第87話 オッサン齢53歳にして傍観者になる。
76階の入り口付近で長めの休憩をとった。
「モンスターの気配が全然無いですよここ」
千紗の天網恢恢疎に反応しないって事は相当な範囲にモンスターはいない。
…もう学習した。
こういう時はとんでもない奴が1匹いるパターンだ。
「笹かまこのパターンってあれだよな」
「そっすね、有力候補は偽天使、次点で上位精霊辺りっすかねぇ。
アンデッドなら真っ暗になるって聞いてるっす」
「とりあえず、下に降りるゲートに向かってみるかぁ」
やはりゲート前にはどデカい蛇が何やら竜巻のような渦の中央に居る。
「あー、リヴァイアサンっすね、つーことは上位精霊コースっす」
「特徴は?」
「物理完全無効、水、氷属性の攻撃全部無効、魔法の耐性も高いっす。
弱点属性も無いっすね」
「それはつまり、俺は完全に戦力外ってことか?」
「そうっすね」
ここに来て役立たずかぁ、辛い。
対精霊戦は、プス子の上には高橋が乗る事になった。
スキルの空中戦闘と相性が良い。
完全物理の俺、佐々木、美髯菜、アスパラ隊、撮影隊は見学。
笹かま、千紗、プス子&ドキ子&高橋、の3人(組)で戦う。
魅夢の魅了も低確率だし、効果もあまり期待できないがしないよりマシなので、一応参戦。
物理無効のせいで一気に手数が減った。
時間もかかるし、戦闘してるメンバーの負担も増える。
しかも、これがあと4回もある。
なんとかならないかな。
考えろ、考えろ俺!
…
…
…
あ!
物理無効のアンデッド。
水鉄砲で倒したな。
「撤退だ!1度撤退してくれ!」
幸い、精霊はゲートを守るためかゲートから一定の距離をおくと追ってこない。
「どうしたんすか?」
「思い出したんだが、アンデッドで物理無効の時に水鉄砲で倒したじゃないか」
「あったっすね、でもアレは水属性無効っすよ」
「別の属性でやれば効くんじゃないか?」
「どうするんすか?」
「俺が殴る瞬間、千紗にティンダーかけてもらって俺を燃やす、水に魔力含まれているなら、火にだって少しの間くらいは含まれてるんじゃないか?」
「あー可能性あるっすね!」
「やってみる価値あるよな!」
作戦会議が始まる。
いくつか案が出たが最終的にプス子に俺と千紗が乗って突進、俺が飛び降りて攻撃、タイミング合わせて千紗が魔法を重ねるという事になった。
「よし!プス子、ドキ子、頼むぞ!」
「きゃぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!」
相変わらずのジェットコースター仕様な動きをしながら接近する。
ジェットコースターが苦手だから、2回目だからといって慣れたとか無い。
股間の辺りがキューってなるんだよな。
幸い、今回の相手は空を飛んでいる訳ではないのでかなり低い。
最悪スーパーアーマーなくても死なないかなって思うくらいの高さだ。
「じゃあ、いくぞ!」
「はい!」
俺のシールドには野営用の固形燃料を無理矢理擦り付けてある。
これで一瞬だが、シールドが燃えるはずだ。
「おりゃぁ!」
声を出して気合い入れないと、とてもじゃ無いが飛び出せない。
紐なしバンジーみたいなもんだしな。
「スーパーアーマー」
せーの!
「シールドバッシュ!」
「ティンダー!」
タイミングはバッチリだ!
リヴァイアサンが霧のように消えていった!
「やったぁ!倒し…」
バァァァン!
落下中だった。
千紗が駆け寄ってくる。
「初めての共同作業大成功ですね!」
ニコッて可愛い笑顔を俺に向けてくれる。
「え!あ、そ、そうだね!共同作業かぁ」
なんか恥ずかしうと嬉しいが混ざったような感情になるな。
「無事倒せたっすね」
「ここから先は水鉄砲作戦だな!」
「思うんすけど、剣崎さんってチートっすよね」
「そっかぁ?たまたま装備の効果噛み合っただけで、どう考えても他のクラスのスキルの方が強いぞ」
「あれっすね、努力と苦労と悪足掻きの結果、チートになったって感じなんすかね」
「お!それいいな、悪足掻きの系チート探索者」
「剣崎さんにピッタリっすね」
「…なんだろう、なんか嬉しくない」
「あれぇ、褒めたつもりだったんすけど」
77階、78階、79階、は水鉄砲で一撃だった。
「この精霊達に苦労してるパーティが見たら、やる気無くなる光景っすね」
「運が良かったな」
「運で済ませていいのか悩む所っすね」
遂に最終階層のマザーの所まで来た。
「なんだこりゃ?」
特大サイズの卵が置いてあった。
「マザーっすね、こいつを割ればこのダンジョンの氾濫は終わるっす」
マザーをハンマーで叩き割った。
「あれ程苦労したのに、終わりはあっけないな」
ドロップ品は鶏の卵にしか見えない乳白色の石だった。
「これは何だろう?」
「さぁ?氾濫で卵みたいな石見つかったって話聞いた事ないっすね」
「じゃあ、笹かまが持って帰って調べてくれ」
「どうせ調べても分からないっすから、剣崎さんそのままよろしくっす」
『鑑定』
ー迷宮の卵ー
「迷宮の卵って何か分かるか?」
「…うーん、ちょっと思いつかないっすね、一応調べてみるっす」
「うん、よろしく」
ダンジョン攻略終了!
これで氾濫も少しは落ち着くかな。
【後書き】
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