第95話 オッサン齢53歳にして討伐に向かう。

 今後の体制として、討伐隊、攻略隊、制圧隊に分かれることが決まった。


 討伐隊は少数精鋭とのことで、俺、笹かま、千紗、烈火で構成されるらしい。

 任務はイレギュラー体の捜索及び討伐。

 発見されない間は制圧部隊と合流して制圧任務を行う。


 攻略隊は、韋駄天のパーティと氷妃パーティ、唐辛子、佐々木、高橋、村重さんの構成になる。

 ダンジョンを攻略して氾濫の根本を止める任務だ。


 制圧隊はそれ以外の参加者全員で地上に溢れ出しているモンスターの制圧任務を行う。

 また、イレギュラーを発見した場合には速やかに報告し討伐隊を要請するようにも言われている。


 この割り振りに沿って各自担当箇所で任務に当たる。


「剣崎さん、ちょっと疑問に思った事あるんすけど」


「なんだ?」


「マネンドってあれだけ話せるなら、剣崎さんのスキルでもテイム出来るじゃないっすか、何か考えがあって村重さんにしたんすか?」


「あ…」


「もしかして気づいて無かったんすか?」


「良いんだよ!ウチにはミーが居るし!なぁ!」

 そう言って魅夢を撫でる。


「うん!」


 俺の首周りに抱きついて一緒に移動するのが日常の風景になった魅夢が元気よく返事をする。


「そういえば、剣崎さんって他の探索者や自衛官からなんて呼ばれてるか知ってるっすか?」


「いや、知らないけど」


「幸せ3世代っすよ、あそこだけ家族団欒に見えるってもっぱらの評判っす」


「3世代?なんだ、それって俺がおじいちゃんって事じゃないか」


「年齢差的にそんなもんじゃないっすか」


「流石にそれは酷くないか?」


「なに言ってるんすか、もっと自分が年寄りだって自覚した方がいいっすよ。

 オッサンオブオッサンなんすから」


「なんだその、オッサンオブオッサンって?」


「なんとなくっす」


 その後数日はイレギュラーは見つからなかった、それでも制圧任務で氾濫モンスターの範囲は徐々に狭まってきた。


「探索者のグループが壊滅したっす。

 イレギュラー見つけたんすけど、自分らで倒そうとして返り討ちにあったっす」


「なぜそんな無茶を?」


「そのグループは前回のダンジョンアタックで1箇所任されていたパーティっすね。

 一応100階到達経験はあったみたいっすけど、攻略しきれなくて撤退してるっす。

 今回はなんとか名誉挽回したかっただと思うっす」


「実力もプライドもある奴らだったんだろうな」


「野心もあったんだと思うっす、あ、それで、明日はその壊滅した辺りの捜索っす」


「そうか、分かった」

 明日は決戦になるかもしれない。

 そう思うとなかなか寝付けなかった。


 ー翌日ー

「生き残りのメンバーから何か情報はあったのか?」

 前日の接敵場所に向かいつつ俺は笹かまと雑談をしていた。


「鹿みたいってのと、強かったって事くらいっすね。

 問答無用で襲いかかって返り討ちらしいっすから」


「相手の手の内は分からずじまいか…」

「光ったらやられていたって言ってたらしいっす」


「光ったら注意だな」

「なにを注意したら良いか分からないっすけど、なんかはされるっすね」


 結局この日はイレギュラーは見つからなかった。


「おつかれ様です!剣崎さん新しい仲間の紹介です!」

 村重さんが嬉々としてなにやら近づいて来た。


「お、おう」


 既に視界に入ってるんだけど…なんだこの違和感!


「琉球燕の燕龍飛さんです」

 中型犬サイズのツバメが目の前にいるんだけど、なんかムキムキじゃない?


「竜ついてないじゃないっすか!」


「琉球を龍宮って表現する説あるじゃないですか!」

 いや知らない。


「このダンジョンではその説が採用されてて、龍宮燕になってたんです!」

 もはや、何でもありだな。


「何にせよ空中戦出来るものが増えるのはいい事だな」

 味方が増えてるんだから喜ばしい事だな。


「はい!」

 挨拶も済んだので村重さんと別れてテントに向かう。


 笹かまが早歩きで近づいて来た。


「剣崎さん、篠塚さんから伝言っす」


「ん?何だ?」


「村重のコントロールはお前に任せた!だそうっす」

「うわ、何だそれ」


「村重さんが率いるモンスターがそろそろ一個連隊に匹敵しそうっす」

「何となくそんな気がしてた」


「特に問題なのが、一般的なテイマーにある上限が見当たらないっす」

「そうだよな、なんか戦闘するたびに増えてるもんな」


「あと、リーダーテイムしたからその部下もテイム扱いとかも聞いた事ないっす」


「アレどういう原理なんだ?」

「全く分からないっす」


「で、なにをコントロールすれば良いんだ?」

「おかしな奴にのせられてバカな事しないようにっす」


「あ、あー素直だもんね、あの子」

「変な新興宗教とか組織に唆されたら、即アウトっすよ」


「一応分かったけど、お前も手伝えよ」

「それは最初からそう思ってたから大丈夫っすよ」


「でも、まあ、しばらくは氷妃のところだし、その後からだな」

「まぁ、そうっすね、今はイレギュラーなんとかしなきゃっすね」


 明日こそ見つけて解決したい。

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