第91話 オッサン齢53歳にしてヒーローを見る。

 韋駄天を無事救出して、1日体力回復に充てたらすぐに氷妃のダンジョンに向かう事となった。


「あ、剣崎さん!アスパラ隊に変化がありました!」

 村重さんと顔を合わせると、そう報告してくれた。


「もう育ったの早いな!」


「あ、いや、補充はまだなんですが、特殊個体への変化はしたので、その子達だけ見せれますよ、見ます?」


「ああ頼む、やはり属性特化型のアスパラになったのか?」


「んーそんな感じです」

 畑の方に向ったが見当たらない。


「どこに居るんだ?」


「あ、今呼びますね!

 アスパラーレッド!」

 赤いアスパラがシュタッて擬音が聞こえそうな動きでポーズを決めた。


 アスパラなんだが…ベルトのような線と赤いフォルムに黒いサングラス風の模様。

 …うん嫌な予感がする。


「アスパラブルー!アスパラーイエロー!アスパラグリーン」

 村重さんのかけ声を聞いて、グリーンアスパラじゃないんだなと、少し現実逃避した。


「4人合わせてアスパラ戦隊シンセンジャー!」

 ご当地ヒーローにいそうだな。


「村重さんて戦隊モノ大好き?」

「はい!大好きです!」


「もしかして、武将無双シリーズ好きじゃなかった?」

「はい!大好きでした!」


「関羽使ってた?」

「どうして分かるんですか!?」

 あぁ、なるほどねぇ。

 パーソナルクラス恐るべし!


「あーそっか、ドキ子環境適応ってあれか、MTフィールドか。

 村重さんのモンスターって村重さんの趣味嗜好に物凄く引っ張られるみたいだね」


「そうなんですか?」


「うん、あーそうだ、これベルゼブブが落とした属性石なんだけど、堕天使は闇属性らしいんだよね、これ埋めたらブラックも出てくるんじゃない?

 やっぱり戦隊モノは5人欲しいでしょ?」


「はい!ありがとうございます!早速埋めてきます!」

 走り去る村重さんを俺は生暖かい目で見つめていた。


「あの子だけで、ヒーローショー出来るな…」


 ー翌日ー

 氷妃の救出メンバーが俺、笹かま、韋駄天、烈火、千紗が選出された。


 氷妃が梃子摺る相手という事でメンバーを厳選するということになり、最初は千紗もはずされていたが、天網恢々の優位性から編入された。


 そしてダンジョンに突入したのだが、2階から既に異変が起こって居た。


「まずいっす、踊り場現象っす」

「踊り場?どうまずいんだ?」


 確かに通常と違うゲートの階段を降りて2階に着くとそこは10m四方の踊り場のような場所になって居た。

 もちろんモンスターもいない。


「ここの分の強さが下に繰り越すっす。

 10階、20階位なら氷妃ならものともしないっすけど、これがずっと続いてると、加速度的に強さ上がるっすから…」


 とりあえず下に降りることになった。


「これで、2階と3階のパワーが4階に行ってるの確定っす。

 この調子で下に行けば行くほどモンスターが強化されるっす」


 50階まで降りる。

 踊り場現象はまだ続いている。


「ヤバくないか?」

「ヤバいなんてもんじゃないっす」


「どうするんだ?1度撤退するか?」

 烈火が意見を求めて来た。


「戻ったところで何も出来んぞ?

 今ここに居るメンバーが事実上の最高戦力だ、手遅れになる前に氷妃と合流した方がまだマシじゃねぇか?」

 韋駄天の言葉ももっともだ。


「進んだ方は良さそうだな」

「とりあえず、氷妃と合流するまでは降りるで良いっすか?」

 全員がコクリと頷く。


 75階に降りた時に突然視界が広がった。


 一面の銀世界だ。


「あそこ!」

 千紗が指をさした方向にはかなり遠いが巨人と戦う者達が見えた。


「フロストジャイアントっす!」

「違う!あれは上位種のヨトゥンだ!」

 笹かまの言葉を烈火が否定する。


「先にいかせてもらうぞ!」

 韋駄天が一気にかけて行った。


 他の者たちも後に続く。


 俺も必死に移動するが、膝下くらいまで雪がある。

 しかもダンジョンの効果らしく、踏み固められているはずの足跡が全くない。


 先に通った人がいるのに目の前は新雪状態だ。

 ただでさえ遅い移動がより一層遅くなる。


 俺が辿りついた時はかなり混戦状態だった。

 氷妃のパーティはサブアタッカーのはずの重戦士が大剣を盾がわりにタンクをして居た。


 本来のタンクは重傷らしく、後方でヒーラーらしき人に治療を受けている。


 氷妃は得意属性に氷系は効かないと判断したらしく雷属性で戦っている。


 他のメンバーは攻撃が集中しないように散開して攻撃して居た。


 千紗も弱点属性に火属性で攻撃してるが、あまり効いてる感じではない。


 上位種の巨人に74階分のパワーが込められているのが、どれほど強いか痛感させられた。


 なんとか、俺も近づき攻撃態勢に入る。


 シールドバッシュ!


 よし!決まった!


 そう思った瞬間もの凄い勢いで吹っ飛ばされた。


「鉄也さん!」

 千紗が叫ぶ。


 まずい、油断した。

 装備の効果で倒せない相手がいなかったせいで、シールドバッシュが決まれば勝ちと勝手に思い込んでいた。


 大ダメージを与える技で確殺する技じゃないのに。


「きゃぁ!」

 千紗が俺に気を取られたせいで、巨人の攻撃を避けきれなかった。


 油断した自分が許せない、千紗を攻撃した巨人を許せない、こんな状況のダンジョンが許せない。


『堪忍袋に緒を切りますか?』

 yes


「オルァァァァ!」

 巨人に一気に近づきメッタ打ちにする。


 もう、装備の効果とか関係ない、怒りに任せて巨人を攻撃した。


 巨人が霧のように消えていく。


「千紗ぁぁぁ!」

 慌てて彼女のいる方向に向かっていく。


「大丈夫ですよ、私だってこれくらいは耐えられます!」

「良かった!」


 そう言って力いっぱい千紗を抱きした。


「鉄也さん苦しい!ちょっと!ちょっと!ライトニングブリッツ」

「ギャァァァ!痺れるー!」

 銀世界に俺の叫びが鳴り響いた。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

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 よろしくお願いします。

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