと無理っすよ」

 …

 …

 …

「あ!」

「どうしたんすか?」


 ー 「出来れば穏便に済ませたかったがな」

『残念ながらそれは無理な話だな、我らは自分より強いものの話しか聞かぬからな』 ー


「あのイレギュラーがはっきり言ったんだ!自分より強いものの話しか聞かないって」


「…ババァはあれを屈服させるほど強くないっす」


「あのイレギュラーを屈服させるだけの実力者が犯人か、ババァの協力者のどっちかだって事だな」


「しかも、その人間は女っす」


「嫌な予感しかしないな!急ぐぞ」


「あ、それは無理っす、剣崎さんのペースで行くっす」


「あ、う、うん…すまん」


 下へと向かって降りて行くと、15階ほど降りたところで人影が現れる。


「1、2、3…7人、味方だと思うか?」

「あり得ないっすね」

「だよな」


 どいつもこいつも、見たことのある奴だ。

 もう一線越えようかな…。


「てつー!悪い事は言わねぇ俺らの下に入れ!俺が特別にとりなしてやるからよう!」

 お前はどこ目線なんだ?


「悪いが無理だな、それよりなんで3バカはそこに居るんだ?クラン解消した記憶無いんだがな?」


 3バカがビクッと身体をすくませる。


「俺が裏から手を回したからなぁ!こいつらはもう俺の傘下だぁ!」


「めんどくせぇ」

 思わず本音が出た。


 あいつらとの会話中も歩みを止めずにゲートに近づいて行く。


「要するにお前らは敵って事でいいのか?」


「俺たちは敵対したいわけじゃ無いんだ!こうしないと許さないって脅されて…」

「バカ!やめろ!」

 3バカの1人が言い訳をしてくるが、それを別の3バカがやめさせる。


 やりづらいなぁ。


「お前らは敵でいいんだよな?」

 中田の方を向いて聞いた。


「だから敵とかじゃなくて、俺の傘下に入れって!特別な俺のルートで悪いようにしねぇからよ!」

 こっちはこっちで日本語が通じてないようだ。


 とりあえず無視してゲート潜ろう。

 相手している時間が無駄だなこれ。


「おい!勝手にゲート潜るな!お前ら!力ずくで止めろ!」

 中田のその言葉で一斉に襲いかかってくる。


 ドゴォォンという音とともに襲いかかって来た奴らが全員吹っ飛ぶ。


「お前ら、俺がこれ持ってるの知ってるだろ…」

 若干呆れながら周りを見まわす。


 破砕の盾だ、3バカはこれを思いっきり食らってるはずなんだからタイミングズラすとか距離空けるとかすればいいのに。


 同じタイミングで密集してくるのはこっちにすれば都合良いけどな。


「フゲボォラァァ」

 笹かまが、中田にさりげなく近づいて回し蹴りをかました。


「俺的にはこのまま殺しても良いんすけどねぇ」


「1番の敵は無能な味方って言うし、生き残らせておけば何か役に立つかもだから」

 どうしても、殺すという一線が越えられない俺は殺さないで良い理由を探してしまうな。

 自覚はあるんだよ、自覚は。


「まぁ、そういう事にしておくっす」


 バカどもが動けないウチに地下へと進む。


 そのまま最下層手前の39階まで特に問題なく進めた。


「ここから先は1歩も通さない!」

 仁王立ちする小柄な女性と、大量の雑多なモンスターたち。

 村重さんだ。


 こうなる事は薄々気づいていたが、実際目の前に現れるとちょっと怯むな。


「まさか、こんな形で心配だった事が現実化するとはなぁ」

「新興宗教に洗脳されるのと変わらないっすね」


「お姉さまに誰も通してはいけないって言われてます!帰ってください!」


「でも、韋駄天と烈火は通ったんだろ?」

「今、韋駄天さんをお姉さまが説得中です!それが終わるまで待ってください!」


「1度は一緒に戦った仲間だから、君のモンスター達を殺したくないんだ。

 そこをどいてくれないか?」

「出来ません!」


 俺は大きなため息を吐いた。


「君が使役してるモンスター達は強い、強すぎるんだ。

 死なないように手加減して戦える相手じゃないんだ。

 このまま戦えば殲滅しなければならない、それでもやるのか?」


「私の子たちは負けません!」


 村重さんのモンスター達が一斉に襲ってくる。

 俺はスーパーアーマー発動させながら、モンスターなら殺せる自分が偽善者すぎて嫌になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る