第86話 オッサン齢53歳にして滑空する。
「おわぁぁ!俺、ジェットコースターとか苦手なんだよぉぉぉ!」
お母さん元気ですか、俺は今、恐竜の上に乗って空を飛んでます。
去年の正月に帰らなくてごめん。
俺、このダンジョンから戻ったら、実家に顔出すんだ…。
…
…
…
ハッ!しまった!一瞬気絶してた!
俺は本当にただ乗ってるだけだった。
乗り物酔いはしたことがない。
俺の数少ない取り柄だったんだが、レールのないジェットコースターに乗ってるような動きの中で、ドラゴンの攻撃がすぐ横を通っていく緊張感に耐えるという状況は想像以上に厳しい。
今の状態で突進したプス子がダメージを与えると、俺のスキルは乗る。
しかし、俺の装備の効果は乗らないのという事が1度目の攻撃で判明してた。
つまり、この状況で俺が直接攻撃を当てなければならない。
…この作戦、失敗だった気がして来た。
どこだ?どこを狙えば俺が直接攻撃できるんだ?
さっきからそれを探しながら空を飛んでいる。
何度かチャンスと思ったタイミングもあった。
だが、身体が動かなかった。
今の状況で直接攻撃をするには俺はプス子踏み台にして跳びだし、スカイダイビングよろしく滑空して当てなければならない。
パラシュート無しで。
地面に当たる寸前にスーパーアーマーを展開すれば問題ない。
頭ではそれは分かっている。
足がすくむ。
身体が震える。
だが、この状況でいつまでもいる訳にはいかない。
尻尾でも爪でも牙でも、当たれば終わりなんだ。
俺が好きで良くやってたシミュレーションゲームでも『当たらなければどうという事ない』って言いながら撃墜されるキャラがいた。
99%回避可能でも、1%は割とすぐ当たる。
「うぉぉぉ!次だ!次のブレス吐いた瞬間が勝負だ!」
プス子もドキ子も、こちらの言葉が理解出来るらしく、お願いすればある程度思った通りに動いてくれる。
緊急回避が多いのと、俺がテンパってギャーギャー騒ぐだけの場面がありすぎて、今の所ほぼ自由行動みたいになってるが…。
ゴールドドラゴンにブレスの兆候が見えた。
「今だ!ドキ子奴の斜め上くらいの真正面で口から首までを一直線になるように誘導してくれ!」
ドキ子が回避行動を取りながら真正面の位置に飛ぶ。
良い感じに鼻面が来た。
首も真っ直ぐだ。
ゴールドドラゴンがブレスを吐いた。
「プス子突進だ!鼻面に体当たりだ!」
プス子の全力の体当たりがゴールドドラゴンの鼻面にヒットする!
「うわぁぁぁ!」
突進が命中して急激に制動がかかる。
俺はその慣性の法則に逆らわず、前に吹っ飛ばされた。
そう!自分で飛び出せない無いから、物理法則に頼ったのだ!
ちょっと交通事故の時のこと思い出しす。
勢いよく吹っ飛んだ俺は兎に角がむしゃらに技を出す。
「シールドバッシュ、クイックスタンプ、通常攻撃、シールドバッシュ、クイックスタンプ!」
ドラゴンの首の辺りをゴロゴロ回転しながら、技を発動した。
よく分からなかったけど、これだけ発動すればどれかは当たってるだろう。
そういえば、通常攻撃って叫んでも技出ないな。
そのままドラゴンの背中あたりまで吹っ飛んだところで、フッと巨体が消える。
無事倒せた!
のだが!
「うわぁぁぁぁ!」
自由落下が始まった。
物理法則さんありがとう!
君のことは忘れない!
でも自由落下とか今すぐ消えて居なくなってほしい。
どんどん地面が近づいてくる。
どのタイミングでスーパーアーマー発動すれば良い?
最悪なのはスーパーアーマーが切れたタイミングで地面激突だ。
あと、タイミング間違って発動前に地面激突のパターンもある。
うわ、うわ、うわわわ!
え?もう良い?もう良いかな?
こんなのやった事無いから分かんねーよ!
ダメだ!我慢出来ない!
もうスーパーアーマー20秒で行ってやる!
HP2000消費!スーパーアーマー発動!
バァァァン!
2秒くらいで地面に激突した。
そうか、落下って加速するんだった。
あー俺老眼始まってるのかも…。
みんなが集まって来た。
「ごめん、降りてすぐに長めの休憩入って良いかい?」
「え!大丈夫ですか?どこか怪我したんですか?」
千紗が心配してくれる。
「そうじゃ無いんだけど…落ちる時、怖くて2000ポイント払ってスーパーアーマー張ったせいでHP空っぽで」
「なんだ、無事に戻って来てくれる方がずっと重要なんですから、気にしないでください!
早速下の階で休憩場所探しましょう」
千紗はいつも優しい。
ありがたい。
階を降りて、長めの休憩を取る。
千紗も可能な限りリトルヒールをかけてくれた。
あと、5階。
やっとゴールが見えて来た。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方はフォローや↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さるとありがたいです。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます