第79話 オッサン齢53歳にして突貫する。

「構え!撃てぇ!」

 この号令をかわきりに、次々自衛隊がモンスターを掃討していく。

 そうして出来た道を探索者と自衛隊員が保持する。

 今回の作戦で、全ての突入するパーティにダンジョンまで辿りつく為の支援部隊がつく。

 自衛隊1個連隊とレベル20以上の探索者300人


 総勢1000人弱の支援部隊がダンジョンまで約2kmにわずかな時間だけ侵入路を形成する。


 この作戦に参加していない戦闘部隊で戦線押し込み、限界まで近づいたところで、支援部隊が短時間だけ侵入路を作る作戦はここまでは上手くいった。


「よし!突入するぞ!」

「囲まれたらどんどん削られるんで、時間との勝負っすよ!」

 突入メンバーは、剣崎、千紗、みー、笹かま、唐辛子、佐々木、高橋、撮影クルー6人だ。


 突入作戦が決まった日の夜まで時間を巻き戻す。


「あの、私たちの護衛は誰に引き継がれますか?」

 テレビ局のプロデューサーだ。


「引き継がれないっすよ」

 笹かまがニッコリ笑う。


「え、でも、ここのメンバーは全員ダンジョンに突入するって…」

「そっすよ、メンバー全員っす、もちろんそっちの皆さんもメンバーっすよ」


「いやいやいや、無理ですよ!レベルだってまだ4です!そんなダンジョンの奥だなんて絶対無理です!何言ってるんですか!」

 会話を聞きつけた雑誌社の編集長も横から口を出してきた。

「そうだよ!君こそ何を言ってるんだ!我々一般人を巻き込むなんて言語道断だぞ!」


「へ?何言ってるんすか?一般人じゃないっすよ皆さんれっきとした探索者っすよ。

 パーソナルクラス持って、レベルも上がってるじゃないっすか」


「な、な、な、何を言ってるんだ!これは君たちがクラスを取らないとダメだと言ったからじゃないか!」

「そっすよ、クラスを取って“探索者”にならないと護衛しないって言ったんす。

 自分たちの立場わかってるっすか?

 2億の借金抱えてるんすよ?

 ここで逃げ出すような奴は事故死する事になるんすよ?」

 笹かまの雰囲気が変わる


「「ヒィィ」」

 思わず腰が抜けて2人ともその場で尻餅をついてしまった。


 笹かまが2人に近づき、殺気を放ちながら静かに言った。

「やっと、地獄が始まるんだ、充分楽しんでいけや」


 そう言って立ち去る笹かまを2人は茫然としながら見つめることしか出来なかった。


 ーダンジョン入り口ー


 支援部隊が作ってくれた道をひた走る。

「ハァハァ、ゼイゼイ」

 相変わらず剣崎は長距離を走るのが苦手だ。

 レベルも上がりステータスも上がっているはずなのに、これは呪いなのではないだろうか。

 最近、真剣にそう思えてきた。


 それでも何とか2kmを走り切る。

 撮影クルーも命がけで付いてきた。


 ダンジョンの入り口を守るモンスターの周囲100mくらいには全くモンスターがいない。

 だが、定期的にダンジョンからモンスターが出てくるのが、こちらに襲いかかって来る。


「ダンジョンの所にいるのはレイクワームっすね。

 てことは、水中に居る虫系のモンスターが強くなってるっす」


「ボス倒したら、そいつら弱体するのか?」

「いや、無理っす、今回は水棲昆虫が強かったのでその代表としてこいつがボスになったって感じっすね。

 こいつの能力で強くなったとかないっす」


 そんな話をしながら近づいていくと、大量のアメンボがダンジョンから出てきた。


 一旦拡散して移動しようという風に見えたが、こちらの存在に気づき一斉に向かってきた。


「ここは皆んなに任せた!俺はボスを潰して来る!佐々木!」

 そう言うと俺は佐々木の肩に掴まる。


「はい!いきます!水流!からの水上移動!」

 佐々木がレベルアップして覚えたスキルだ。


 水流は数十mほどの水の流れを生み出すスキル。

 水上移動は水の上を素早く移動出来るスキルだ。


 これを覚えたおかげでやっと水上戦闘が意味のあるスキルになった。

 さらにクラス特性で肩に掴まって居る仲間を水上移動で一緒に移動させる事も出来る。


 感覚的にはモーターボートに引かれる水上スキーみたいな感覚だ。

 速さも走るより圧倒的に速い。


 佐々木に牽引されながら一気にボスに近づく。

「うお!っとっとと!」

 毎回、佐々木から手を離した瞬間に牽引の効果がなくなり急ブレーキがかかるのに苦労しながら、何とか転ばずに持ち堪えた。


「オリャ!クイックスタンプ!」

 打撃武器スキルで唯一覚えた技だ。

 基本中の基本で威力は下がるが、命中率を大幅に上げてくれる。


 俺の場合は当たりさえすれば勝てるので、この技さえあれば良いと思ってる。


「よし!全員ダンジョンに乗り込むぞ!」


「やっぱ剣崎さんはタイマンなら最強っすね」


「近距離じゃないと攻撃出来ないし、当たらなかったらどうにも出来ないから、そこまでじゃ無いと思うぞ」


 俺たちはセーフティゾーンの無い、氾濫中のダンジョンに向かって行った。


【後書き】

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