第90話 オッサン齢53歳にして堕天使と戦う。

「そういえばちょっと疑問だった事があるんだが」

「なんすか?」


「ドラゴンや精霊って1体しかいないのに経験値多くないか?

 ボスでも雑魚でも1体は1体だろ?」

「あー、ボスと雑魚で経験値が同じっすけど、多分剣崎さんの認識ちょっと間違ってるっす」


「え?だってボスでも雑魚でも経験値一緒なんだろ?1体は1体だ?」


「経験値って、うちらが強くなる何かじゃないっすか、それってフロア毎にあるわけで

 1フロアに100あったとしても、そこに100体モンスターいたら、均等に1づつ振り分けられるっす。

 でも、1体しかいなかったら、その1体に100振られるんで、雑な言い方になるっすけど1体しか居ないフロアはあれ1体で100体分って感じっすね」


「え!じゃあ数多いフロアより数少ないフロアの方が経験値効率いいのか?」

「経験値だけで言えばそうっすよ、魔石やドロップ品無視出来るなら」


「なるほどな」


「で、地味にこれってリポップにも絡んできていて、その経験値になる何かが充填されたモンスターから順番にリポップしてくるっす。

 なんで1体しか居ない奴は100体分充填し切らないとリポップしないっす」


「てことは、1体しか居ないフロアのモンスターは100体のモンスターが居るフロアよりリポップする時間が100倍遅いって事か」


「基本的にはそうっすね、なんか色々条件があるみたいっすけど」


「へぇ、じゃあここは1体しか居なさそうだからリポップするまでの期間が長いと」

「そうっす、だから多分ゲート付近までいっても居ないっすよ」

 …

 …

 …

「居るじゃねぇか」

「あっれぇ?

 あー韋駄天がめっちゃ早いタイミングで倒したんすよ!」


 ゲート付近には

 炎の帯を額に巻き頭には大きな角が二本、足はアヒル、尻尾は獅子、全身が真っ黒で『ゾディアコ・ヴィテ』と言う本まんまの姿のものが居た。


「ベルゼブブっすね」

「ハエの姿じゃない方なんだな」


「火吐いて、豹になる方っすね」


「火属性無効持ってるから、悪いが私は役立たずだな」

 烈火はその名の通り火属性特化の探索者だった。


「弱点属性とかないよな」

「堕天使はないっすね、全般的な特徴っすけど防御と攻撃力が高くてゴリゴリの正攻法で戦わないとならないイメージっす」


「それはつまり」

「剣崎さんとは相性バッチリっすね」


 俺はベルゼブブに近づいていく。

 いくら相性が良いからといって迂闊な行動をすればやられるのはこっちだ。


 慎重に近づいた。


 ベルゼブブが俺に気づいた。

 ジーっと見つめてくるがまだ動かない。


 緊張感に包まれながらジリジリと近づいた。


 相手が息を吸うようなモーションをした。

 おそらく火を吐くつもりなんだろう。


 俺の足じゃ制限時間内にたどり着けるか不安だが、ここしか無い!


 HP1500消費、スーパーアーマー発動!


 相手が吐いてきた火の中を突進する。


「うをわちゃぁぁ!」

 ダメージは無いけど、普通に熱いんだけど!


 状態異常のブレスの時は気づかなかった事が、ここに来て思い知らされた。


 ダメージが入らなくても熱いという感覚は軽減されない。

 おそらく、寒いも軽減されないんだろうな。


 だが熱かろうが何だろうが15秒しか時間がない。

 歯を食いしばって突進する。


 相手が炎で倒せないと思ったらしく豹に変化して俺を襲って来た。

 これはむしろ助かる。


 距離取られる相手を追いかけるのが1番苦手だ。

 向かって来てくれるなら臨むところだ!


 メダイストライク!


 俺のオリジナルスキルを放った!


 無事討伐してさらに下に向かう。


 92階、93階はまだリポップしてなかった。


 94階に降りた時に、千砂の天網恢々に反応があった。

「4人居ます!」


「ん?5人パーティと聞いていたが?」

 烈火が疑問をはさんだ。


「…急ごう!」

 俺達は4人のところへ駆け足で向かった。


「あー、逢真さん場所教えて貰ったら俺が先行するっす、剣崎さんの介護よろしくっす」


「はぁ、はぁ、はぁ、誰が介護だ!」

 目的に場所まであと半分を越えたあたりで、笹かまが痺れを切らしてそう提案して来た。


 走るの遅いのと息切れるのは呪いだな、戦闘中は平気なんだし。

 佐々木と高橋に交互に牽引してもらいながら目的地に辿りついた。


「事情聞いたっす、彼が怪我したんでこの階に撤退してきて、ルシファーが追って来ないように韋駄天1人で囮になってるそうっす」


「分かった!急ぐぞ!」


「怪我人も置いていくわけいかないんで連れて行くっす、どっちにしろ急いだら剣崎さん戦力外になるんで通常ペースで行くっすよ」


「…色々すまん」


「それ以上に活躍してるんで大丈夫っすよ」


 95階に降りると、すぐに千紗が天網恢々で韋駄天を見つけてくれる。


「韋駄天!助太刀するぞ!」

「烈火かすまん助かる!」


 大きな黒い羽根と涙型のカイトシールドに片手剣を持った青白い絶世の美青年のモンスター。

 まさにルシファーという相手と韋駄天、烈火が2対1で戦闘を繰り広げていた。


 うちのメンバーもその戦闘に参加する。


 素早い反応と超絶技巧でこちらの攻撃をいなし、牽制をしながら隙あれば攻撃してくる。


 とてつもない相手だ!


 シールドバッシュ!


 そんな戦闘に俺は一切参加せず、相手の視界に入らないように大回りで背後に周り後ろから攻撃を仕掛けた。


 振り返ったルシファーの表情が卑怯者と非難した顔だったと思うのは俺の気のせいかな。


 なんにせよ、韋駄天の救出成功!


【後書き】

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