第84話 オッサン齢53歳にして駆逐する。

 さらに下に降り、66階まで降りてきた。

「この辺でレベルアップの周回して万全をきしたいが、そんな都合良いモンスター出ないか?」


「少なくてもこの階では無理っすね」

 そう言って指を刺す。

 その先には、ゆらゆらと動く人影があった。


「結構距離あるよな、なんか遠近感おかしく無いか?」

「それだけデカいって事っす」


「巨人か…やっぱり弱点は、うなじなのか?」

「人型のモンスターは大体そこっすね」


「よし、空中攻撃出来るメンバーは、うなじ、目、耳の優先順んで狙ってくれ。

 陸上のメンバーはアキレス腱か膝裏狙いで、迂回出来る時は極力迂回していこう」


「あいつは攻撃するっすか?」


「そうだな、どっちにしろどの程度俺たちでやれるか見ておかないとな」


 こうして66階の巨人、フォレストジャイアントとの戦いが始まった。


「案外いけるな」

 次のゲートまで何戦かこなして、思ってた以上に通用するのを実感する。


 高橋が空中機動を覚えていたおかげで、空中が千紗、高橋、竜部隊、笹かまの、地上が佐々木、アスパラ隊、俺で展開出来る。


 俺が当たれば当然一撃だし、アスパラ隊も数が多いのでアキレス腱攻撃はかなりの蓄積ダメージと相手の行動を阻害する動きができている。


 空中戦はほぼ完封だ。


 安心して次の階に行ける。


 67階 ヒルジャイアント


 安心なんか出来なかった。

 既にリーダー格が現れており、巨人の進撃が始まっていた。


「うわぁ、あれに突っ込むのか!」

「最悪っすね」


「1体づつ確殺でいってくれ!いくぞ!」

「「「「おう!」」」」


 ちなみに撮影隊はだいぶ前から空気だ。

 そっちを構ってる余裕が全くないのだ。

 もう、レベルアップとかも気にして無い。

 俺たちについて来ないと確実にダンジョンから帰れない事だけは確定しているのでついて来ているだろうけど、正直それすら確認してない。


 30体を超える巨人を駆逐し終わった時には、流石にみんな疲労困憊になってた。


「ふぅぅ、流石にきついな」

 1時間の休憩を取ることにした。


「あの…」

「ん?」

 声をかけてきたには、テレビ局のディレクター兼カメラマンだった。


「これほど大変な事をしていると知らず、無責任な報道をしてすまなかった」


「今更、気にして無いですよ、その行動の報いを現在進行形で受けてるんだから、これでチャラです。

 それにお金いっぱい貰えるみたいなんで大丈夫ですよ」


「あの、それで私のパーソナルクラスなんだけど、帚木者ってなってるんだ」


「ははきぎもの?

 どういう意味ですか?」


「説明では『遠くで見えても近くでは見えないもの、決して捕まらないもの』となっているんだ」


「なんか隠密活動とか良さそうですね」


「実際スキルは『空蝉』になっていて、効果が『攻撃された時、予め決めたものと入れ替わる』なんです」


「あ、ちょっと待って、笹かまぁ!ちょっと来てくれぇ!」

 少し遠くにいた笹かまを呼ぶ。


 今の内容を笹かまにも説明してもらう。


「見せてもらっても良いっすか?」


「あ、はい」

 地面に転がって居た石を持つと、何か念を込める。

 そしてその石を少し離れたところに無造作の捨てた。


「殴っても…」

 言い切らないうちに躊躇なく笹かまが殴った。

 カランコロンコロンと笹かまの攻撃を受けた石が転がっていく。


 少し離れたところにディレクターはいた。


「これって対象が石じゃなくて人でも出来るっすか?」

「触らないと発動しないんですが、触っていれば大丈夫かと思います」


 ディレクターを連れて来て俺に触らせた。


 少し離れた。


 一瞬の浮遊感と同時に腹に衝撃が伝わった。

「ゴフッ!な、なんか…言ってから…やれよ」


「あ、じゃあもう1回やり直しっすね」

「やらんでいいから!」


「かなり有効なスキルっすけど、本人が弱いから今の所使い道が自分守るためくらいっすね」

 ディレクターに向き直ってそう伝える。

「そ、そうですか」


「はい!レベル上がったら強力になるんで、このまま探索者になるなら相談乗るっす」

「考えてみます」

 ディレクターがかなり離れてから、俺の横に笹かまが座って小声で話してくる。


「あれ、どうするっすか?対モンスターにはもう少し時間かかるっすけど、対人に関しては恐ろしいくらいハマるっすよ」


「だよな、接触さえ出来れば、あの人全力で殴ればターゲットが不可避の攻撃喰らうもんな」

「そうっす、隠密や消音みたいな暗殺系でもいいし、変装なんかの怪盗系で近づくでもいけるっす。

 どうするっす?」


「どうするって?」


「協会に知らせて管理下におかせるっすか?隠して自分の切り札に使うっすか?」


「んー、俺じゃ扱いきれなさそうだから、協会に任せるよ」


「はぁぁ、剣崎さんならそう言うと思ったっすけど、強力なカウンターになるスキルなんすけどねぇ」


「だが、あの人捨て駒になる可能性あるだろ?」


「そっすね、入れ替わりだから、敵の真ん中に放り出される可能性高いっすね」


「そうなるって分かってて、俺はあのスキル発動させるほど、覚悟決めれないと思う。

 だから、協会に預けて悪用されないようにしてもらった方が良いな」


「分かったっす、ここ出たら篠塚さんに連絡するっす」


「うん、よろしく頼むよ」


 俺たちは探索を再開した。


 68階 サイクロプス

 69階 ストーンジャイアント

 70階 ヘカトンケイル


 あと、残り10階。

 他のチームはもうダンジョン攻略終わってるのかな?


【後書き】

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