第97話 オッサン齢53歳にして生還する。
イレギュラーが視界から消えると、魅夢がヘロヘロな状態で俺の所に戻ってくる。
「預かったパワーは返すね」
俺に力が戻ってくる。
「身体は大丈か?」
「うん!でも、ロザリオにあった私のパワー、身体を修復する為と一時的に出力上げるのに使っちゃったから、又なんにも出来なくなっちゃった」
「良いんだよ、ゆっくり強くなれば良いさ。
俺ももっと強くなってお前を守れるように頑張るから、一緒に頑張ろうな」
「うん!」
「みぃちゃぁぁん」
「ぐはぁ!」
凄い勢いで千紗が駆け寄ってきた。
そして、そのまま俺ごと抱きしめるんだが、ほぼタックルだ。
「大丈夫?ごめんね!ごめんね!」
号泣する千紗を初めて見たかもしれない。
しばらく落ちつくのを待って、本部に報告しにいく。
俺はなんか見落としている気がする。
なんだろうな?
「絶対ババァなんすよ!篠塚さん!頼むっす!調べて欲しいっす!」
「どうやって調べるんだよ!証拠なんかどこにも無いだろうが!」
「連れてきてシバキあげれば白状するっすよ」
「そんな事会長が許すわけないだろ?
彼女は会長にとって姉であり、母である存在なんだ」
「あいつの家族愛異常っすからね、でも今回は絶対ババァなんすよ黒幕」
「だとして証拠はどこにある?お前の思い込みでしかないだろ?」
「ババァを未確認ダンジョン連れて行ってイレギュラーに見せれば1発っす」
「なんで大人しく帰って行ったイレギュラーを刺激するような真似しないといけないんだよ!」
「犯人がそれでわかるっすよ」
「今は氾濫の鎮静が先だろ!」
「鎮静してからじゃ遅いんすよ、余計証拠見つからないじゃ無いっすか!」
「証拠見つけてから動け!証拠ないのに動いてどうするんだ!」
「だからぁ!証拠見つけるために動くんじゃないっすかぁ!」
「笹かま、堂々巡りになってるぞ、万が一別の人だったりどうするんだ?」
「そんな事ないっす!絶対ババァっす!」
「最終的な黒幕はババァかもしれないが、実行犯は別にいるかもしれなだろう?
そうしたらイレギュラーの前に連れて行っても、こいつじゃ無いって言われるんじゃないか?」
「…あ!」
「な?」
「確かに、あのババァなら他の奴らを使ってる可能性あるっすね。
自分で動こうとしないかもしれない」
「もう少し情報集めた方がよくないか?」
「そうっすね」
笹かまが落ち着いた所でテントに帰る。
なんだろう、やっぱり何か見落としいる気がしてならない、気のせいなのだろうか?
「あ!剣崎さん!」
村重さんだ。
「おつかれ、順調そうだね」
「はい!ありがとうございます。
それで、相談なんですが…」
「なんだい?」
「氷妃さんに誘われたんで向こうのパーティ入って良いですか?」
「正式にうちのパーティってわけじゃ無いからね、うん問題ないよ…無いよな?」
途中で心配になって笹かまに聞いた。
「特に問題ないっすよ、ちょっと今言うのはあれなんで、少し時間置いてから伝えておくっす」
ー翌日ー
討伐任務が一応終わったので、そのまま制圧任務に組み込まれた。
万が一イレギュラーが又ダンジョンから出てきた時に、対応出来るだけの戦力を残したいという意見でこうなった。
攻略部隊も今回はHランクダンジョンの攻略なのでと氷妃パーティのみになり他のメンバーは制圧に組み込まれる。
村重さんはすでに氷妃パーティなのでダンジョンアタックだ。
ーその夜ー
「氷妃のパーティが戻ってきてないっす」
「又、何か出たのか?」
「分からないっすけど、明日1日待って戻って来なかったら、捜索隊組まれるっす」
「氷妃も災難だな、おかしなダンジョンばかり当たって」
「ほんとっすよね」
ー翌日夜ー
「やっぱり氷妃パーティ帰ってきてないみたいっす」
「救援部隊組まれるみたいっすね」
「うちも行くのか?」
「いや、韋駄天パーティと烈火っすね、Hランクダンジョンっすし無理そうなら退却するって話になってるし、それも無理なら韋駄天だけ離脱して報告に来る事になってるっす」
「うちは今回行かなくていいんだ」
「ちょっと実績上げすぎたっす。
他のメンバーが実績上げるのに焦って来てるみたいで、うちはハブられたっすね」
「うーん、頑張りすぎたって事かぁ」
「そっすねぇ、韋駄天とか割と空気だったすしねぇ」
ーさらに翌日ー
「韋駄天も戻ってきてないらしいっす」
「おいおい、一体何があった?」
「分からないっす、上層部も焦ってるっす」
「俺らは何かやるのか?」
「俺、剣崎さんの2人だけで強行偵察して欲しいらしいっす」
「随分人数絞ったな」
「余計な人いれて足手まといになる危険性を極力減らしたかったんだと思うっす」
「千紗もダメなのか?」
「ぶっちゃけ、逢真さんに関しては、剣崎さんが死んだら自分たちが確保出来るので、剣崎さんが生きてても死んでてもどっちでも得になる処置っすね」
「…なんだろう、途端にやる気が失せたんだが」
「協会なんてそんなもんす、生きて帰ってくればなんの問題もないんで、サクッと潜って、サクッと帰ってくるっすよ」
「そうだな」
その後、何を見落としていたかに気づくのだが、その時はすでに手遅れだった。
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