第85話 オッサン齢53歳にして飛翔する。

 あと10階だ。

 まだ10階あると言った方がいいかもしれない。


 俺も含めてみんなの疲労もかなり蓄積されている。


「なんか、ここは全然モンスターがいないな」

「あー、ここまで居ないと、やべーの待ってる可能性高いっす」


「やべーのか」

「やべーっす」


 下に降りるゲート付近にそいつは鎮座していた。


「ついにコイツと戦わなきゃならなくなったかぁ」


 ドラゴンだ。


「コイツがテイム出来れば本当に良かったんっすっけどねぇ」

「あぁ、全くだ」


「空飛ばすと俺が手も足も出なくなるから、上手く牽制してくれ」

 周りのメンバーにそうお願いする。


 幸いドラゴンスレイヤーの称号はパーティの攻撃力にも影響するので多少はこちらに有利なはずである。


 71階 レッドドラゴン、弱点属性水、氷。

 戦闘開始だ!


 空中から攻撃するメンバーが相手が飛ぼうとするタイミングで攻撃する。


 特に笹かまがブレスを吐くタイミングで上手く自分に誘導して、それを躱す。

 かなり負担をかけている。


 地上から攻撃する部隊も猛攻を受けており、なかなか攻撃に移れないでいた。


「よし!入った!」

 俺の一撃が入った!


「なんとか倒せたっすね」

「すまん、攻撃が激しすぎて、なかなか1発入れれなかった」

 こういう時に俺のステータスの基礎値が低い影響が如実に現れる。


 猛攻に晒されると、躱したり、カウンターを入れたりという行動が全然出来ない。

 ひたすら、ブロックで耐えるしか無くなる。


「ドラゴン倒せるだけで凄いっすよ、それに称号のおかげで、俺らの攻撃も無視出来ないっすからね!

 1番やばいのは、こっちの攻撃無視して一方的に殲滅しにくるパターンっすから。

 硬いんすよドラゴンって」


 72階 ブラックドラゴン、弱点属性光。

 73階 グリーンドラゴン、弱点属性火、雷。


 74階 シルバードラゴン、弱点属性 無し。


「あー、ついにシルバードラゴン来ちまったっす」

「やばいのか?」


「面倒なんす、シルバーの属性はシルバーなんすよ。

 一般的な属性に分類出来ないんす。

 弱点属性も見つかってないし、ダメージ軽減も有効なの今んとこ無いんすよね」


「注意点は?」


「ブレスはマジやばいっす。

 状態異常起こすんですけど、シルバー化って言われてて、時間経過以外で回復する手段ないっす」


「どのくらいの時間だ?」


「まる1日っすね」


「やばいな…」


「あと、ブレスを含めて全部の行動が今まで奴らより速いんで、今まで以上に猛攻くるっす」


「はぁぁ、だからと言って逃げられる分けじゃないしな、行くしかないな」


「そっすね、今まで以上に気合い入れて行くっす!」


 戦闘が始まった。


 中盤辺りまで来た時に悲劇が起きる。


「こっちっすよ!」

 空中機動で笹かまが顔面を引っ叩いた。


 ブレスの兆候が見えたので自分に注意を引くためだ。


 思惑通り自分の方を向かせた。

 反対側からは竜部隊が突進している。


 そして、シルバードラゴンのブレス。


 の、はずが笹かまに頭突きをして牽制するとクルッと顔を反対に向けて竜部隊にブレスを吐いた!


「何!」

「やばいっす」

「ドキ子ちゃん!プス子ちゃん!美髯さん!」


 誰もが終わったと思った瞬間!

 なんと、そのまま突進してドラゴンの鼻面に体当たりをかました。


 その衝撃で、シルバードラゴンが一瞬硬直する。


「今だ!」

 その隙を逃さず俺はシールドバッシュを叩きつけた。


 無事シルバードラゴンを倒せたのだが…。


 ドキ子、プス子、美髯菜、お前たちの犠牲は忘れない…。

 …

 …

 …

 黙祷を捧げよう。


「あー良かった、無傷で!」

 村重さんの悲しみ声が聞こえる。

 …

 …

 …

 ん?無傷?


 て、いうか、悲しそうじゃないな?


 村重さんの横には、とっても元気な3体が居た。


「え?あれ?どういう事?」


「あ、はい、なんかスキル的にブレスの中も環境って認識されるっぽくて、環境適応でノーダメみたいです」


「え?状態異常も?」


「あ、はい、そうみたいです」


「すげーな!ドキ子!」


「すげーっていうか、異常っすよ」

「あ、やっぱり、そんな気したわ」


「環境の幅が広すぎっす!

 おそらく、空間全体が変わるものは全部環境扱いしてるんだよ思うっす」


「え、てことは?」


「範囲攻撃全て無効っすね、おそらく範囲魔法も効かないっすよ」


「そっか、この世界の主人公はゲンゴロウだったんだ。

 勇者ドキ子の冒険が今始まるな!」

「割と間違ってなさそうなのがヤバいっす」


「とりあえず下に降りようか」


 ゲートを降りる途中で、ふと、今まですっかり忘れていた疑問を思い出した。


「そういえば、ボスフロアの後にあるプレートって使えないのか?」

「そんなの使えてたら、モンスターに利用されて氾濫がもっと酷いことになってるっすよ」


「あ、そうか」

「セーフティエリアが無くなると同時に機能停止するっす。

 帰るにはマザー倒すか、今まで来た道を順番に戻るかしかないっす」


「撤退するのもかなり苦労するな」

「そっすよ、だから今回もマザー倒せるのはウチと韋駄天と氷妃くらいで残りは強行偵察の意味合いが強いっす」


 75階 ゴールドドラゴン


「シルバーの完全上位種っすね」

「思ったんだが、ブレスも耐えられるなら美髯菜の代わりに、俺が乗っていく方が早く倒せると思う」


「いけそうっすね、空中での動きは地上とかなり変わるっすから、酔わないように気合い入れるっすよ」


「ああ、分かった!」

 こうして、生まれて初めての空中戦に突入することになった。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

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 よろしくお願いします。

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